ソウルの地下鉄で、車両の端にある座席が空いているのに誰も座っていない場面を見たことはありませんか。日本の感覚だと「空いているなら座っていいのでは」と思ってしまいがちですが、ここで座ってしまい、次の駅で気まずい空気になった、という声は少なくありません。노약자석(老弱者席)と呼ばれる優先席、そしてピンク色の妊婦配慮席は、日本の優先席とは前提が少し違います。この記事では、座席の見分け方から、座ってはいけないのが法律なのかマナーなのか、混雑時間帯の避け方、バスやKTXの優先席まで、確認できた範囲を整理しました。
ソウルの地下鉄では、優先席・妊婦配慮席は空いていても座らないのが無難です。日本の「空いていれば座ってよく、必要な人が来たら譲る」という運用とは前提が違い、韓国では「そもそも座らない」という空気が定着しています。座席の色とピクトグラムで見分け、特にピンクの妊婦配慮席は1席だけ独立して常に空けておく運用が広がっています(2026年9月1日確認)。
結論——空いていても座らないのが無難(日本との運用の違い)
日本の優先席は「対象者が来たら譲る」という前提で、空いていれば座ってよいという認識が一般的です。一方でソウルの地下鉄の優先席は、対象者がいない場面でも座らずに空けておく人が多く、旅行者が知らずに座ってしまうと、周囲から視線を感じたり、次の駅で高齢の乗客に声をかけられたりする場面があります。これは「韓国人はこうする」という国民性の話ではなく、車両の座席区分としての運用差だと捉えるのが実情に近いはずです。
体感で言うと、優先席に座ってから次の駅まで気まずさを抱えるくらいなら、立って過ごす数分は電車を待つ時間の半分にも満たないことがほとんどです。座席を確保できるかどうかより、次の予定に余裕を持って動けるかどうかのほうが、旅行中は大事な場面が多いはずです。地下鉄の基本的な乗り方や改札の通り方から確認したい人は、ソウル地下鉄の乗り方ガイドもあわせて読んでおくと迷いにくくなります。
日本の優先席とどこが違うのか——4点で並べる
「違うのは分かったけれど、具体的に何が違うのか」を整理すると、旅行中の判断がしやすくなります。大きくは「空席時の扱い」「席の位置」「色とピクトグラムの出し方」「車内アナウンスの細かさ」の4点で対比できます。どれも法律で数値化されたルールではなく、車両の設計と乗客の空気が積み重なってできた運用差、という前提で見てください。
| 観点 | 日本の優先席 | ソウルの優先席 |
|---|---|---|
| 空席時の扱い | 空いていれば座ってよいという認識が一般的 | 空いていても座らないのが基本という空気が強い |
| 席の位置 | 車両の一部に点在する配置もある | 車両の両端にまとまっているのが定番 |
| 色とピクトグラム | 目立たない配色の車両も多い | 座席色や床色を変えて対象を明示する車両が多い |
| アナウンス | 「席をお譲りください」という呼びかけが中心 | 妊婦配慮席など対象を細分化した案内がある車両も |
4点のうち、旅行者が一番戸惑いやすいのは「空席時の扱い」です。日本の感覚のまま座ってしまうと、周囲の空気と自分の行動がずれてしまう場面が生まれやすくなります。逆に言えば、この1点さえ意識しておけば、残り3点は「見れば分かる」レベルの違いにとどまります。
優先席はどこにある?両端3席の色とピクトグラム
ソウルの地下鉄車両では、優先席は基本的に両端の座席エリアに配置されています。1両の座席は中央が一般席で、進行方向に向かって両端の一角が優先席区分になっている車両が一般的です。座席の色が一般席と異なる配色になっていたり、床や壁に高齢者・妊婦・障害のある人・乳幼児連れを示すピクトグラム(絵文字のような案内表示)が貼られていたりするため、乗車後に見渡せば区分は判別しやすいはずです。
路線や車両の世代によって座席の色味やピクトグラムの位置が異なる場合があるため、「この色なら優先席」と一律に覚えるより、車両の端に来たら案内表示を確認するくらいの意識で十分です。混雑した車内では優先席の前に立つ人も多く、座席そのものより「その一角に立つときの空気」を意識しておくほうが実用的かもしれません。
優先席の対象は高齢者・障害のある人・妊婦・乳幼児連れ・けが人や体調不良の人など、見た目だけでは分からない人も含まれます。座っていなくても、優先席の前に立つときは周囲の様子を軽く確認しておくと安心です。
出口や乗り換えの位置を含めて車内の動き方を確認したい人は、地下鉄の出口番号の調べ方の記事も参考になります。優先席の位置と合わせて、降りる前にどちら側のドアが開くかを把握しておくと動きやすくなります。
ピンクの妊婦配慮席——優先席とは別枠の1席
一般の優先席とは別に、임산부 배려석(妊婦配慮席)という座席が用意されている車両があります。座席全体または床がピンク色で塗られ、専用のピクトグラムが貼られているのが特徴です。一般の優先席が複数人分まとまって配置されているのに対し、妊婦配慮席は1両あたり数席だけ独立して設けられているケースが多く、見た目の区別がつきやすい座席です。
