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ソウルのカフェを調べていると、いつのまにか「益善洞」という三文字に戻ってきてしまう。
益善洞が「韓屋レトロ」と呼ばれるのは、雰囲気づくりのために古そうな内装を足しているからではなく、1930年代以前に建てられた韓屋が118棟、そのまま街として残っているから。ソウル市の韓屋ポータルが公開している数字で、2018年にはソウル市が「韓屋密集地域」として指定し、保全と振興の対象にしています(2026年8月10日確認時点)。
つまりこのエリアの正体は、カフェが集まった商業ゾーンというより、100年近く前の住宅地に、あとからカフェが入居した街。天井が低いのも、路地が細いのも、中庭がやたら小さいのも、演出ではなく元の家の設計がそのまま残っているせい。レトロ感の密度が他のカフェ街と違って見えるのは、ここに理由があります。
・益善洞が「韓屋レトロ」と呼ばれる根拠になっている、ソウル市公式の数字
・1920年代の分譲から2018年の指定まで、この街ができた流れ
・鍾路3街駅6番出口からの入り方と、路地の歩き方
・「写真」「静けさ」「韓服」など目的別に入り口を決める早見表
・行く前の5分でやる、営業情報の確かめ方
益善洞のカフェが韓屋レトロなのは、街ごと当時のままだから
益善洞(익선동)とは、ソウル市鍾路区にある韓屋密集地域で、1930年代以前に建てられた韓屋118棟が今も残るエリアのことです。ソウル市の韓屋ポータルはこの118棟という数と、そこに飲食店・サービス業・卸小売業などの商店が約330店(2018年時点)入っていることを公開しています。
数字だけ並べると味気ないけれど、118棟という規模はなかなかのもの。1棟ずつ引きの写真を撮って、路地の角度を変えてもう1枚……とやっていたら、推しのフォトカードをアルバムに並べ替える午後がまるごと消えるくらいのボリュームがあります。「1時間あれば見終わる」と見積もって行くと、たいてい足りない。
もうひとつ、韓屋のサイズ感も押さえておきたいところ。ソウル市の資料によれば、益善洞の韓屋は大半が30坪台以下で、一部に50坪台の比較的大きなものが混じります。店内が狭いのは店側の都合ではなく、建物の素性。大人数で行って「席が空くのを待つ」前提になりやすいのは、この規模感が効いています。
| 数字 | 内容 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 118棟 | 1930年代以前に建てられた韓屋の数 | 街の単位で残っているので、路地そのものが見どころになる |
| 約330店 | 飲食・サービス・卸小売などの商店数(2018年時点) | カフェだけ拾っても1日で回りきれる数ではない |
| 30坪台以下が大半 | 韓屋1棟あたりの規模 | 小箱の店が多く、待ち時間が発生しやすい |
| 2018年 | ソウル市が韓屋密集地域に指定した年 | 景観が急に壊れにくい制度的な裏づけがある |
ちなみに韓屋そのものの成り立ちや、より観光地として整備された街並みを見たいなら北村韓屋村の歩き方と住民マナーと読み比べると、同じ「韓屋」でも性格がかなり違うことがわかります。北村は住宅としての韓屋、益善洞は商店として使われている韓屋、と考えるとすっきり。
この街は1920年代の「分譲住宅地」から始まった
都市型韓屋とは、一区画をまとめて買い上げ、規格化した小ぶりの韓屋を並べて分譲するかたちで供給された、庶民向けの住宅のことです。益善洞の路地が碁盤の目のように整っていて、どの家も似た顔をしているのは、そもそも一人の手でまとめて造られた街だから。
韓国学中央研究院の教育用資料によると、1920年代に都市開発業者の鄭世権(정세권)が益善洞一帯の土地を買い集め、庶民向けの都市型韓屋団地として分譲・建設したとされています。個人邸宅がぽつぽつ建った結果ではなく、最初から「団地」として設計された。この出自が、100年後にカフェ街として使い回せた理由でもあります。
その後、この一帯には再開発の計画も持ち上がりましたが、計画は見直され、既存の韓屋街を保存する方向へ転換しました。そして2018年、ソウル市が韓屋密集地域に指定。「取り壊されなかった街」だからこそ、今の益善洞があるわけです。カフェの内装がレトロなのではなく、街が残ったという順番。
鍾路3街駅6番出口から、韓屋の路地に入る
