ソウルの街を歩いていると、歩道の端にずらりと並んだ電動キックボードを見かけて「これ、旅行者でも借りられるのかな」と気になったことはありませんか。アプリを開けばQRコードを読み込むだけで動き出しそうに見えますが、実は韓国では電動キックボードに原付バイク以上の運転免許が必要だとされていて、免許を持たずに乗ると罰金の対象になります。この記事では、免許・年齢・アプリの本人確認・駐車・保険といった「乗る前に知っておくべきルール」を、警察庁系の公的情報にもとづいて整理しました。法令の解釈にかかわる部分は、最終的に警察庁や法制処(법제처)の公式情報で確認することをおすすめします。
韓国の電動キックボードは法律上「개인형 이동장치(ケインヒョン イドンジャンチ・個人型移動装置)」(PM)という区分に入り、運転するには原動機装置自転車免許(원동기장치자전거)以上が必要です(2021年5月13日施行の道路交通法にもとづく、2026年9月3日確認)。無免許運転の罰金は10万ウォン、ヘルメット未着用は2万ウォンです。外国人が使えるかどうかはアプリごとの本人確認方法によって差があり、パスポートまたは国際運転免許証での確認を用意している事業者もあります。ただし国際運転免許証に原付区分の記載が無いと運転資格として認められない可能性があるため、断定はできません。

電動キックボードは「개인형 이동장치」という乗り物
韓国の道路交通法では、電動キックボードや電動一輪・二輪の乗り物をまとめて「개인형 이동장치(ケインヒョン イドンジャンチ・個人型移動装置)」、略してPM(パーソナルモビリティ)と呼びます。定義は細かく決まっていて、原動機装置自転車のうち最高速度が時速25km未満・総重量30kg未満・電動機の動力だけで動くという3つの条件を満たすものだけがこの区分に入ります(2026年9月3日確認)。ペダルをこいだ力を電動でアシストするタイプの自転車は普通の自転車として扱われ、この区分には含まれません。
紛らわしいのが、一輪ボードや二輪ボード、電動スケートボードのような似た形の乗り物です。これらは道路交通法上のPMには含まれておらず、そもそも公道を走ること自体が想定されていません。旅行先で見かけた乗り物がどの区分に入るのかは、見た目だけでは判断しづらいことも多いので、レンタルの窓口やアプリの説明で「原付免許が必要な乗り物かどうか」を確認する癖をつけておくと安心です。
免許なしでは乗れない——原動機装置自転車免許のルール
2021年5月13日に施行された改正道路交通法により、PMを運転するには원동기장치자전거(ウォンドンギジャンチジャジョンゴ・原動機装置自転車)免許以上が必要になりました(2026年9月3日確認)。この免許は満16歳以上でないと取得できないため、16歳未満の人はそもそも法律上PMを運転できません。免許を持たずに運転しているのが見つかると、反則金10万ウォンが科されます(2026年9月3日確認)。日本円に換算すればそこまで大きな金額に見えないかもしれませんが、旅行中の予定外の出費としては、シートマスクを何十枚も買えるくらいの痛手になります。
ここで注意したいのは、日本の普通自動車免許や原付免許をそのまま提示しても、韓国国内で運転資格として直接認められるわけではないという点です。韓国で運転免許として通用するのは、韓国の免許か、後述する条件を満たした国際運転免許証に限られます。旅行中にレンタルバイクや原付を運転した経験がある人でも、電動キックボードについては別物として扱ったほうが安全です。
免許区分や罰金額は法改正で変わる可能性があります。最新の内容は警察庁(police.go.kr)や法制処の国民法令情報(easylaw.go.kr・law.go.kr)など公的な情報源で確認してください。この記事の内容は2026年9月3日時点で確認できた範囲です。
外国人の本人確認——国際運転免許証とアプリの審査