この座席の特徴は、妊娠中の人がその場にいなくても、周囲の乗客が座らずに空けておくという運用が広がっている点です。日本の「マタニティマーク」のような自己申告制の座席譲渡とは違い、座席そのものが最初から用途を限定されている形に近いといえます。妊娠初期など見た目では分かりにくい人にとっても、この座席が最初から空いていれば座りやすいというメリットがあります。
妊婦配慮席の細かい位置は車両や路線によって差があるため、断定はできません。乗車のたびに車内の掲示を確認するのが確実です。乗り換えでの迷いやすさが気になる人は、地下鉄で改札を間違えたときの対処法もあわせて見ておくと、優先席以外のトラブルにも備えやすくなります。
「座ってはいけない」は法律?マナー?——高齢の方に声をかけられたら
ここは断定を避けたい論点です。韓国には교통약자의 이동편의 증진법(交通弱者の移動便宜増進法)という法律があり、鉄道やバスの事業者に対して交通弱者向けの座席を設置する義務を定めていることは確認できました。ただし、これは「座席を用意する義務」であって、「一般の利用者が優先席に座ることを禁止し、罰則を科す」という条文までは、今回の調査では確認できませんでした。座席の利用そのものを制限する明文の規定は見当たらず、周囲が譲り合うことを前提としたマナー・慣習として定着している、という理解にとどめておくのが実情に近いはずです。
実際に、優先席に座っていて高齢の乗客から「代わってほしい」と声をかけられる場面もあります。この場合、法律上の義務かどうかにかかわらず、席を譲るのが車内の空気としては自然な対応です。もし座席が空いていて対象者らしき人が見当たらない場合でも、次の駅で乗ってくる可能性を考えると、最初から座らない選択のほうがトラブルを避けやすいといえます。判断に迷う場面や、明確なルールを知りたい場合は、鉄道事業者や自治体の公式案内で確認するのが確実です。
席を譲るときの一言と、断られたときの引き方
優先席の前に立っていて、明らかに座席を必要としていそうな人が近くにいても、韓国語が分からないと声をかけるのをためらってしまう人は多いはずです。難しい言い回しは要りません。座席を立ちながら手のひらで座席を示す動作だけでも十分伝わりますし、言葉を添えたいなら여기 앉으세요(こちらへどうぞ)という一言で足ります。丁寧な依頼形なので、押しつけがましく聞こえにくいのも使いやすい理由です。
一方で、声をかけても相手が首を横に振って断る場面もあります。次の駅まで少しだからと遠慮していたり、単に立っていたい人だったりと理由はさまざまです。この場合、無理に何度も勧めるのではなく、一度だけ声をかけて引くのが自然な対応です。断られたのに座席を勧め続けると、かえって相手を気まずくさせてしまいます。「一度声をかけて、断られたら普通に座り直してよい」くらいの感覚で構いません。
リュック・キャリーケースの置き方と車内の立ち位置
優先席周辺に限らず、車内での荷物の置き方も気にしておきたいポイントです。背負ったままのリュックは、混雑時に後ろの乗客にぶつかりやすく、優先席の前や出入口付近では特に狭さを感じさせます。前に抱えるか、足元に置くだけで、周囲との距離感がかなり変わってきます。キャリーケースを持っている場合は、優先席の前や出入口をふさがない位置を選び、停車のたびに揺れて動かないよう足で軽く押さえておくと安心です。
立ち位置についても、優先席の前は座席を必要とする人が近づきやすいよう、通路側を少し空けておくくらいの意識があると動きやすくなります。大きな荷物を持って地下鉄を移動する予定がある人は、地下鉄にキャリーを持ち込む際のエレベーターの探し方もあわせて確認しておくと、階段を避けたルートが組みやすくなります。優先エレベーターの利用マナーについては次の見出しでも触れます。
やりがちな行動と、切り替えたほうがよい動きを並べると分かりやすいはずです。リュックを背負ったまま人混みに入るのはよくある行動ですが、前に抱え直してから乗り込むほうが周囲との接触を減らせます。キャリーケースを立てたまま手を離すのもやりがちですが、足元に寄せて軽く支えるほうが停車時の急な揺れにも対応しやすくなります。どちらも「気をつけよう」という意識より、乗車前の数秒でひと呼吸置く習慣のほうが効果的かもしれません。
優先席以外でも気をつけたいこと——通話・飲食・優先エレベーター
優先席の話に限らず、車内マナー全般で旅行者が戸惑いやすい点がいくつかあります。まず通話は、車内アナウンスでも控えるよう案内されることが多く、電話がかかってきた場合はドア付近など人が少ない場所に移動してから小声で話すのが無難です。飲食についても、匂いの強い食べ物やこぼれやすい飲み物は避けたほうが周囲との摩擦を避けやすくなります。
駅構内のエレベーターにも「優先」の考え方があります。교통약자용 엘리베이터(交通弱者用エレベーター)は、車椅子利用者やベビーカー、大きな荷物を持つ人などが優先的に使えるよう案内されている設備で、混雑時は健常な利用者が階段やエスカレーターを選ぶのが望ましいとされています。荷物が多いときほど頼りたくなる設備ですが、順番を譲り合う意識は座席と同じだと考えておくとよいはずです。
朝夕の混雑時間帯、どう避ける?
