韓国の美容パッケージは解約できる?返金の計算と無効になる約款

窓際の木のテーブルに数枚の書類とボールペン、伏せたスマートフォン、コーヒーカップが置かれ、窓の外にソウルの街並みが見えるイラスト。韓国の美容パッケージの解約と返金を整理した記事のアイキャッチ画像

韓国の美容クリニックでは、複数回分をまとめて先に払う売り方が広がっています。公正取引委員会の報道資料も、皮膚科・成形外科など美容目的の医院を中心に「先納診療」の形のサービスが拡大していると書いていて、消費者の側には「イベント割引価格」「特価構成」といった誘因があるとしています。ただ、途中でやめたくなったときにどうなるかまで契約前に確かめておくのは、なかなか難しいところです。

本記事は公的情報・公式情報をもとにした情報提供であり、特定の施術や医療機関を勧めるものではありません。医療上の判断は必ず医師にご相談ください。

結論から

2026年7月、韓国の公正取引委員会が15の医院の前払い診療の約款を審査し、6類型の不公正な条項を是正させました。ここで知っておきたいのは3つ。①韓国には約款規制法があり、消費者に不当な条項は条文の力で無効になる。②無効になっても契約全部が消えるのではなく、残りの部分だけが有効に存続する。③よく引かれる「違約金10%」は消費者紛争解決基準という公正取引委員会の告示にあるもので、消費者基本法が与えている役割は「紛争解決のための合意または勧告の基準」までです。しかも当事者間に「紛争解決方法についての」別段の意思表示がない場合に限って基準になります。だからこそ「契約書に何と書いてあるか」と「その条項が無効になるか」を先に見ることになります。

目次

2026年7月に、何が起きたのか

公正取引委員会が公表したのは「15個の医院の先納診療利用約款上の不公正約款是正」という内容です(報道資料の登録は2026年7月16日、配布は7月20日朝刊)。対象になったのは、2023年から2024年の2年間で韓国消費者院への被害救済申請が多かった上位15の医院でした。

見出しに掲げられた言葉が、この件のすべてを表しています。

公正取引委員会 報道資料の見出し(2026年7月)

피부・미용 시술 관련 선납 진료비 약관 시정,
“사용한 만큼 비용 내고, 잔액은 환불가능”

(皮膚・美容施術に関する先納診療費の約款是正、「使った分だけ費用を払い、残額は返金可能」)

🚨 先に注意を書いておきます。是正の対象になったのは、この15の医院です。韓国のすべての医院の約款が自動的に書き換わったわけではありませんし、「どこでも10%で解約できる」という制度ができたわけでもありません。この記事が伝えたいのは「返金を全面的に禁じる条項は、韓国の法律では無効と判断されうる」という考え方の中身です。

なぜ「無効」になるのか——約款規制法という仕組み

ここが日本語の記事でほとんど説明されていない部分です。韓国には「約款の規制に関する法律」(약관의 규제에 관한 법률、通称・約款法)があり、事業者が用意した約款のうち一定の類型に当たる条項を、条文そのもので無効にしています

仕組みは3段構えです。

  • 第6条〜第14条 … 該当する条項は「無効とする」と条文が直接書いている(第6条は一般原則、第7条以下が個別の類型)
  • 第17条 … 事業者は、それらの不公正約款条項を契約の内容にしてはならない
  • 第16条 … 一部が無効になった場合、契約は残りの部分だけで有効に存続する(有効な部分だけでは契約の目的が達成できない場合、または有効な部分が一方の当事者に不当に不利な場合は、契約全体が無効)

つまり「返金しない」と書いてあっても、その条項が第6条〜第14条に当たれば効力を持たない。そして契約そのものが消えるわけではなく、その条項だけが落ちる——という構造です。

韓国で美容パッケージの解約を考えるときに見る順番を並べた対応表。①契約書で返金の書き方を見る、②約款法で無効になる類型か、③同法第16条により無効でも契約は残りの部分で存続、④消費者紛争解決基準が合意・勧告の基準として10%を示す、⑤合意できないときは消費者相談センターに持ち込む、という流れを示している

