ソウルの屋台通りを歩いていると、串に刺さった鶏肉が香ばしく焼ける匂いに足を止められること、ありますよね。屋台の焼き鳥――韓国語では닭꼬치(タッコチ)と呼ばれるこの料理は、明洞・東大門・弘大(홍대)といったエリアの定番グルメですが、「そもそもこの屋台って許可を取っているの?」「味はどう選べばいいの?」と気になった人もいるはず。この記事では、タッコチが売られているエリアの屋台がどんな制度のもとで営業しているのか、味の種類の選び方、そして屋台以外の選択肢まで、公的機関や報道の発表をもとに整理しました。
明洞の屋台は2016年に中区(중구)が交付した「道路占用許可」によって合法化されており、同じ方式はソウル市の22自治区(강북구・금천구・양천구を除く)にも広がっています。東大門(동대문)は2022年7月に「屋台実名制」を導入し、屋台数は2022年7月の572店から2025年6月には336店まで減り、無許可の屋台は3年間で74.8%減ったと公表されています。2026年4月には中区がタッコチを含む屋台食品10品目を検査し、全品目で有害菌が検出されなかったことも確認できました。弘大(마포구)については明洞・東大門ほど具体的な数字は見つかっていませんが、同じ許可制度拡大の対象エリアです。値段は屋台ごとに差があり、公式に確認できる相場が無いため、この記事では金額を断定しません。
結論から――屋台の焼き鳥(タッコチ)は「どこにでもある」わけではない
タッコチは鶏肉を串に刺して焼き、たれを塗って仕上げる韓国の屋台グルメの定番です。明洞・東大門・弘大といった観光客の多いエリアを歩けば見かける機会は多いものの、実はどの屋台も好き勝手に道端で商売しているわけではありません。ソウル市内の屋台の多くは、各区が交付する「道路占用許可」という制度の下で営業しています。この記事で扱う3エリアのうち、明洞(중구)と東大門(동대문)は、それぞれ制度の内容や導入時期が公的に確認できました。
逆に言えば、屋台が並んでいること自体が「その区が屋台の存在を管理している」ことの裏返しでもあります。無許可で営業する屋台は取り締まりの対象になり、区によっては摘発や整備が実施されているため、目にする屋台の多くは許可を得たうえで営業していると考えられます。とはいえ個々の屋台が今この瞬間に許可を持っているかどうかまでは、この記事のリサーチでは確認できていません。あくまで「エリア全体としてどんな制度が敷かれているか」を軸に読んでもらえたらと思います。
味の面では、간장(醤油だれ)・양념(甘辛だれ)・매운맛(辛口)の3系統が代表的とされています。どれを選ぶか迷う派のあなたのために、後半で選び方の目安もまとめました。屋台以外にも専門チェーン店という選択肢があることも、あわせて紹介します。
明洞の屋台は「なぜ堂々と営業できるのか」――2016年の道路占用許可
明洞(명동)の屋台については、中区(중구)が2016年にこれを根拠に「道路占用許可」を交付し、それまで無許可で営業していた屋台を合法化したことが報道で確認できました。同じ方式は明洞に限らず、강북구・금천구・양천구の3区を除くソウル市22自治区にも広がっており、屋台は「隙間に勝手に出ている」ものではなく、各区が道路の使用を認めたうえで営業している形になります。
衛生面についても直近の動きがあります。2026年4月15日、中区は明洞の屋台で売られている完成品の食品を無作為に収去し、卵パン・タッカンジョン・タッコチ・トッポッキ・生搾りジュース・タンフル・ハットバーなど計10品目を対象に、大腸菌や食中毒を起こす菌など6種類の検査を実施しました。検査は세스코(民間検査機関)に委託して行われ、対象となった全品目で有害な菌は検出されなかったと公表されています。屋台の食べ物というと衛生面を心配する人もいるかもしれませんが、少なくとも今回確認できた検査結果では問題は見つかっていません。
もちろん、屋台の管理体制は各区が随時見直しているものなので、最新の状況が気になる人は中区庁など各区の公式発表を確認するのがいちばん確実です。明洞は屋台以外にもストリートフードの選択肢が豊富なエリアなので、タッコチ以外もまとめて楽しみたい人は明洞のストリートフード記事もあわせて読んでみてください。
東大門の屋台は「実名制」――数字で見る変化
東大門(동대문)エリアでは、2022年7月1日にソウル市内で初めて「屋台実名制」という制度が導入されたことが報道で確認できました。これは、屋台の名義上の店主と実際に運営している人が一致している屋台にだけ道路占用許可を出すという仕組みで、いわゆる又貸しや名義貸しの屋台を排除する目的があるとされています。
