韓国のSNSで丸いコイン形のパンを見かけて、「これ、まだ売ってるのかな」と気になった人もいるはず。
シボンパン(십원빵)は2026年9月現在も韓国で買えるスイーツです。2023年に韓国銀行が「貨幣の図案を営利目的で使うのは問題」と指摘して販売中止の危機がありましたが、2024年9月の基準改正で、条件を満たせば売ってよいと明確になりました。デザインを大きく変えたわけではなく、パンのサイズがもともと硬貨規定を満たしていたことが背景にあります。
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シボンパン(십원빵)ってどんな食べ物?生地とチーズの中身
シボンパンは、韓国語で「십원빵(シボンパン)」と呼ばれる屋台スイーツ。名前のとおり、10ウォン硬貨をかたどった丸い形をしていて、専用の焼き型でひとつずつ焼き上げられます。生地はふんわりした焼き菓子タイプで、中にモッツァレラチーズがたっぷり入っているのが特徴です。
焼きたてを割ると、中のチーズがとろりと伸びる様子がSNS映えするとして人気になりました。甘い生地とチーズの塩気の組み合わせは、たい焼きやホットケーキとはまた違う満足感。大きさの目安は、手のひらにのる小ぶりなドーナツ1個分くらいです。십원빵(シボンパン)という表記のほか、「10ウォンパン」「コインパン」と紹介されることもあります。
見た目のインパクトの割に、味わいはやさしい部類に入ります。生地はカステラに近い甘さで、外はさっくり、中はしっとりとした食感。塩気のあるチーズと合わさることで、甘じょっぱい系のおやつが好きな人にはとくに刺さりやすい組み合わせです。屋台でその場で頬張れる手軽さも、旅先での小腹満たしにちょうどいいポイントといえます。
コインの表と裏をイメージした意匠が使われているのも見どころのひとつ。表面には慶州(キョンジュ)にある仏国寺の国宝、多宝塔(タボタップ)をモチーフにした模様、裏面には額面を思わせる数字が入ります。この「本物の硬貨に似せた見た目」こそが、後述する韓国銀行とのやり取りの発端になりました。
なぜコインの形?多宝塔と2019年慶州発のストーリー
シボンパンが最初に登場したのは2019年12月20日、慶州の人気エリア황리단길(ファンリダンギル)でした。「황금십원빵(黄金シボンパン)」という店が最初にこのスタイルのパンを売り始めた事業者とされています。当時、同じ通りにこの手のパンを出す店は数えるほどしかありませんでした。
慶州が最初の地になったのは偶然ではありません。10ウォン硬貨のデザインに使われている多宝塔は、慶州の代表的な観光名所です。地元の名所そのものが硬貨の柄になっているという珍しい組み合わせが、「ご当地スイーツ」としての説得力を生みました。
慶州は新羅の古都として知られ、街を歩くだけで史跡に出会えるエリアです。地元の名所をモチーフにしたお菓子は「ご当地みやげ」の定番パターンですが、シボンパンの場合はモチーフが硬貨という誰もが日常的に目にする存在だったことも、慶州を訪れたことがない人にまで意味が伝わりやすかった一因と考えられます。
人気が広がるにつれて、慶州エリアのシボンパン店も増えていきました。現地を訪れたブロガーの記録では、以前は2店舗ほどだったのが、2025年1月時点で7店舗前後に増えていたと紹介されています。数字は訪問時点のものなので、実際の店舗数は時期によって変わる点に注意してください。
- 発祥地:慶州(キョンジュ)황리단길(ファンリダンギル)
- 発祥時期:2019年12月20日ごろ
- 最初の店:황금십원빵(黄金シボンパン)
- モチーフ:10ウォン硬貨と多宝塔(タボタップ)
韓国銀行が待った!2023年、まさかの販売中止危機
人気が全国に広がった2023年、思わぬところからブレーキがかかりました。韓国銀行が「営利目的で貨幣の図案を使うことは認めていない」という立場を示し、慶州のシボンパン業者との協議が報じられたのです。報道の見出しには「単種危機」という強い言葉も使われました。
この時点での韓国銀行のスタンスは、貨幣の図案が無秩序に使われると偽造・変造への心理的なハードルが下がり、貨幣そのものの信頼性が損なわれかねない、というものでした。著作権とは別に、貨幣という公共性の高いものならではの規制です。