是正された6類型と、対応する条文

ここが大事なところで、条文との対応づけは私たちの解釈ではなく、報道資料が類型ごとに「(약관법 제◯조)」と条番号を書いています。実際に使われていた文言も例示されているので、並べて見てみます。

① 契約の解除・解約を制限する条項(13社) → 約款法 第9条

使われていた例:「施術結果の主観的な不満足や不快感は返金事由になりません」「契約日から2か月が過ぎると返金できません」「有効期間が過ぎた後の施術および返金は不可能です」

第9条第1号は「法律による顧客の解除権または解約権を排除し、またはその行使を制限する条項」を無効とし、第4号は「契約の解除または解約による原状回復義務を相当な理由なく顧客に過重に負担させ、または顧客の原状回復請求権を不当に放棄させる条項」を無効としています。

② 過度な損害賠償額の予定条項(2社) → 約款法 第8条

使われていた例:「残りの施術の返金時、決済金額の20%の違約金と(施術回数×正常価格)を差し引きます」「施術開始以後:総決済金額の30%違約金の後、施術回数の正常価格を差し引いて返金」

第8条は「顧客に不当に過重な遅延損害金などの損害賠償義務を負わせる約款条項は無効とする」と定めています。

③ 事業者の法律上の責任を排除する条項(7社) → 約款法 第7条

第7条第1号は「事業者、履行補助者または被用者の故意または重大な過失による法律上の責任を排除する条項」を、第2号は「相当な理由なく事業者の損害賠償の範囲を制限し、または事業者が負担すべき危険を顧客に押し付ける条項」を無効としています。

④ 訴訟提起を禁止する条項(10社) → 約款法 第14条

第14条第1号は「顧客に不当に不利な訴訟提起禁止条項または裁判管轄の合意条項」を無効としています。

⑤ 前払い診療権の譲渡を制限する条項(10社) → 約款法 第11条

第11条第3号は「顧客が第三者と契約を締結することを不当に制限する条項」を無効としています。

⑥ 給付の内容を事業者が一方的に決定・変更する条項(1社) → 約款法 第10条

第10条第1号は「相当な理由なく給付の内容を事業者が一方的に決定または変更できる権限を与える条項」を、第2号は「相当な理由なく、事業者が履行すべき給付を一方的に中止できるようにし、または第三者に代行させられるようにする条項」を無効としています。指名した医師が退職したときの扱いが問題になった類型です。

6つが6つとも条文に対応していることに気づくと思います。公正取引委員会が独自の基準で判断したのではなく、今回確認された6類型を、もともと法律に書いてある無効事由に当てはめた——という構図です。各条には「相当な理由なく」といった要件が付いているので、似た文言なら常に無効になるという話ではありません。

報道資料には、この分野の標準約款(표준약관)の制定も検討すると書かれています。いまは15医院の自主是正ですが、業界全体の雛形をつくる方向も示されている、ということです。

「違約金10%」はどこから来ているのか

報道資料には、是正後の扱いとして「中途解約時に、すでに行われた施術の費用と、消費者紛争解決基準による違約金10%を精算したうえで残額を返金する」という形が示されています。この10%の出どころが消費者紛争解決基準です。

これは公正取引委員会の告示で、品目ごとに紛争解決の目安が定められています。「医療業」の欄は3項目に分かれていて、①インプラント ②皮膚科施術および治療(美容を目的とした治療に限定) ③成形手術 の順に並んでいます。前払いパッケージの話で使われるのはです。

🚨 ③成形手術は、②とはまったく別の基準です。成形手術の項は「治療回数」ではなく手術予定日までの日数で段階的に決まる作りになっていて、数字も②と違います。成形手術を考えている場合は、②の10%をそのまま当てはめないでください。段階的な基準の中身は予約とキャンセル規定を整理した記事で扱っています。

消費者紛争解決基準 別表2「皮膚科施術および治療(美容を目的とした治療に限定)」

事業者に責任のある事由による解約
・治療開始前 … 契約金の返還および契約金の10%を賠償
・治療開始後 … 解約日までの治療回数に該当する金額を控除して既納金額を返金し、総治療金額の10%を賠償