益善洞の玄関口とは、地下鉄1・3・5号線が乗り入れる鍾路3街(종로3가)駅の6番出口です。ソウル市の韓屋ポータルが案内している通り、6番出口を出て北へ進むとすぐ韓屋の一角にたどり着きます。乗り換え駅なので、どの路線から来ても着けるのが地味にありがたいところ。
- 鍾路3街駅で降りたら、まず駅構内の案内板で6番出口を目指す。1・3・5号線が集まる大きな駅なので、ホームから出口まで歩く時間を見ておく
- 6番出口を出たら北方向へ。大通り沿いの現代的なビルの合間に、瓦屋根が低く連なる一角が現れる
- 路地に入ったら、まずは奥まで通り抜けてしまう。手前の一軒目で決めると、たいてい後悔する
- 気になった店の外観だけ写真に撮っておき、通り抜けてから戻って選ぶ
路線図の読み方や乗り換えのコツに不安があるなら、先にソウルの地下鉄の乗り方と乗り換えの基本に目を通しておくと迷いにくくなります。鍾路3街は出口番号が多い駅なので、「6番」だけメモしておけば十分。
目的別・益善洞のカフェの入り口を決める早見表
目的別の選び方とは、店名から探すのではなく「その日に何をしたいか」から入り口を決める方法のことです。益善洞は商店が約330店という規模なので、店名リストを持って行っても選びきれません。順番を逆にしたほうが早い。
| その日の目的 | 狙う時間帯 | 入り口の決め方 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 写真をきれいに残したい | 開店直後 | 路地を一度通り抜けてから、光が入る中庭のある一軒を選ぶ | 昼以降は人が写り込む。中庭は天候の影響を受けやすい |
| 座ってゆっくり話したい | 平日の午前 | 小箱を避け、比較的大きな韓屋(50坪台)を使った店を探す | 30坪台以下の店は席間が近く、長居しにくい |
| 伝統茶やデザートを味わいたい | 混雑の谷間 | カフェではなく茶屋・韓菓の看板から探す | 提供に時間がかかる店がある。時間に余裕を持って |
| 韓服を着て歩きたい | 日中の明るいうち | 先にレンタル店を決め、そこを起点に路地を回る | 裾が長く、石畳や段差で汚れやすい |
| 夜のレトロな灯りを見たい | 日没後 | 閉店時間の早い店を外し、夜営業の看板を確認してから入る | 個人店は閉店が早い。空振りしやすい |
韓服(한복)を着るつもりなら、レンタルの相場感や当日の流れは景福宮エリアの韓服レンタルの選び方でつかんでおくと段取りが早くなります。韓屋の路地と韓服の相性は、写真で見るとやはり強い。
レンタル店を先に決めておきたい人は、日本語で申し込める予約サービスから探すのも近道です。
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「レトロに撮れない」を防ぐ、韓屋の見どころの拾い方
韓屋のレトロさとは、店内に置かれた小物ではなく、瓦屋根・木の柱・低い軒・小さな中庭という建物側の要素がつくり出しているものです。ここを外して、テーブルの上だけを寄りで撮ると、どこの街のカフェとも見分けがつかない一枚になってしまう。118棟の街までわざわざ来たのに、それはもったいない。
コツは単純で、建物の骨格が画面に入る距離まで下がること。韓屋の大半が30坪台以下という条件は、裏を返せば「少し下がれば1棟まるごと画角に収まる」ということでもあります。狭さを欠点ではなく構図の味方にする、という発想の切り替え。
| 見る場所 | 何が写ると益善洞らしくなるか |
|---|---|
| 路地 | 瓦屋根が連なって奥へ続く線。1棟だけを切り取るより、並びで撮ると街の履歴が出る |
| 軒下 | 低い軒と、その向こうに見える現代的なビル。1920年代と今の落差が1枚に収まる |
| 中庭 | 四角く切り取られた空。天候に左右されるぶん、晴れた日の当たりは大きい |
| 入口の段差 | 敷居をまたいで入る構造。住宅だった頃の名残がいちばん濃く残る場所 |
| 店と店の境目 | 同じ規格の韓屋が並ぶ様子。まとめて分譲された街だとわかる |
もうひとつ意識したいのが、順番。路地に入っていきなり1軒目のドアを開けるより、まず街全体を1周して外観だけ集めておくほうが、結果的に良い写真が残ります。約330店の中から選ぶわけなので、最初の1軒が最適解である確率はそう高くない。
この「引いて撮る」感覚は、韓屋が住宅として並ぶ北村でも同じように役立ちます。逆に、内装や什器そのものが主役になる新しい系統のカフェとは、撮り方の作法がまるで別物。同じソウルでも、街ごとにカメラの構え方を変えるくらいでちょうどいいと感じています。
