韓国の食堂で「チヂミください」と言ったら、店員さんに一瞬きょとんとされた——そんな経験がある人、実は少なくないはずです。日本で「チヂミ」と呼んでいるあの料理、韓国では別の名前で呼ばれていて、そのままカタカナ発音で伝えても通じないことが多いんです。この記事では、呼び方の整理から種類の見分け方、雨の日に食べたくなる理由、そして実際にどこで食べられるかまで、編集部の整理で順番にまとめました。
日本の「チヂミ」にいちばん近い韓国語は전(ジョン)または부침개(プチムゲ)で、ネギを使うタイプだけを指して파전(パジョン)と呼びます。「チヂミ」はもともと済州島の方言で、韓国の標準語としてはあまり通じません。食べられる場所は広蔵市場(광장시장)のような市場の屋台、専門店、居酒屋の3系統に分かれ、値段は編集部が確認できた範囲で1枚6,000〜19,000ウォン前後でした(2026年9月3日確認)。
「チヂミ」は韓国ではあまり通じない——呼び方の整理
日本のスーパーやレシピサイトで見かける「チヂミ」という言葉、実はこれ韓国の標準語ではなく、済州島(제주도)の方言だと言われています。本土のソウルで「치지미 주세요(チヂミください)」と言っても、通じないか、聞き返されることのほうが多いはずです。韓国語で最も一般的に使われるのは전(ジョン)で、漢字で書くと「煎」。材料を薄く切ったり刻んだりして、小麦粉や卵をまとわせて鉄板で焼いた料理全般を指す言葉です。
似た言葉に부침개(プチムゲ)があります。厳密には、전が「素材の形をできるだけ残して衣をつけて焼く」タイプ(牡蠣전・えび전など)を指すのに対し、부침개は「素材を細かく刻んで生地に混ぜ込んで焼く」タイプ(キムチ부침개・ズッキーニ부침개など)を指すという整理がされています。ただ実際の食堂ではこの二つはかなり重なって使われていて、店員さんも전と부침개をほぼ同じ意味で使っているのをよく見かけます。細かい線引きにこだわるより「ジョンと言えば通じる」くらいの理解で十分です。
そしてネギをたっぷり使うタイプだけを指すのが파전(パジョン)です。파(パ)はネギの意味で、小麦粉の生地にネギを並べて焼いた料理という成り立ちがそのまま名前になっています。慶尚道の方言では전も부침개もまとめて지짐이(チジミ)と呼ぶこともあり、日本語の「チヂミ」はここから来たのではという説もあります。呼び方は地域や店によって揺れるものの、旅行者としては「전」「부침개」「파전」の3語を覚えておけば、メニュー表を見たときに迷わなくなるはずです。
種類の見分け方——해물파전・김치전・감자전・녹두전・동그랑땡
전の仲間にはいくつも種類があり、居酒屋のメニュー表に並んでいると迷いやすいところです。代表格は해물파전(ヘムルパジョン)で、いか・えび・ムール貝などの海鮮とネギをたっぷり使った、居酒屋の定番メニュー。次によく見るのが김치전(キムチジョン)で、刻んだキムチを生地に混ぜて焼くタイプ。キムチの酸味がアクセントになり、辛さは思ったより控えめな店が多いのも特徴です。
감자전(カムジャジョン)はすりおろしたじゃがいもだけで作るタイプで、もちっとした食感が持ち味。江原道の郷土料理として知られています。녹두전(ノクトゥジョン)は緑豆をひいた生地で作るタイプで、これが빈대떡(ビンデトク)とほぼ同じものを指す名前です。次の見出しで紹介する広蔵市場の名物は、まさにこの녹두전=빈대떡になります。最後に동그랑땡(トングランテン)は、ひき肉に野菜を混ぜて丸く成形して焼く料理で、専門店で頼むというより、家庭の食卓や総菜店で見かけることが多いタイプです。
見分け方に迷ったら「主役が何か」で考えると早いはずです。海鮮が主役なら해물파전、キムチが主役なら김치전、じゃがいもだけなら감자전、緑豆の生地なら녹두전(빈대떡)、ひき肉の丸型なら동그랑땡というふうに、材料名がそのまま料理名になっていると覚えておくと、ハングルが読めなくても発音だけで見分けがつきやすくなります。

なぜ雨の日に파전+막걸리なのか
韓国では「비 오는 날엔 파전에 막걸리(雨の日はパジョンにマッコリ)」という言い回しがよく使われます。これがなぜなのか、はっきり一つの理由に決まっているわけではなく、いくつかの説が語られているというのが正確なところです。編集部が確認できた範囲では、大きく3つの説がよく紹介されています。