消費者に責任のある事由による解約
・治療開始前 … 契約金の10%を賠償
・治療開始後 … 解約日までの治療回数に該当する金額と、総治療費用の10%を負担

※ 回数で契約した場合は、治療回数に該当する金額を控除して返金する
契約金が施術・治療費用の10%を超える場合は、賠償および返金の基準となる契約金を、施術・治療費用の10%を基準に算定する

読み方のコツは、「誰の責任で解約するのか」と「治療が始まる前か後か」の2軸で見ることです。解約が消費者に責任のある事由に当たる場合は、受けた回数分の金額と、総額の10%を負担する——これが基準です。どちらの責任事由に当たるかは、解約の理由や契約の中身で分かれます。

ここが肝心:10%は「上限」ではない

「10%なら安心」と読み替えたくなるところですが、そうではありません。消費者紛争解決基準の性質は、消費者基本法にはっきり書かれています。

소비자기본법 제16조제3항

③ 제2항의 규정에 따른 소비자분쟁해결기준은 분쟁당사자 사이에 분쟁해결방법에 관한 별도의 의사표시가 없는 경우에 한하여 분쟁해결을 위한 합의 또는 권고의 기준이 된다.

(消費者紛争解決基準は、紛争当事者の間に紛争解決方法についての別段の意思表示がない場合に限り、紛争解決のための合意または勧告の基準となる)

🚨 条文がこの基準に与えている役割は「紛争解決のための合意または勧告の基準」までで、当事者を拘束する上限だとは書かれていません。しかも基準になるのは、紛争当事者の間に「紛争解決方法について」の別段の意思表示がない場合に限られます。ここで条件になっているのは紛争解決の方法についての意思表示であって、「返金条項が書いてあれば10%の話は出てこない」という意味ではありません。その返金条項が有効かどうかは、次に見るとおり約款規制法の側で別に判断されます。

だから順番はこうなります。

  • まず契約書 … 返金についてどう書いてあるかを見る
  • 次に約款法 … その条項が第6条〜第14条に当たるなら無効。無効なら第16条により、契約は残りの部分だけで有効に存続する
  • そこで消費者紛争解決基準 … 有効な定めが無くなった場面で、合意・勧告の基準として10%の考え方が出てくる

「どこでも10%で解約できる」ではなく、「不当な条項が落ちた結果として、10%の基準に寄っていく」という理解が正確です。公正取引委員会が15医院に対してやったのは、まさにこの1段目と2段目でした。

消費者紛争解決基準で医療機関とエステの控除単位が違うことを並べた対応表。医療機関は解約日までの治療回数に当たる金額、エステは解約日までの利用日数に当たる金額を控除し、医療には契約金が10%を超える場合は10%で計算する但し書きがあり、エステの総利用金額には契約金と月利用料が含まれ保証金は含まれず、エステの項には根拠法令なしと明記されていることを示している

エステの回数券は、同じ10%でも計算が違う

ここは混同されやすいところです。エステ(皮膚美容業)の回数券・会員権にも消費者紛争解決基準がありますが、医療機関とは別項目で、控除の単位が違います。

消費者紛争解決基準 別表2 美容業(③皮膚美容業・④毛髪美容業・⑤ネイルサービス業・⑥ワキシング業が1つの表になっています)

事業者に責任のある事由による解約
・開始日前 … 契約金を全額返金し、総利用金額の10%を賠償
・開始日後 … 解約日までの利用日数に該当する金額を控除して返金し、総利用金額の10%を賠償
(この行の備考欄)※ 総利用金額とは契約時に定めた総額で、契約金・月利用料などをすべて含む。ただし保証金は含まない/※ サービスの回数で契約した場合は、利用回数に該当する金額を控除して返金する

消費者に責任のある事由による解約
・開始日前 … 消費者は総利用金額の10%を負担
・開始日後 … 消費者は解約日までの利用日数に該当する金額と、総利用金額の10%を負担
(この行の備考欄)※ 事業者がすでに費用を受け取っている場合は、受け取った費用から消費者の負担額を差し引いた残りを返金する

細かい話ですが、備考欄の位置まで見ておく価値があります。美容業の表では「総利用金額」の定義と「回数で契約した場合」の但し書きは、事業者に責任のある解約の行の備考欄に置かれていて、消費者都合の行の備考欄にあるのは精算方法だけです。一方、医療業の「皮膚科施術および治療」の項では備考欄が2つの行にまたがって1つになっており、契約金が10%を超える場合の但し書きはどちらの行にも掛かります。(公式PDFの表の罫線を確認しました)