この制度導入後の変化も具体的な数字として公表されています。2022年7月時点で572店あった屋台は、2025年6月時点では336店まで減少しました。そして無許可の屋台については、この3年間で74.8%減少し、144店のみになったとされています。数字だけを見ると屋台の総数自体は減っていますが、その分「名義と実態が一致した、許可を得た屋台」の割合が増えたと読み取れます。
観光客の立場からすると、屋台の数が減ったこと自体は少し寂しく感じるかもしれません。ただ、無許可の屋台が減って実名制のもとで管理された屋台が中心になっているという点は、初めて訪れるエリアで「どの屋台を選べばいいか分からない」という不安を多少なりとも和らげてくれる材料かも。東大門は夜遅くまで賑わうエリアとしても知られているので、屋台以外の夜のグルメ情報は東大門の夜市グルメ記事で詳しく整理しています。
弘大(홍대)の屋台事情――明洞・東大門ほど数字は無いが、同じ制度の対象
弘大(홍대)エリアを管轄する마포구(麻浦区)についても調べましたが、明洞や東大門のように「何年に何を導入して、屋台数がどう変わったか」という具体的な公表数値までは、今回のリサーチでは見つかりませんでした。確認できたのは、마포구が無許可の屋台や放置物、危険な広告物などを区域ごとに区分して集中点検しているという報道と、ソウル市全体として「屋台許可制」を全自治区に拡大していく方針を掲げているという点です。
先に触れた22自治区(강북구・금천구・양천구を除く)という区分けの中に마포구も含まれると考えられますが、これは推測であり、弘大に限定した制度の詳細を公式に確認できたわけではありません。この記事では、弘大の屋台についても「行政の管理対象になっているエリアではある」という位置づけにとどめ、明洞・東大門のような具体的な数字は書かないことにします。
弘大(마포구)の屋台許可制度の詳細な導入年・屋台数については、今回のリサーチでは公式に確認できませんでした。最新の状況が気になる人は、麻浦区庁の公式発表を確認してください。
弘大は屋台グルメだけでなく、カフェや雑貨店が密集するエリアとしても知られています。屋台巡りのついでに立ち寄れるスポットが多いので、屋台のはしごをする前に大まかなエリアの雰囲気だけでも頭に入れておくと、当日の動きがスムーズになるはずです。
タッコチの味の選び方――간장・양념・매운맛
タッコチの味付けは、大きく分けて간장(醤油だれ)・양념(甘辛だれ)・매운맛(辛口)の3系統があるとされています。간장(醤油だれ)は、しょうゆをベースにした甘辛くさっぱりした味付けで、初めての一本に選びやすいタイプ。양념(甘辛だれ)は、コチュジャンなどを使った韓国らしい甘辛いたれで、屋台の定番として紹介されることが多い味です。そして매운맛(辛口)は、唐辛子の効いたピリッとした味付けで、辛いもの好きな人向けの選択肢になります。

屋台によって呼び方や辛さの度合いが微妙に違うこともあるため、看板やメニュー表の色分け、写真の有無を見てから選ぶと失敗しにくいはず。屋台の店員に直接「どれがおすすめか」と聞いてみるのも、現地ならではのコミュニケーションとして楽しめるかもしれません。辛いものが苦手な人は、まず간장(醤油だれ)や양념(甘辛だれ)から試して、慣れてきたら매운맛(辛口)に挑戦する、という順番が無難と言えそうです。
体感で言えば、串1本のボリュームはコンビニのおにぎり半分くらいの満足感になることが多いようです。何本か食べ比べて味の違いを楽しみたい人は、小腹が空いたタイミングでの食べ歩きに向いている一品かも。逆に、しっかり食事として楽しみたい人は、屋台グルメを何品か組み合わせて回る計画を立てておくとよさそうです。
屋台以外の選択肢――専門チェーンという買い方
タッコチは屋台だけの食べ物ではありません。検索してみると、「오닭꼬치」「더꼬치다」「청춘닭꼬치」「빠샤수제닭꼬치」など、公式サイトのドメインを持つ타코치(タッコチ)専門のチェーン店ブランドが複数存在することが分かりました。屋台の雰囲気とはまた違う、店舗型でじっくり座って食べられる選択肢があるということ自体は、知っておいて損はないはずです。
屋台と専門チェーンのどちらが向いているかは、旅のスタイル次第と言えそうです。立ち寄りやすさや値段の手頃さを重視するなら屋台、落ち着いて座って食べたい、衛生面をより重視したいという人は専門チェーンという住み分けで考えると選びやすいかも。専門チェーンの詳しい店舗情報は、この記事のリサーチ時点では公式に確認しきれなかったため、あくまで「こういう選択肢もある」という紹介にとどめます。
屋台で食べるときの支払いとマナー