行く前の5分でやること
営業情報の確認とは、地図アプリの表示をそのまま信じず、店側が最後に発信した情報まで見に行く作業のことです。個人経営の小さな店が多い街では、この5分の有無で当日の満足度がわりと変わります。
- 行きたい店の名前を韓国語表記でメモしておく(地図アプリの検索精度が上がる)
- 地図アプリの営業時間欄だけでなく、店の公式SNSの直近の投稿まで確認する
- 臨時休業・貸切・移転の告知が出ていないかを見る
- 候補を1軒ではなく3軒用意する(満席・休業のときの逃げ道)
- 路地は坂と段差があるので、歩きやすい靴を選ぶ
- 現金しか使えない店に当たったときの備えを一応しておく
本記事では、あえて個別店舗の住所や営業時間を書いていません。理由は単純で、小規模な個人店の営業情報はもっとも早く古くなる情報だから。ソウルイン編集部が2026年8月10日時点で一次情報として確認できたのは、この記事に書いたソウル市公式の数字までです。店舗情報は、行く直前に自分の目で確認するのが結局いちばん確実。
コーヒーそのものの選び方や、韓国のカフェで頼めるメニューの傾向を先に知っておきたいなら、韓国コーヒーのおすすめと選び方が下地になります。「アメリカーノしか頼めなかった」という帰国後のちょっとした後悔、けっこうあるあるなので。
益善洞が向かないケースもある
正直に書いておくと、この街が全員に向くわけではありません。韓屋という建物の性質そのものが、合わない条件をつくるからです。
- ベビーカー・車椅子での移動——路地が細く、段差と敷居がある。バリアフリーを前提にした造りではない
- 大人数のグループ——30坪台以下の韓屋が大半で、まとまった席を確保しにくい
- 作業やオンライン会議——席間が近く、静けさを買う場所ではない。それなら別のエリアのほうが快適
- 雨の日——中庭を活かした造りの店が多く、屋外席が使えないと魅力が半減する
- 「新しいもの」を見たい日——最新のカフェカルチャーを追うなら方向性が違う
広くて席の間隔が取れるカフェを探しているなら、倉庫や工場をリノベーションした店が集まる聖水洞のカフェ巡りガイドのほうが目的に合うはず。同じソウルのカフェ街でも、益善洞と聖水洞は真逆と言っていいくらい性格が違います。
益善洞の韓屋カフェについてよくある質問
写真も韓服もひととおり書きましたが、当日その場で決めて予約したいときのために、日本語対応の体験予約サービスをもう一度挙げておきます。
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まとめ:今日やることは「候補を3軒メモする」だけ
益善洞のカフェが韓屋レトロと呼ばれる理由は、雰囲気づくりではなく街の履歴にあります。1920年代に庶民向けの都市型韓屋団地として分譲され、1930年代以前の韓屋118棟が残り、2018年にソウル市が韓屋密集地域に指定した——この積み重ねが、路地の密度になって表れている。
だから旅の準備としてやることは、意外と少ない。店名リストを長く作るより、候補を3軒だけメモして、あとは現地で路地を通り抜ける。それで足ります。
- 行きたい雰囲気を1つ決める(写真/静けさ/伝統茶/韓服/夜の灯り)
- その目的に合う候補を3軒、韓国語表記でメモする
- 出発前に3軒ぶんの公式SNSの直近投稿をチェックし、鍾路3街駅6番出口を目的地に設定する
ソウル旅行そのものが初めてで、益善洞をどこに組み込むか迷っているなら、はじめての韓国旅行の準備ガイドから日程の組み方を確認してみてください。半日の空きがあれば、この街はちょうど収まります。
・ソウル市 韓屋ポータル(서울한옥포털)益善洞韓屋密集地域
https://hanok.seoul.go.kr/front/kor/town/town09.do(2026年8月10日確認)
・ソウル特別市「益善地区単位計画区域及び計画決定案」(2018年3月)
https://hanok.seoul.go.kr/home/data/scw/bbs/BBS_201904230705499270.pdf(2026年8月10日確認)
・韓国学中央研究院 教育用ウィキ「익선동 한옥마을 탄생과 역사·문화 가치」
dh.aks.ac.kr(教育用ウィキ)(2026年8月10日確認)
※店舗の営業時間・定休日は変動します。訪問前に各店の最新情報をご確認ください。

