友達とソウルのカフェに入って、そのまま窓際の空いている席にふらっと座ってしまい、店員さんに「注文は先にお願いします」と声をかけられて焦った……という話、旅行者の間でよく聞きます。実は韓国のカフェには、日本のカフェとは少し違う「暗黙の動き方」があります。呼び出しベルの受け取り方、外の食べ物を持ち込んでいいのか、飲み終えたあとのトレーはどうするのか。知らないまま入ると、小さくまごつく場面が意外と多いのです。この記事では、韓国のカフェに入ってから出るまでの動き方を、公式のチェーン利用案内で確認できることと、慣習として言われていることを分けて整理しました。
韓国のカフェは先にカウンターで注文・会計をすませてから席に着くのが基本の動き方です。会計時に呼び出しベル(진동벨)を渡されることが多く、鳴ったらカウンターへ取りに行きます。外の食べ物の持ち込みは店ごとの判断が大きく、スターバックスコリアは2025年10月13日から全店で外部飲食の持ち込み・喫食を原則禁止にしました(乳幼児の離乳食のみ例外)。飲み終えたあとは、セルフサービスの店であればトレーとカップを退食口(퇴식구)へ自分で下げるのが基本です。ワンドリンク制も法律上の義務ではなく、店が独自に決めている利用条件です(2026年8月31日確認)。
韓国のカフェはセルフサービスが基本——動き方の全体像
韓国のカフェ、特にチェーン系の大型店舗の多くはセルフサービス方式で運営されています。カウンターまたはキオスク(無人注文端末)で注文と会計をすませ、呼び出しベルが鳴ったら自分でカウンターへ受け取りに行き、飲み終えたら自分でトレーを返却口へ下げる。この「注文から片付けまで自分で動く」という設計そのものが、韓国のカフェの動き方の土台になっています。
日本のカフェのように、席に座ってから店員がオーダーを取りに来る「テーブルサービス」の店は、韓国では個人経営の小規模カフェの一部に限られます。大手チェーンでこの方式を採る店はほとんど無いため、初めて入る店がどちらの方式かわからないときは、まずレジやカウンターの位置、キオスクの有無を見て判断するのが早道です。カウンターが目に入る作りなら、まず注文からと考えて間違いありません。
初めて注文する人は、カウンターでの言い回しに不安を感じることも多いと思います。この記事では最低限の流れだけを扱うので、注文時に使える具体的なフレーズはカフェで使える韓国語注文フレーズ集にまとめています。
席は先に取っていいのか——荷物を置いて場所を確保する慣習をどう見るか
韓国のカフェでよく見かける光景のひとつが、注文前にバッグやノートパソコン、上着などを空いている席に置いて「場所取り」をしてから、カウンターへ注文に向かうという動きです。混雑する時間帯のカフェでは、この動きをしている客が珍しくありません。外国人観光客がこの光景を見て驚いたという体験談も複数報告されています。
ただし、これはあくまで慣習として広く行われているというだけで、どの店にも共通する公式ルールではありません。カフェ側が明示的に推奨しているわけでもなく、単に客同士の暗黙の了解として定着している動きです。財布やスマートフォンなど価値の高い貴重品を置いたまま長時間席を離れる客もいますが、これはこの記事として積極的に勧められる行動ではありません。
荷物での場所取りは韓国では比較的よく見られる慣習ですが、盗難のリスクがゼロというわけではありません。何かあったときに困るのは自分自身なので、貴重品を置いたまま長時間離れるかどうかは、周囲の混雑状況や店の雰囲気を見たうえで、自己判断で決めることをおすすめします。
荷物を置くかどうか迷う場面が多いのは、そもそも一人でカフェに入る場面です。一人カフェの過ごし方や座席の選び方については、一人で入りやすい韓国カフェの過ごし方ガイドで別に扱っています。
注文の流れ——カウンター・キオスク・呼び出しベル
実際の注文の流れは、店の規模によって大きく2パターンに分かれます。ひとつはカウンターでスタッフに直接注文して会計するパターン、もうひとつはキオスクと呼ばれる無人注文端末で自分でメニューを選び、カードや交通カードで会計するパターンです。近年は特に大型チェーンでキオスク導入が進んでおり、混雑時間帯はキオスクの列のほうが短いこともあります。
会計が終わると、多くの店で진동벨(チンドンベル、呼び出しベル)と呼ばれる小型の受信機を渡されます。これを持って好きな席に座り、呼び出しベルが振動・点灯したらカウンターへ受け取りに行く、という流れです。一部の小規模店では呼び出しベルを使わず、番号や名前を呼ぶ方式を採っている場合もあります。
注文時にサイズやオプションを聞かれることもよくあります。基本的なやり取りに不安がある人は、先に紹介した注文フレーズ集に目を通しておくと、カウンターでの数十秒がぐっと楽になるはずです。値段の相場感が気になる人は韓国カフェの価格ガイドも参考にしてください。