屋台で会計をするとき、現金しか使えない店と、カードや簡易決済に対応している店が混在しているのが実情のようです。渡韓に慣れていない人ほど、屋台に着いてから「あれ、現金しか使えないの?」と焦った経験があるかもしれません。屋台の支払い事情や、韓国で使える決済手段の全体像については、屋台の支払い方法まとめ記事で詳しく整理しているので、あわせて読んでおくと現地で慌てずに済むはずです。
マナー面では、屋台の前で立ち食いをするスペースが限られていることが多いため、食べ終わったあとの串や紙皿はその場に置いていかず、備え付けのごみ箱に捨てるのが基本です。混雑している時間帯は、注文してから受け取るまで列ができることもあるので、後ろに並んでいる人のことも意識しながら会計をスムーズに済ませたいところ。屋台は「みんなで使う道」の一部を借りて営業している、という前提を思い出すと、自然とマナーも守りやすくなるはずです。
会計の際にお釣りを渡されるまで待つ、少額の買い物でも高額紙幣ばかり出さない、といった気配りも、屋台での買い物を気持ちよく終えるコツと言えそうです。
明洞・東大門・弘大で他の屋台グルメと組み合わせる
タッコチだけを目当てに屋台エリアへ行くのはもったいないくらい、明洞・東大門・弘大には屋台グルメの選択肢が揃っています。たとえば東大門から少し足を延ばせば、屋台グルメの聖地とも言われる広蔵市場(광장시장)のガイド記事で紹介しているような、麻薬キンパやビンデトックといった名物にも出会えます。市場エリアは屋台とはまた違う「常設の屋内屋台街」のような雰囲気があるので、天候を気にせず食べ歩きたい日にも向いています。
甘いものが恋しくなったら、屋台の定番おやつであるホットク(호떡)もおすすめです。ホットクが食べられる通りの記事では、タッコチとはまた違う甘じょっぱい系のストリートフードを紹介しています。逆に、ちょっと変わり種にも挑戦してみたい人向けには、屋台の定番おやつベンデギ(번데기)の記事もあります。見た目のインパクトはありますが、屋台文化を知るうえでは外せない一品として紹介されることが多い食べ物です。
1つのエリアで1品だけ食べて終わるのではなく、タッコチ・キンパ・ホットクのように味の系統が違うものを組み合わせて回ると、食べ歩きの満足感がぐっと上がるはず。お腹の空き具合と相談しながら、無理のない範囲で数品ずつつまんでいくのが、屋台グルメを楽しみ尽くすコツと言えそうです。
よくある質問
まとめ――屋台の焼き鳥(タッコチ)は制度に支えられたグルメ
明洞・東大門・弘大の屋台で売られる焼き鳥(タッコチ)は、それぞれの区が敷いている屋台許可の制度のもとで営業しています。明洞は2016年の道路占用許可、東大門は2022年の実名制と、導入の形は違えど「無許可の屋台を減らし、管理された屋台を残す」方向で動いているという点は共通していました。弘大については具体的な数字までは確認できませんでしたが、同じ許可制拡大の対象エリアであることは分かっています。
- 明洞の屋台は2016年の道路占用許可で合法化。同方式はソウル市22自治区(강북구・금천구・양천구を除く)に拡大
- 東大門は2022年7月に屋台実名制を導入。屋台数は572店(2022年7月)→336店(2025年6月)、無許可屋台は74.8%減
- 2026年4月、中区がタッコチを含む屋台食品10品目を検査し、全品目で有害菌は不検出
- 味は간장(醤油だれ)・양념(甘辛だれ)・매운맛(辛口)の3系統が代表的
- 専門チェーンという選択肢もあるが、店舗数・価格は公式に未確認。気になる人はブランド名で検索を
屋台の管理体制や営業状況は各区が随時見直しているため、この記事の内容はあくまで調査時点の目安として捉え、最新の状況が気になる場合は各区庁の公式発表を確認してください。制度の裏付けを知ったうえで屋台を選べば、味だけでなく「なぜここに屋台があるのか」という背景まで楽しめる旅になるはずです。
参考・出典
- 더스쿠프「명동 노점은 합법인데… 한강공원 노점은 왜 불법인가요?」https://www.thescoop.co.kr/news/articleView.html?idxno=301746 (2026年9月14日確認)
- 경향신문「명동거리 먹거리 10가지 조사해보니···”대장균・식중독균 불검출”」https://www.khan.co.kr/article/202605101117001/ (2026年9月14日確認)
- 경향신문「20년간 동대문 거리 점유한 불법 노점、’가게 실명제’로 OUT」https://www.khan.co.kr/article/202506222016015 (2026年9月14日確認)
- 서울시 미디어허브「무허가노점 ‘거리가게’로 살린다…허가제 확대 도입」https://mediahub.seoul.go.kr/archives/1288147 (2026年9月14日確認)