ひとつは体感に基づく説で、雨の日は気圧が下がって血糖値が下がりやすく、小麦粉を使った파전のような炭水化物が食べたくなるという説明です。もうひとつは音の連想による説で、雨粒が窓や地面に当たる音と、生地を鉄板に流し込んだときの「ジュー」という音が似ていて、雨音を聞くと無意識に파전を思い出すというもの。そして農業社会の名残とする説では、雨で農作業ができない日に家や集落に人が集まり、そこで小麦粉料理と酒を分け合う習慣が根付いたと説明されています。小麦の収穫時期が夏(7〜8月)にあたることも、この説の裏付けとしてよく挙げられます。
科学的に断定できる話ではなく「よく言われている理由」として3つとも紹介されている段階のものですが、いずれにしても雨の日の食堂やポジャンマチャ(屋台)で파전を頼む人が増えるのは実際によく見かける光景です。旅行中にちょうど雨に降られたら、無理に予定を詰め込まず、近くの店で파전とマッコリを試してみるのも悪くない過ごし方かもしれません。逆に晴れた日にソウルらしい景色を楽しみたいなら屋上カフェの記事も参考になります。
広蔵市場(광장시장)の빈대떡屋台で食べる
実際に녹두전(빈대떡)を食べる場所として名前が挙がることが多いのが、鍾路(종로)にある광장시장(クァンジャン市場)です。市場の中に빈대떡専門の屋台が何軒も並ぶエリアがあり、鉄板でジュージューと焼く音と煙が市場の名物風景になっています。編集部で確認できた店の一つが순희네빈대떡(スニネビンデトク)で、종로32길5(市場内)にあり、営業時間は毎日10:00〜21:00(ラストオーダー20:30)、녹두빈대떡6,000ウォン・고기빈대떡(肉入り빈대떡)12,000ウォン・고기완자(肉団子)1枚4,000ウォン、녹두빈대떡2枚と고기완자1枚のセットが16,000ウォンと案内されていました(2026年9月3日確認)。
NAVER地図でも確認できます: 순희네빈대떡(NAVER地図で見る)
営業時間・価格は編集部が2026年9月3日に確認した時点の情報です。市場の屋台は改装や移転で状況が変わることもあるので、訪問前に現地の案内や電話で最新情報を確認することをおすすめします。
市場の빈대떡屋台は基本的に立ち食い・相席が中心で、屋台ごとに数店が軒を連ねているため、混雑時は近くの店を見比べて空いている席から座るスタイルになります。現金払いのみという屋台も残っているので、小額の現金を用意しておくと慌てずに済むはずです。市場全体の活気を含めて楽しみたい人には向いていますが、静かに座ってゆっくり食べたい人には次に紹介する専門店のほうが合っているかもしれません。
市場以外の選択肢——専門店・居酒屋・파전横丁
광장시장以外にも전を食べられる場所はいくつかの型に分かれます。ひとつは전専門の食堂で、해물파전や김치전を主力メニューにして、정식(定食)形式のランチを出す店も見かけます。ランチとして韓国の食堂を使い分けたい人は韓国のランチガイドもあわせて見ておくと、전専門店以外の選択肢も含めて計画しやすいはずです。
もうひとつの型が居酒屋(포장마차・술집)で提供される파전です。雨の日文化のところで触れた通り、居酒屋のメニュー表には해물파전や김치전がほぼ必ずと言っていいほど並んでいて、마고리やソジュのつまみとして定番の位置づけになっています。編集部が確認できた範囲では、居酒屋の해물파전は1枚14,000〜19,000ウォン程度で提供されていることが多いようです(2026年9月3日確認)。特定の1店に絞らず、複数の居酒屋の相場としてこの幅を目安にしてください。
もう一つ知っておくと面白いのが、東大門寄りの回基駅(회기역)周辺に広がる파전골목(パジョン横丁)です。1970年代に小さな店から始まったとされ、1980年に回基駅ができてからは、近くの慶熙大学(경희대)や韓国外大(외대)の学生が集まって파전とマッコリを囲む場所として広がったという成り立ちが伝えられています。市場の빈대떡とはまた違う「学生街の파전文化」を感じたい人には、足を延ばす価値がある場所です。望遠(マンウォン)市場の食べ歩き記事でも触れているように、韓国の市場ごとに名物の食べ方が根付いているのがおもしろいところです。
値段の目安——確認できた範囲では