呼び出しベル(진동벨)の使い方——鳴ったら取りに行く、無言で置いていかない
呼び出しベルを受け取ったら、注文品が仕上がるまで席で待ち、振動と光で知らされたらカウンターへ向かうのが基本です。受け取ったベルをレジ前に置いたまま「ここにいるので呼んでください」と口頭だけで伝える客も一部にいますが、店の運用としては、ベルを持って自席で待ち、鳴ったら自分で取りに行くほうがスムーズです。
もうひとつ知っておきたいのが、退店時にうっかり呼び出しベルをそのままバッグに入れて店を出てしまうケースです。実際、これは珍しいトラブルではないようで、気づいた時点で恥ずかしがらずに、後日でもいいので店に返しに行くのがマナーとされています。次に店を利用する予定があるなら、そのタイミングで返却すれば十分です。
- 会計後に呼び出しベルを渡されたら、そのまま持って席へ移動する
- 振動・点灯したら、自分でカウンターへ受け取りに行く
- 誤って持ち帰ってしまったら、次回の来店時などに店へ返却する
呼び出しベルが鳴ったあとカウンター前が混み合っていることもあります。列に並ぶこと自体は日本と大きくは変わりませんが、電源やWi-Fiを探しながら長く滞在する予定がある人は、席に戻る前にカフェの電源・Wi-Fi事情ガイドも確認しておくと動きに無駄がありません。
ワンドリンク制と「1人1杯」の考え方——法律ではなく店のルール
複数人でカフェを利用するとき、「1人につき1杯以上の注文をお願いします」という원드링크제(ワンドリンクジェ、ワンドリンク制)を掲げる店があります。これは法律で定められた義務ではなく、あくまで店が営業方針として独自に設定している利用条件です。カフェは飲み物だけでなく、座席と滞在時間もあわせて提供している業態だという考え方が背景にあります。
ここで重要になるのが、案内のタイミングです。注文・会計の前にワンドリンク制であることを店側から案内されていれば、客はその条件を前提に利用したことになり、あとから納得できないと感じても覆すのは難しいというのが一般的な見方です。逆に、会計後や着席後に急に告げられた場合はトラブルになりやすく、実際にSNS上でも複数人での利用と1人1杯ルールの適用をめぐる話題が繰り返し取り上げられています。
ケーキやブランチメニューなど単価の高いメニューを注文した場合、1人1杯の原則を一律に適用しなくてもいいのではという指摘も出ていますが、これは店ごとの裁量に委ねられている部分で、統一された基準があるわけではありません。判断に迷ったら、注文前にスタッフへ確認するのが確実です。
外の食べ物を持ち込んでいいのか——公式にはっきり答えを出したチェーンもある
外部で買った食べ物や飲み物をカフェに持ち込んでいいかどうかは、店によって対応が分かれる論点です。飲食店が外部飲食の持ち込みを制限する背景には、食中毒などのトラブルが起きた際に原因の切り分けが難しくなること、匂いの強い食べ物が他の客の迷惑になること、食べ終えたあとの片付けが店側の負担になることなどが挙げられています。
この論点で大きな動きがあったのが、スターバックスコリアです。同社は2025年10月13日から全国の店舗で外部の食べ物・飲み物の持ち込みおよび店内での喫食を原則禁止にしたと、10月15日に発表しました。店舗には「店内での外部飲食(フードや飲み物)の喫食はご遠慮いただいています。店内では用意されたメニューをご利用ください」という趣旨の案内が掲示されています。唯一の例外は乳幼児が食べる離乳食で、これは引き続き認められています(2026年8月31日確認)。
それ以前のスターバックスは、匂いの強い食べ物を除けば外部飲食に比較的寛容だったとされていますが、トッポッキや弁当のように匂いが強く他の客の迷惑になりやすい食べ物を持ち込んで飲食する客が増えたことが、方針転換の理由として説明されています。
투썸플레이스(トゥーサムプレイス)やイディヤコーヒーなど、他の大手チェーンの公式利用案内については、今回の調査では外部飲食に関する明確な記載を確認できませんでした(2026年8月31日確認)。持ち込み可否は店舗ごとの判断による部分が大きいため、入口やレジ周りの掲示を確認するか、迷ったらスタッフに一声かけるのが確実です。
子ども連れでの利用を考えている人は、離乳食の扱いも含めて子連れで入りやすいカフェの見つけ方ガイドもあわせて確認しておくと安心です。
食べ終えたあと——返却口(퇴식구)へ下げるのが基本
セルフサービス方式のカフェでは、飲み終えたあとの片付けも客の役割です。トレーやカップを、店内に設けられた퇴식구(テシック、返却口)へ自分で運ぶのが基本の流れになっています。多くの店ではレジ付近やドリンクバーの近くに返却口が用意されており、トレーを置く場所、紙コップ用のゴミ箱、氷を捨てる穴などが分かれて設置されています。