医療機関のほうは「治療回数」、エステのほうは「利用日数」が原則の控除単位になっています。同じ「10%」でも、何を差し引かれるかが変わるということです。

もうひとつ、この基準の美容業の欄には「根拠法令:根拠法令なし」と明記されていて、「その他の法令」として訪問販売法にもとづく公正取引委員会の告示が挙がっています。エステの継続取引そのものの解約権については韓国の肌管理はどこで受けるかを整理した記事で扱っています。ただしこれは訪問販売法上の「継続取引」に当たる契約が前提の制度で、回数券・会員権ならすべて自動的に対象になるわけではありません。契約期間や提供のしかたを見て判断されます。

契約の場で、あなたが使える条文

ここまでは「無効になる類型」の話でした。約款規制法にはもう一段、契約のその場で使える条文があります。こちらのほうが実用的かもしれません。

약관법 제3조(약관의 작성 및 설명의무 등)

② 事業者は契約を締結するとき、約款の内容を明らかにし、顧客が求めた場合はその約款の写しを顧客に交付して、顧客が内容を知ることができるようにしなければならない
③ 事業者は約款に定められている重要な内容を、顧客が理解できるように説明しなければならない(ただし、契約の性質上、説明することが著しく困難な場合はこの限りでない)
事業者が第2項および第3項に違反して契約を締結した場合は、その約款を契約の内容として主張できない

🚨 第4項が効きます。約款の写しを求めても出てこない、重要な内容の説明が無いまま契約した——そういう場合、その約款を「契約の内容だ」と主張できなくなるという条文です。説明義務のほうには「契約の性質上、説明が著しく困難な場合はこの限りでない」という但し書きが付いているので、実際にどう判断されるかは契約の中身によります。第2項の但し書きには適用除外の業種が4つ(旅客運送業・電気ガス水道・郵便業・公衆電話)挙がっていますが、医療や美容はそこに入っていません。なお先ほどの第16条は、第3条第4項によって約款が契約の内容にならなかった場合にも同じように働き、契約は残りの部分だけで有効に存続します。

あわせて3つ。

  • 第4条(個別約定の優先) … 約款と違う内容で事業者と合意した事項があれば、その合意が約款より優先する。口頭で合意した内容があるなら、その場で書き留めておく意味があります(単に説明を受けただけのことと、個別に合意した事項は別ものです)
  • 第5条第2項(約款の解釈)約款の意味が明白でない場合は、顧客に有利に解釈されなければならない
  • 第6条(一般原則) … 信義誠実の原則に反して公正性を失った条項は無効。「顧客に不当に不利な条項」「顧客が予想しがたい条項」「契約の本質的権利を制限する条項」は、公正性を失ったものと推定される

第6条は2つの層に分かれています。第1項は「信義誠実の原則に反して公正性を失った約款条項は無効」という一般原則第2項はそこに挙げた3類型について「公正性を失ったものと推定する」という定めです。第7条以下の個別の類型に当てはまらない条項でも、この一般原則の側で見られる余地が残されている、ということになります。

契約する前に見る4点

ここまでを踏まえると、契約前に確かめることは絞られます。

  • 契約書か明細、そして約款の写しを受け取れるか … 第3条第2項は、顧客が求めた場合に約款の写しを交付することを事業者の義務にしています。口頭だけで進むなら、後から何を基準に話すのかが無くなります
  • 返金についてどう書いてあるか … 「返金不可」「◯か月経過後は不可」「イベント商品は対象外」といった書き方は、上で見た①の類型に当たりうるものです(当たるかどうかは条項の文言と契約の事情で決まります)
  • 違約金の率 … 20%・30%といった数字が書かれていたら、上で見た②の類型にあたる可能性があります
  • 指名した医師が替わったときの扱い … ⑥の類型です。替わった場合に返金できるかを聞いておく

金額はウォン表記のまま控えて、日本円への換算はカードの明細で確認する——という進め方をおすすめします。費用そのものの調べ方は費用の調べ方をまとめた記事に、予約とキャンセル規定の考え方は予約の経路をまとめた記事にあります。