優先席まわりの気まずさは、混雑した車内で座席のやり取りが生まれやすいことも一因です。ソウルの地下鉄は通勤・通学時間帯にあたる平日の朝と夕方が特に混雑し、優先席の前に立つ人数も増えます。旅行者であれば、観光の予定を朝のラッシュのピークからずらすだけでも、車内での立ち位置や座席をめぐるやり取りに気を使う場面をかなり減らせるはずです。
始発の時間帯を利用して早めに移動する、あるいは午前10時以降まで待ってから乗車するといった工夫も有効です。始発の時刻は路線や駅によって異なるため、ソウル地下鉄の始発時刻の調べ方を確認しておくと、混雑を避けた移動計画が立てやすくなります。日中でも観光地に近い駅は混みやすいため、できれば座席そのものに期待せず、立って移動する前提で計画するくらいがちょうどよいかもしれません。
向いている人と向いていない人で分けると、朝夕のラッシュに慣れていない旅行者・大きな荷物を持っている人・小さな子ども連れの人は、混雑のピークを避けたほうが疲労が少なく済みます。逆に、身軽で移動時間を優先したい人や、満員電車自体を体験してみたい人であれば、多少の混雑は許容範囲かもしれません。どちらのタイプでも、優先席の前だけは混雑度にかかわらず空けておく、という一点は変わりません。
バス・KTX/SRTの優先席・配慮席はどうなっている?
優先席の考え方は地下鉄だけの話ではありません。市内バスにも、前方や乗降口に近い位置に高齢者・障害のある人・妊婦向けの座席が設けられている車両が多く、地下鉄と同様に空けておくのが基本的な運用です。バスの場合は座席数自体が少なく、揺れも大きいため、優先席かどうかにかかわらず立っている乗客に配慮した動きが自然と求められる場面が多いはずです。バスの乗り方や料金の仕組みを確認したい人は、ソウルのバスの乗り方ガイドも参考にしてください。
KTXやSRTのような高速鉄道は座席が指定制のため、地下鉄のような「空いている優先席」という概念とは少し違います。予約の段階で妊婦や体の不自由な人向けの配慮座席を選べる場合がありますが、席数には限りがあり、確実に確保できるとは限りません。長距離移動でKTXと高速バスのどちらを選ぶか迷っている人は、KTXと高速バスの選び方の記事もあわせて確認しておくと、移動手段そのものの比較にも役立つはずです。

よくある質問
まとめ
- ソウルの地下鉄は、優先席・妊婦配慮席とも「空いていても座らない」のが基本的な運用
- 優先席は車両両端に配置され、色とピクトグラムで見分けられる
- ピンクの妊婦配慮席は一般の優先席とは別枠の1〜数席。対象者がいなくても空けておく運用が広がっている
- 座席利用を罰則付きで禁止する明文規定は確認できず、マナー・慣習として定着していると理解するのが実情に近い
- 高齢の方に声をかけられたら、法律上の義務にかかわらず席を譲るのが自然な対応
- 優先エレベーターや通話・飲食も、座席と同じく譲り合いの空気がある
- バスにも同様の座席があり、KTX/SRTは予約時に配慮座席を選べる場合がある(席数に限りあり)
「韓国はこうだから」と一括りにするより、日本と韓国で優先席の運用の重心が少し違う、と捉えておくと気持ちが楽なはずです。空いている優先席や妊婦配慮席を見かけたら、まずは座らずに様子を見る。それだけで、旅行中に気まずい思いをする場面はかなり減らせるはずです。細かいルールは路線や車両によって差があるため、気になる場合は現地の車内掲示や公式案内で確認してください。
参考・出典
- 위키백과「교통약자석」 https://ko.wikipedia.org/wiki/교통약자석 (優先席の対象者・「利用を制限する明文の規定は多くの場合ない」という記述を確認、2026年9月1日確認)
- 국가법령정보센터 https://www.law.go.kr/ (法律名「교통약자의 이동편의 증진법」の存在を確認。座席利用そのものへの罰則規定は今回未確認、2026年9月1日確認)
- 서울교통공사 公式サイト https://www.seoulmetro.co.kr/ (公式サイトの存在を確認。優先席・妊婦配慮席の詳細案内ページは今回特定できず、最新情報は同サイトで確認を推奨、2026年9月1日確認)