外国人がいちばん気になるのは、「自分の免許で運転資格として認められるのか」という点だと思います。道路交通法第156条の関連では、国際運転免許証の中に原動機装置自転車を運転できる区分が記載されている必要があるとされています(2026年9月3日確認)。ここが実務上の難しいところで、国際運転免許証の様式や取得した国によって区分の書き方が異なるため、「自分の国際免許で本当に足りるのか」を検索結果や体験談だけで断定することはできませんでした。出発前に自分の免許証の記載内容を確認し、判断に迷う場合は現地の警察や利用予定のアプリの問い合わせ窓口に直接確認することをおすすめします。
アプリ側の対応も事業者によって差があります。스윙(スウィン・SWING)は外国人向けに、まずGoogleまたはAppleのアカウントでの「ソーシャルログイン」で会員登録ができ、実際にPM機器を借りる前の本人確認の段階でパスポートまたは国際運転免許証のどちらかを使う仕組みを案内しています(2026年9月3日確認)。一方で킥고잉(キクゴイン・Kickgoing)は電話番号認証でのログインが基本という情報は確認できましたが、外国人が海外の電話番号や旅行者向けの本人確認をどこまで通せるのかは、公式情報からは確認できませんでした。빔(ビム・Beam)についても、外国人登録の可否を示す公式情報は確認できませんでした。確認できなかった事業者については、出発前に公式アプリやサポート窓口で直接問い合わせるのが確実です。
アプリのダウンロードや基本的な使い方、他の韓国生活アプリとの組み合わせ方については、韓国の主要アプリの入れ方をまとめた記事で先に確認しておくと、現地でのセットアップに戸惑いにくくなります。
ヘルメット着用義務と罰金
PMを運転する際は、ヘルメット(安全帽)の着用が義務です。着用していないと運転者本人に反則金2万ウォンが科され、同乗者がいる場合は同乗者にも過怠金2万ウォンが科されます(2021年5月13日施行、2026年9月3日確認)。コーヒー1杯分にも満たない金額と感じるかもしれませんが、旅行中に何度も注意を受けるようなことがあれば、気分よく観光を続けるのは難しくなりますよね。
ここまで紹介した違反と罰金額を一度整理しておきます。
| 違反内容 | 対象 | 金額 |
|---|---|---|
| 無免許運転 | 運転者 | 反則金10万ウォン |
| ヘルメット未着用 | 運転者 | 反則金2万ウォン |
| ヘルメット未着用 | 同乗者 | 過怠金2万ウォン |
| 定員超過(2人乗りなど) | 運転者 | 反則金4万ウォン |
| 歩道走行 | 運転者 | 反則金3万ウォン |
金額はいずれも2021年5月13日に施行された改正道路交通法にもとづくもので、2026年9月3日時点で確認できた内容です(出典は本文末尾)。レンタル各社のアプリにもヘルメット着用を促す案内が表示されることが多いので、借りる前の画面はさっと読み流さずに目を通しておくと安心です。
2人乗り禁止・歩道走行禁止のルール
PMの乗車定員は1人と決められています。友人やカップルで1台に2人乗りしているのを街で見かけることもありますが、これは定員超過にあたり、運転者に反則金4万ウォンが科されます(2026年9月3日確認)。写真映えを優先して2人で乗りたくなる場面もあるかもしれませんが、罰金だけでなく単純に転倒のリスクも上がるため、1人1台が原則だと考えておいたほうが良さそうです。
もう一つ見落としやすいのが走行場所です。PMは歩道を走ることが禁止されていて、自転車道路があればそこを、無ければ車道の右側端を走ることが基本とされています(2026年9月3日確認)。歩道を走ると歩行者との接触事故につながりやすいことに加え、反則金3万ウォンの対象にもなります。旅行者としては「人が少ない歩道のほうが安全そう」と感じてしまいがちですが、法律上はむしろ逆で、車道寄りの走行が前提になっている点は覚えておいて損はありません。
どこに停める?駐車禁止とけん引費用
PMは好きな場所にどこでも停めて良いわけではなく、点字ブロックの上や車道の真ん中、歩道の中央などに放置するとけん引の対象になります。道路交通法上、けん引や保管、公告、売却・廃車にかかった費用は、そのPMの利用者が負担することになっています(2026年9月3日確認)。ソウル市の案内では、共有キックボードのけん引費用が1台あたり4万ウォン、保管料が30分ごとに700ウォンという例が報じられており、時間が経つほど金額が積み上がっていく仕組みです(2026年9月3日確認)。