この返却の習慣は法律で決まっているものではありませんが、韓国のカフェ利用者のあいだでは広く共有されているマナーとされています。トレーを席に置いたまま帰る客に対して、店員や他の客から不満の声が上がる場面もあるようです。テーブルサービスの店では店員が回収してくれることもあるため、店の方式が自分でわからないときは、他の客の動きを見て真似るのが一番の近道です。
返却口が見当たらない、あるいは席にゴミが残っているような店では、無理に探し回らず店員に確認するのが安全です。街歩きの合間に立ち寄るカフェの探し方については、街歩き中に寄れるカフェの探し方ガイドも参考になります。
長居はどこまで許されるか——カフェ・勉強・混雑時
ノートパソコンや参考書を広げてカフェで勉強や作業をする人たちは、韓国語で카공족(カゴンジョク、カフェ勉強族)と呼ばれています。テーブルにノートパソコン、タブレット、充電器、問題集、蛍光ペン、イヤホンが並んでいる光景は、韓国のカフェでは珍しくありません。
長時間の滞在について、大手チェーンの多くは本社レベルで統一された時間制限を設けていないとされています。ただし、加盟店(フランチャイズ店舗)が独自の判断で滞在時間の目安を掲示することはあり、2023年の報道では、一部の店舗が「一定時間が経過したら追加注文をお願いする」といった案内を出している例が紹介されました。これが現在すべての店舗に当てはまるかどうかまでは、今回の調査では確認できていません(2026年8月31日確認)。
混雑する時間帯に長時間居座ることは、店や他の客への配慮に欠ける行動と受け取られやすい点は、日本のカフェと大きくは変わりません。長時間の作業場所を探している人は、電源やWi-Fiの有無もあわせて電源・Wi-Fi事情ガイドで確認し、チェーンごとの傾向を比較したい人は韓国カフェチェーンの比較ガイドも見ておくと選びやすくなります。

よくある質問
まとめ
- 基本の流れは「先に注文・会計」→「呼び出しベルを受け取り着席」→「鳴ったら受け取り」→「飲み終えたら返却口へ」
- 荷物での場所取りは韓国でよく見られる慣習だが、公式ルールではなく盗難リスクもゼロではない
- 呼び出しベルは持って待ち、鳴ったら自分で受け取りに行く。誤って持ち帰ったら後日でも返却を
- ワンドリンク制は法律上の義務ではなく店の利用条件。注文前の案内があるかどうかが焦点になる
- 外部飲食の持ち込みは店ごとの判断。スターバックスは2025年10月から全店で原則禁止にした
- 飲み終えたトレー・カップは、セルフサービスの店では自分で返却口へ下げるのが基本
- 長時間の滞在は店やチェーンによって扱いが異なる。掲示が無い店では周囲への配慮を優先する
ひとつひとつは小さな動きですが、この一連の流れを知っているだけで、韓国のカフェに入るときの「これで合ってるのかな」という小さな不安はかなり減らせるはずです。店によって細かい運用が違う部分も多いので、この記事で「確認できていない」と書いた点については、入店時の掲示やスタッフへの確認で補ってください。
参考・出典
- 인더스트리뉴스「’외부음식 반입 금지’ 칼 빼든 스타벅스…13일부터 전국 매장서 외부 음식 취식 금지」 https://www.industrynews.co.kr/news/articleView.html?idxno=72745 (スターバックスコリアの外部飲食全面禁止の施行日・発表日・例外条件を確認、2026年8月31日確認)
- 아시아경제「’너무한다 싶더니’…”못 참겠다” 스타벅스, 결국 특단 조치 내렸다」 https://www.asiae.co.kr/article/2025101415002861502 (方針転換の背景・従来の対応との違いを確認、2026年8月31日確認)
- 로톡뉴스「”6만원 시켰는데 음료 더 시켜요?”…카페 ‘1인 1음료’ 방침, 거부할 수 있나?」 https://lawtalknews.co.kr/article/HPE502XEJL01 (ワンドリンク制が法律上の義務ではなく店の利用条件であること、案内タイミングの重要性を確認、2026年8月31日確認)
- 위키트리「”커피는 다 마셨는데 왜 아직도 앉아 있지?” 외국인이 놀란 한국 카페 문화」 https://www.wikitree.co.kr/articles/1143070 (荷物での場所取りなど、外国人から見た韓国カフェ文化の慣習を確認、2026年8月31日確認)
- 브런치「외부 음식 반입 금지에 대한 안내하기」 https://brunch.co.kr/@c03bea0b33834a0/20 (飲食店が外部飲食を制限する一般的な理由を確認、2026年8月31日確認)
- 머니투데이「”3시간 후엔 추가 주문”…’카공족’ 겨냥한 이디야, 다른 커피숍은?」 https://www.mt.co.kr/living/2023/08/23/2023082306114822848 (카공족向けの店舗独自の利用時間案内の事例を確認、2026年8月31日確認)