リスクをどう考えるか

この記事は施術の内容を扱わないので、効果や副作用そのものの話は書きません。制度の側から見えることだけを3つ挙げます。

ひとつめ。④の訴訟提起禁止条項を無効とした理由づけです。報道資料はこう書いています——「皮膚・美容の医療施術は、医療陣の過失や不注意による副作用発生の危険が常に存在するため、医療陣は相当な注意義務を尽くして医療サービスを提供しなければならず、故意・過失による消費者被害については責任を負わなければならない」。「訴訟を起こせない」と書いた条項が無効にされた理由が、ここに置かれているわけです。

ふたつめ。⑤の譲渡制限を無効とした理由づけには、民法が出てきます。報道資料は、前払い診療権は将来提供を受ける医療役務の請求権(債権)に当たるため、民法上、性質上譲渡できない場合や法律が禁じる場合を除いて原則として自由に譲渡できるはずだとしています。そのうえで、譲渡を全面的に禁じたり「家族のうち1名まで」と絞ったりする条項は、顧客が第三者と契約を結ぶ権利を不当に制限するものとして無効だ、と結論づけました。買った回数券が誰にも渡せない、というのは当たり前ではなかったということです。

みっつめ。前払いは金額が大きくなりやすい売り方です。是正の対象が「被害救済申請の多かった上位15医院」だったことは、この売り方に紛争が集まっていたことの裏返しでもあります。

「前払い=割賦取引法で守られる」ではない

日本の感覚だと「前払いなのだから、前受金を守る法律があるのでは」と思うところです。韓国には割賦取引に関する法律(할부거래법)があり、そこに「先払い式割賦契約」という枠があります。ただし条文を読むと、この枠は葬儀または婚礼のための役務とそれに付随する財貨、およびそれに準じる消費者被害が生じるものとして大統領令が定める財貨等に限られています。その大統領令(施行令第1条の2)が挙げているのは①旅行のための役務とそれに付随する財貨 ②家庭儀礼(葬儀・婚礼を除く)のための役務とそれに付随する財貨の2つで、美容の役務は入っていません

同じ法律の「割賦契約」のほうは、2か月以上の期間にわたって3回以上に分けて支払い、支払いが終わる前に商品や役務の提供を受ける契約という作りです。一括で先に払うパッケージは、この形にも当てはまりません。カードの分割払いなど支払い方によって当てはまり方が変わる可能性はありますが、「前払いだから割賦取引法で守られる」という前提は置かないほうがいいということです。(割賦取引に関する法律 第2条第1号・第2号、同法施行令 第1条の2/2026年8月30日確認)

もめたときの窓口

韓国側には韓国消費者院の被害救済という枠組みがあり、公正取引委員会が今回の15医院を選んだ基準も、ここへの申請件数でした。ただし、韓国に住んでいない外国人旅行者が直接申請できるかどうかは、公式情報で確認できませんでした。使えるかどうかは韓国消費者院か観光通訳案内電話1330に直接確かめてください。

日本側では国民生活センターの越境消費者センター(CCJ)があります。案内には「インターネットでの海外事業者との取引(商品購入、宿泊予約等)や海外での現地取引(旅行先の商品購入、サービス利用等)のトラブル解決をお手伝いいたします」とあり、渡韓先で契約したパッケージはこの「現地取引」に当てはまります。原則メールでの助言で、必要に応じて相手国の窓口機関を通じて事業者に伝達する、とも書かれています。

🚨 ただし2026年8月30日現在、CCJは新システムへの移行のため2026年9月13日(日)まで相談受付を一時停止しています。サイトには「その間は、下記リンクにあります、居住地の消費生活センター等にご相談ください」と案内されています(消費者ホットライン188の案内は、日本の消費者と日本の事業者との間のトラブルについてのものです)。

もうひとつ、約款規制法には第19条(約款の審査請求)という制度があります。「約款の条項と関連して法律上の利益がある者」は、その条項がこの法律に違反するかどうかの審査を公正取引委員会に請求できると条文に書かれています(請求は書面または電子文書で提出する)。韓国消費者院、消費者基本法にもとづき登録された消費者団体、事業者団体も請求できます。ただしこれは「その条項が法律に違反するか」を審査してもらう制度であって、支払ったお金が戻る手続きではありません。外国人が実際に利用できるかどうかは、条文からは読み取れませんでした。