ここまで紹介した情報を整理すると、市場の屋台(순희네빈대떡)で녹두빈대떡6,000ウォンから、居酒屋の해물파전で14,000〜19,000ウォン前後という幅でした(2026年9月3日確認)。市場の빈대떡は1枚あたりの単価が比較的手頃で、居酒屋の해물파전は具材が豪華な分やや高めという傾向がうかがえます。日本円の感覚に置き換えると、コンビニのおにぎり1個分から、ちょっとしたランチ1食分くらいのイメージです。
| 場所・タイプ | メニュー | 価格帯 | 確認日 |
|---|---|---|---|
| 순희네빈대떡(市場屋台) | 녹두빈대떡 | 6,000ウォン | 2026年9月3日 |
| 순희네빈대떡(市場屋台) | 고기빈대떡 | 12,000ウォン | 2026年9月3日 |
| 居酒屋(複数店の目安) | 해물파전 | 14,000〜19,000ウォン | 2026年9月3日 |
ただし為替レートや店舗の価格改定で数字は変わるので、この記事の金額は「相場のイメージをつかむための参考値」として見てください。予算を抑えたいなら市場の빈대떡屋台、居酒屋の雰囲気でしっかり食べたいなら해물파전というふうに、目的に応じて選び分けると失敗しにくいはずです。
一人前の量と、一人客でも頼めるか
전全般に共通して言えるのが「1枚のサイズが大きい」という点です。居酒屋の해물파전もお皿からはみ出すくらいの大きさで出てくることが多く、2〜3人でシェアする前提のメニューになっている店がほとんどです。一人旅で入った居酒屋で해물파전(ヘムルパジョン)を1枚頼むと、正直かなり持て余すことになるかもしれません。순희네빈대떡のように녹두빈대떡2枚+고기완자1枚の모듬(盛り合わせ)セットを用意している店は、もともと2人前を想定した構成と考えられます。
一人客が전専門店や市場の屋台に入りづらいかというと、そんなことはありません。市場の屋台は立ち食いスタイルの店も多く、一人でふらっと入っても浮きにくい雰囲気があります。一人でも入りやすい韓国食堂の選び方全般はひとりごはんの記事で扱っているので、전以外の選択肢も知っておきたい人はあわせてどうぞ。一人で전を楽しみたいときは、量が少なめの고기완자単品や、半分サイズを扱っている店を探すのがひとつの手です。
グループで訪れる場合は、複数の種類を少しずつ頼んで並べるのがおすすめです。해물파전・김치전・녹두전を1枚ずつ頼んでシェアすれば、味の違いを比べながら食べられて、一人あたりの量も無理なく収まります。市場の屋台なら、隣の屋台の녹두전と合わせて頼むという食べ方をしている地元客の姿もよく見かけます。
マッコリとの合わせ方
雨の日文化のところでも触れた通り、전とマッコリの組み合わせは韓国の食文化の中でも特に定番とされる取り合わせです。マッコリはお米を発酵させた微発泡の濁り酒で、甘みと酸味のバランスが料理によって変わるため、전の脂っこさや小麦粉の風味と合わせやすいと言われています。ソウルでマッコリを飲める店の選び方や種類の見分け方についてはマッコリバーの記事で別にまとめているので、전と合わせて楽しみたい人はそちらも参考にしてください。
市場の屋台でも、빈대떡と一緒にマッコリを頼めることが多く、プラスチックのやかんに入ったマッコリを小さなボウルでついで飲むスタイルが定番です。居酒屋であれば、마고리の種類が数種類用意されている店も増えていて、甘口・辛口・生マッコリなど好みに応じて選べます。전の種類によって合わせるマッコリを変えてみるのも、韓国らしい楽しみ方のひとつです。海鮮メインの해물파전には少しさっぱりめのマッコリ、こってりした동그랑땡系のおかずには甘めのマッコリ、というふうに好みで試してみると発見があるはずです。
辛くないので、辛いのが苦手な人にも向く
전の多くは、辛さを前面に出した料理ではありません。해물파전も김치전も감자전も녹두전も동그랑땡も、基本の味付けは塩や醤油ベースで、青唐辛子を刻んだ薬味を別添えにしている店が多いのが特徴です。キムチを使う김치전だけは酸味と少しの辛みがありますが、キムチそのものの辛さは店によって差があり、韓国料理の中では比較的マイルドな部類に入ります。