返却時にアプリの地図上で「駐車OK」と表示されているエリアかどうかを確認してから乗り捨てる習慣をつけておくと、こうした思わぬ出費を避けやすくなります。特に地下鉄の出入り口付近や横断歩道の近くは規制が厳しい傾向があるので、周囲に同じような場所にすでに何台か整列して停まっているかどうかを目安にするのも一つの方法です。
けん引費用の具体的な金額や運用は自治体・事業者の条例によって変わることがあります。返却前にアプリ内の駐車可否表示を必ず確認し、疑問があれば利用するサービスのサポート窓口に問い合わせてください。
未成年は乗れない
原動機装置自転車免許そのものが満16歳以上でないと取得できないため、16歳未満の人は法律上PMを運転できません(2026年9月3日確認)。家族旅行で子どもが「乗ってみたい」と言い出しても、年齢要件を満たしていなければアプリの本人確認の段階でつまずくことになります。
後述する漢江公園のように、エリアによってはさらに厳しい年齢制限が設けられている場合もあります。旅行の計画段階で家族の年齢構成を確認し、乗れない年齢のメンバーがいる場合は、キックボード以外の移動手段もあわせて考えておくと、現地で予定が崩れにくくなります。
事故と保険——海外旅行保険が対象外になることがある
PMの運転者には、自動車のような保険加入の義務がありません(2026年9月3日確認)。この空白を埋めるため、韓国の金融当局は自動車保険の標準約款を改定し、「無保険自動車」の定義にPMを加えることで、PMによる事故の被害者が自分の自動車保険を通じて一部補償を受けられるようにしています。ただしこれは韓国の自動車保険に加入している人向けの仕組みであり、旅行者本人がPM運転中に起こした事故そのものを直接カバーするものではありません。
日本から持っていく海外旅行保険についても、無免許運転や、加入している保険が想定していない乗り物での事故は補償の対象外とされるケースが一般的です。PMは原付相当の免許が必要な乗り物であるため、免許を持たずに運転して事故を起こした場合、旅行保険の補償を受けられない可能性があります。補償の対象になるかどうかはプランや保険会社によって異なるため、出発前に自分の保険会社へ直接確認することを強くおすすめします。旅行中の安全対策全般については、韓国旅行の安全対策をまとめた記事もあわせて確認しておくと、もしものときの動き方がイメージしやすくなります。
漢江公園での利用ルール
한강공원(ハンガンコンウォン・漢江公園)の自転車道路では、2020年12月10日からPMの通行が認められるようになりました(2026年9月3日確認)。ただし走って良いのは自転車道路と車道のみで、歩行者用の遊歩道や芝生エリアを走ることはできません。安全速度は時速20kmまでとされ、ヘルメット着用、飲酒運転の禁止、無断駐車・放置の禁止といった基本ルールは公園内でも変わりません(2026年9月3日確認)。
年齢制限はむしろ公園のほうが厳しく、満13歳未満の子どもは利用が禁止されていて、違反した場合は保護者に10万ウォン(最大20万ウォン)の過怠金が科されます。指定された道路以外の場所でPMを運行すると、5万ウォンの過怠金の対象にもなります(2026年9月3日確認)。ピクニックやサイクリングのついでに気軽に走らせたくなる開放的な雰囲気の場所ですが、ルールの厳しさは市街地と変わらないか、むしろ細かく決められている点は意識しておきたいところです。漢江公園そのものの遊び方や見どころについては、漢江公園の総論ガイドで広く紹介しているので、PM以外の楽しみ方もあわせてチェックしてみてください。
乗らないという選択肢——シェア自転車・タクシー・徒歩
ここまで見てきたように、電動キックボードは免許・年齢・保険といった条件がそろって初めて選択肢に入る移動手段です。条件に当てはまらない、あるいは条件はそろっていても不安が残るという人には、シェア自転車や公共交通のほうが現実的な場面が多くあります。特に短距離の移動や、荷物が多いとき、夜遅い時間帯の移動では、キックボードよりも安定した手段を選ぶほうが気持ちよく旅行を続けられるはずです。