医療機関に関する韓国側の相談先は登録医療機関の調べ方をまとめた記事で、渡航全体の確認順序はこちらの記事で扱っています。

この記事で答えられないこと

  • 実際にいくら戻るか。契約金の額、受けた回数、責任の所在で変わるため、試算は書きません
  • 15医院以外の医院の約款がどうなっているか。是正の対象外なので、個別に契約書を見るしかありません
  • 非居住の外国人がこれらの窓口を使えるか。上に書いたとおり確認できませんでした
  • カードの分割払いにした場合に割賦取引法がどう働くか。支払い回数・期間・提供の時期で変わるため、個別に確認するしかありません

よくある質問

「返金不可」と契約書に書いてあったら、もう戻ってこないのですか?
そう決まるわけではありません。韓国の約款規制法第9条は「法律による顧客の解除権・解約権を排除し、またはその行使を制限する条項」を無効とし、同法第17条は事業者がそうした条項を契約の内容にすることを禁じています。2026年7月に公正取引委員会が是正させた6類型のうち、いちばん多かった13社がこの類型でした。ただし是正の対象は15医院であり、自動的にすべての契約がそうなるわけではありません。契約書の文言を確かめたうえで、相手方と話すことになります。
「違約金10%」はどこでも同じですか?
同じではありません。10%は消費者紛争解決基準という公正取引委員会の告示にある目安で、消費者基本法第16条第3項は、この基準が「紛争当事者の間に紛争解決方法についての別段の意思表示がない場合に限り」、紛争解決のための「合意または勧告の基準」となると定めています。強制力のある上限ではありません。契約に有効な定めがあればそちらが先に見られ、その条項が約款規制法で無効になってはじめて、この基準が出てきます。
医療機関とエステで、返金の計算は同じですか?
違います。消費者紛争解決基準では、医療業の「皮膚科施術および治療(美容を目的とした治療に限定)」治療回数に該当する金額を控除するのが原則、美容業の皮膚美容業利用日数に該当する金額を控除するのが原則です(どちらも回数で契約した場合の但し書きがあります)。総利用金額には契約金や月利用料が含まれますが、保証金は含まれないという注記もあります。
契約金を多めに払っていた場合はどうなりますか?
医療業の項目には「契約金が施術・治療費用の10%を超える場合は、賠償および返金の基準となる契約金を、施術・治療費用の10%を基準に算定する」という注記があります。契約金を大きく取られていても、基準の計算上は10%で見る、という考え方です。ただしこれは紛争解決の基準であって、具体的にいくら戻るかは条件によります。
指名した医師が辞めてしまったら?
是正された6類型の⑥がこの話です。約款規制法第10条第1号は「相当な理由なく給付の内容を事業者が一方的に決定または変更できる権限を与える条項」を無効とし、第2号は「事業者が履行すべき給付を…第三者に代行させられるようにする条項」を無効としています。契約前に、指名医が替わった場合の扱いを聞いておくのが確実です。
契約のとき、約款の説明を受けていません。関係ありますか?
関係します。約款規制法第3条第2項は顧客が求めた場合に約款の写しを交付することを、第3項は重要な内容を顧客が理解できるように説明することを事業者の義務としています。そして第4項は、これらに違反して契約した場合、その約款を契約の内容として主張できないと定めています。第2項の適用除外は旅客運送業・電気ガス水道・郵便業・公衆電話の4業種で、医療や美容は入っていません。また第4条により、約款と違う内容で個別に合意した事項があればその合意が約款より優先します。
日本から相談できる窓口はありますか?
国民生活センターの越境消費者センター(CCJ)が、海外事業者との取引や海外での現地取引(旅行先の商品購入、サービス利用等)のトラブル相談を扱っています。ただし2026年8月30日現在、新システムへの移行のため2026年9月13日(日)まで受付を一時停止中で、サイトには「その間は…居住地の消費生活センター等にご相談ください」と案内されています。韓国側には韓国消費者院の被害救済があり、約款規制法第19条には公正取引委員会への審査請求の制度もありますが、非居住の外国人が直接使えるかは公式情報で確認できませんでした