辛いものが苦手な人が韓国旅行で困りやすいのは、汁物や炒め物に唐辛子ペースト(고추장)が最初から練り込まれているケースですが、전はその心配が少ない料理と言えます。どうしても不安な場合は、薬味を別皿でもらって自分で量を調整すればさらに安心です。韓国の辛さ対策全般については辛いものが苦手な人向けの記事にまとめているので、전以外のメニュー選びに悩んだときはそちらもあわせて確認しておくと安心です。
子ども連れの旅行や、辛い料理が続いて胃が疲れてきたときの箸休めとしても전は使いやすいメニューです。居酒屋で辛い炒め物やチゲを頼んだ流れの中に、辛くない전を一品挟むだけで、食卓全体の辛さのバランスが取りやすくなります。辛いものが得意な人にとっても、辛さのリセット役として전を挟む食べ方はおすすめできます。
日本のチヂミとの違い——生地の厚みと粉
日本の家庭やお店で作られる「チヂミ」は、韓国の전と比べると生地が薄めで、パリッとした食感に仕上げる作り方が主流です。粉も小麦粉と片栗粉を混ぜて焼き上がりをカリッとさせるレシピがよく見られます。一方、韓国の해물파전や녹두전は生地に厚みがあり、外側はカリッとしつつも中はもっちりとした食感に仕上げるのが特徴で、緑豆を使う녹두전にいたっては小麦粉をほとんど使わず、緑豆をひいた生地だけで焼き上げる店もあります。
味付けの面でも違いがあります。日本のチヂミはあらかじめ生地に味をつけて、そのまま食べられるように仕上げることが多いのに対し、韓国の전は生地自体の味付けは控えめにして、酢醤油ベースの초간장(チョガンジャン)という付けだれにつけて食べるスタイルが基本です。付けだれの酸味と塩気で味を整える前提なので、生地だけを一口食べると「思ったより薄味」と感じる人もいるはずです。
具材の入れ方にも差があります。日本のチヂミは家庭にある野菜やニラを刻んで混ぜ込むレシピが定番ですが、韓国の해물파전はいか・えび・ムール貝などの海鮮を生地の上に並べてから焼く作り方が主流で、素材の形がそのまま見える仕上がりになります。同じ「小麦粉料理」というくくりでも、生地の厚み・付けだれの有無・具材の入れ方という3点で、食べ比べるとはっきり違いが分かるはずです。
よくある質問
まとめ
- 日本の「チヂミ」に近い韓国語は전(ジョン)・부침개(プチムゲ)。ネギを使うタイプだけが파전(パジョン)
- 種類は해물파전・김치전・감자전・녹두전(빈대떡)・동그랑땡など、材料名がそのまま料理名になっている
- 「雨の日に파전+막걸리」は血糖値説・音の連想説・農業社会の名残説など複数の説があり、断定できる由来ではない
- 食べる場所は광장시장の屋台、専門店、居酒屋、파전골목など複数の型がある。値段は確認できた範囲で6,000〜19,000ウォン前後(2026年9月3日確認)
- 1枚のサイズが大きく、居酒屋のメニューは2〜3人前が基本。一人なら단품や小さめのメニューを探すとよい
- 辛さは控えめな料理が多く、辛いものが苦手な人にも向く。日本のチヂミとは生地の厚みと付けだれの有無で違いが分かる
「チヂミ」という呼び方にこだわらず、전・부침개・파전という現地の言葉で覚えておくと、メニュー表を見たときの安心感がぐっと変わるはずです。この記事で紹介した店の営業時間や価格は執筆時点の確認情報なので、訪問前に現地の案内や公式情報で最新の状況を確認することをおすすめします。
参考・出典
- 순희네빈대떡 店舗情報(住所・営業時間・メニュー価格) https://www.diningcode.com/profile.php?rid=8V0fzUQpo7jM (2026年9月3日確認)
- 농민신문「전・부침개・지짐」用語の違い解説 https://www.nongmin.com/article/20110611073163 (2026年9月3日確認)
- 세계일보「비 오는 날엔 왜 막걸리에 파전이 당길까」 https://www.segye.com/newsView/20260831515185 (2026年9月3日確認)
- 서울사랑「회기역 파전골목」由来紹介 https://love.seoul.go.kr/articles/8701 (2026年9月3日確認)
- 식신 서울 파전 맛집 가격帯参考 https://www.siksinhot.com/theme/magazine/5960 (2026年9月3日確認)