ソウル市が運営する公共シェア自転車については따릉이(ッタルンイ)の使い方をまとめた記事で、民間のシェア自転車サービスとの違いについてはシェア自転車サービスの比較記事で、それぞれ料金や借り方まで整理しています。急いでいるときや荷物が多いときは、道端でのタクシーの拾い方をまとめた記事も参考にしてみてください。免許や本人確認の条件を気にせず使えるという点では、こうした手段のほうが旅行者にとって気楽な選択肢かもしれません。
よくある質問
まとめ
- 韓国の電動キックボードは「개인형 이동장치」(PM)という区分で、運転には原動機装置自転車免許以上が必要(2021年5月13日施行)
- 無免許運転の反則金は10万ウォン、ヘルメット未着用は運転者2万ウォン・同乗者2万ウォン(2026年9月3日確認)
- 外国人が使えるかどうかはアプリ次第。SWINGはパスポートまたは国際運転免許証で本人確認できるが、国際免許に原付区分の記載が必要
- 2人乗りは反則金4万ウォン、歩道走行は反則金3万ウォンの対象
- 駐車禁止エリアに放置するとけん引・保管費用が利用者負担になる
- 16歳未満は運転不可。漢江公園はさらに13歳未満の利用が禁止されている
- PM運転者に保険加入義務はなく、海外旅行保険の補償対象になるかは要事前確認
- 条件に不安がある人は、シェア自転車や公共交通のほうが現実的な選択肢になりうる
電動キックボードは便利な移動手段に見える一方で、免許・年齢・保険といった条件がきちんとそろっていないと、罰金や補償トラブルにつながりかねない乗り物でもあります。この記事で紹介した内容は2026年9月3日時点で確認できた範囲のもので、法令や各社のサービス内容は今後変わる可能性があります。実際に利用する前には、警察庁や法制処の公式情報、利用予定のアプリの最新案内を必ず確認してください。
参考・出典
- 찾기쉬운 생활법령정보(easylaw.go.kr)「전동킥보드 등 이해하기」(PMの定義・免許要件) https://www.easylaw.go.kr/CSP/CnpClsMain.laf?csmSeq=1506&ccfNo=1&cciNo=1&cnpClsNo=1 (2026年9月3日確認)
- 찾기쉬운 생활법령정보(easylaw.go.kr)「전동킥보드 등 운전자 준수사항」(走行場所・けん引費用の負担) https://easylaw.go.kr/CSP/CnpClsMain.laf?popMenu=ov&csmSeq=1506&ccfNo=2&cciNo=1&cnpClsNo=1 (2026年9月3日確認)
- 모바일 찾기 쉬운 생활법령(m.easylaw.go.kr)「전동킥보드 무면허 운전, 헬맷 미착용시 범칙금이 부과됩니다」(無免許・ヘルメット未着用の反則金額、施行日) https://m.easylaw.go.kr/MOB/NtcInfoRetrieve.laf?ntcSeq=1210 (2026年9月3日確認)
- 인사이트코리아「공유 모빌리티 스윙(SWING), 외국인 탑승 기능 오픈하며 글로벌 앱으로 진화」(外国人向け本人確認の仕組み) https://www.insightkorea.co.kr/news/articleView.html?idxno=106925 (2026年9月3日確認)
- 내 손안에 서울(mediahub.seoul.go.kr)「전동 킥보드 한강 달린다…주의해야 할 점은?」(漢江公園でのPM利用ルール・年齢制限) https://mediahub.seoul.go.kr/archives/1304637 (2026年9月3日確認)
- 서울특별시 정보소통광장(opengov.seoul.go.kr)「10일부터 전동 킥보드 한강 달린다…주의해야 할 점은?」(漢江公園の過怠金額) https://opengov.seoul.go.kr/mediahub/21789649 (2026年9月3日確認)
- 한국경제「킥보드 막히자 자전거 갔더니…또 4만원 견인 꺼낸 서울시」(けん引費用・保管料の事例) https://www.hankyung.com/article/202609029863i (2026年9月3日確認)