まとめ

  • 2026年7月、公正取引委員会が15医院の前払い診療の約款6類型を是正させた。ただし対象はその15医院で、全国一律の制度ができたわけではない
  • 6類型は約款規制法 第7条・第8条・第9条・第10条・第11条・第14条にそれぞれ対応している。第6条から第14条に当たる条項は条文の力で無効になる
  • 無効になっても契約全部が消えるのではなく、第16条により残りの部分だけが有効に存続する
  • よく引かれる「違約金10%」は消費者紛争解決基準にあるもので、消費者基本法第16条第3項が与えている役割は「紛争解決のための合意または勧告の基準」まで。当事者を拘束する上限だとは書かれていない
  • 医療機関は治療回数、エステは利用日数が原則の控除単位。同じ10%でも計算が違う
  • この10%が使えるのは医療業の「皮膚科施術および治療」の項。成形手術は別項目で、手術予定日の何日前かで段階的に決まる
  • 「前払いだから割賦取引法で守られる」ではない。先払い式割賦契約の対象は葬儀・婚礼・旅行・家庭儀礼で、美容の役務は入っていない
  • 契約前に見るのは、契約書と約款の写しがもらえるか/返金の書き方/違約金の率/指名医が替わったときの扱い、の4点
  • 第3条第4項は、約款の交付や重要事項の説明を欠いて契約した場合、その約款を契約の内容として主張できないと定めている。適用除外の4業種に医療・美容は入っていない
  • 約款規制法第19条には、その条項に法律上の利益がある者が公正取引委員会に審査を請求できる制度がある。ただし返金の手続きではない

「返金不可と書いてあるから諦める」の前に、その条項が何に当たるのかを知っておく。この記事で伝えたかったのは、それだけです。

この記事の情報源と確認日

  • 公正取引委員会 報道資料「15개 의원의 선납진료 이용약관 상 불공정 약관 시정」(약관특수거래과・2026年7月16日登録、7月20日朝刊配布) https://www.ftc.go.kr/www/selectBbsNttView.do?key=12&bordCd=3&nttSn=47748 (2026年8月30日確認)
  • 国家法令情報センター「약관의 규제에 관한 법률」[시행 2024. 8. 7.] 법률 제20239호(第7条・第8条・第9条・第10条・第11条・第14条・第16条・第17条) https://www.law.go.kr/법령/약관의규제에관한법률 (2026年8月30日確認)
  • 国家法令情報センター「소비자기본법」[시행 2026. 1. 2.] 법률 제21065호(第16条第2項・第3項) https://www.law.go.kr/법령/소비자기본법 (2026年8月30日確認)
  • 国家法令情報センター 行政規則「소비자분쟁해결기준」[시행 2025. 12. 18.] 공정거래위원회고시 제2025-14호 https://www.law.go.kr/행정규칙/소비자분쟁해결기준 (2026年8月30日確認)
  • 同 別表2「품목별 해결기준」PDF(医療業「피부과 시술 및 치료」・美容業「피부미용업」の項) https://www.law.go.kr/LSW/flDownload.do?flSeq=159470209&bylClsCd=200201 (2026年8月30日確認)
  • 国家法令情報センター「할부거래에 관한 법률」[시행 2024. 8. 7.](第2条第1号・第2号) https://www.law.go.kr/법령/할부거래에관한법률 (2026年8月30日確認)
  • 国家法令情報センター「할부거래에 관한 법률 시행령」[시행 2026. 7. 1.] 대통령령 제36416호(第1条の2) https://www.law.go.kr/법령/할부거래에관한법률시행령 (2026年8月30日確認)
  • 国民生活センター 越境消費者センター(CCJ) トップページ(2026年9月13日まで相談受付を一時停止する告知) https://www.ccj.kokusen.go.jp/ (2026年8月30日確認)
  • 国民生活センター 越境消費者センター(CCJ)「CCJについて」 https://www.ccj.kokusen.go.jp/ccj_syki (2026年8月30日確認)
  • 韓国消費者院「소비자 피해구제・분쟁조정」 https://www.kca.go.kr/odr/ (2026年8月30日確認)



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