ただし、韓国銀行は「デザイン変更について協議している段階で、訴訟などの法的措置を取る計画はない」ともコメントしています。いきなり販売を止めさせるのではなく、落としどころを探る姿勢だったことがうかがえます。
一介の屋台メニューが中央銀行に注目されたのは、それだけ広がるスピードが早かったからです。2019年に慶州の一角で生まれたお菓子が、わずか数年で全国的な知名度を得たことで、貨幣の図案を管理する立場としても無視できない存在になったという構図が読み取れます。人気の拡大と規制の目が同時に強まった、SNS時代らしい展開だったともいえるでしょう。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2019年12月 | 慶州で最初のシボンパン店が販売開始 |
| 2023年6月 | 韓国銀行が営利使用を問題視、デザイン変更を協議 |
| 2024年8月29日 | 韓国銀行が利用基準の改正を発表 |
| 2024年9月1日 | 改正後の基準が施行 |
2024年9月、流れが変わった。韓国銀行の基準改正
状況が動いたのは2024年8月29日。韓国銀行は「한국은행권 및 주화의 도안 이용기준(韓国銀行券および貨幣の図案利用基準)」を改正し、翌9月1日から施行すると発表しました。この改正が、シボンパンの運命を変えることになります。
改正の骨子はシンプルです。これまでは営利目的での図案利用は基本的に認めない立場だったところを、「営利目的であっても、貨幣の品位と信頼性を毀損しない範囲であれば利用できる」という考え方に変わりました。頭ごなしに禁止するのではなく、条件をクリアすれば使ってよい、という整理です。
そして韓国銀行はこの改正の際、慶州のシボンパンについて「偽造・変造のおそれがない貨幣図案の利用」に当てはまる例だと具体的に挙げています。つまり、シボンパンは新しいルールのもとで「使ってよい側」として名指しされた格好です。これで販売継続の見通しが立ちました。
2023年6月に問題が表面化してから、基準が改正される2024年8月29日までは1年以上かかっています。この間、韓国銀行が最初から強硬に販売停止を求めていたわけではなく、業者側との協議を重ねながら着地点を探っていたことは、当時のコメントからもうかがえます。拙速に規制するのではなく、実態に合わせてルールを整える方向に落ち着いた形です。

いまのシボンパンは硬貨と何が違う?デザインを確認
「規制がゆるくなったなら、デザインはそのまま?」と気になるところですが、公式の利用基準を確認すると、求められているのは図案そのものの変更というより「サイズの規定」です。硬貨を模したものを作る場合、実物の75%以下、または150%以上のサイズで作らなければならない、という決まりがあります。
ここがシボンパンにとって好都合でした。実物の10ウォン硬貨は直径18mmほどの小さなコインです。一方でシボンパンはパンなので、もともと硬貨よりずっと大きいサイズで作られています。つまり「150%以上」という規定を、意識せずとも満たしていた形になります。多宝塔や額面を思わせる意匠を大きく作り変えたという一次情報は、今回の調査では見つかりませんでした。
もちろん何でも許されるわけではありません。本物の貨幣と見間違えるような使い方や、偽造・変造を助長するような使い方は引き続き禁止です。シボンパンが問題にならないのは、あくまで「パンとしてサイズが十分に大きく、誰が見てもお菓子だとわかる」からだと理解しておくとよさそうです。
利用基準にはこのほかにも、わいせつ・暴力性を感じさせる表現や、社会通念を超えるような不適切な利用を禁じる項目があります。屋台で売られているシボンパンは、誰の目にもお菓子だとわかる形で提供されているため、こうした禁止事項に触れる心配は薄いといえます。
どこで買える?確認できた店・確認できていない店
本場は発祥地である慶州の황리단길です。最初の店とされる황금십원빵は、集約系のグルメサイトに掲載された情報として、平日10時〜21時、土日10時〜22時ごろの営業という記載があります。ただしこれは第三者サイトの情報で、編集部が直接いまの営業状況を確認したものではありません。訪問前には公式SNSや現地の看板で最新の営業時間を確認してください。
ソウル市内でも、明洞(ミョンドン)や仁寺洞(インサドン)、広蔵市場(クァンジャンシジャン)といった観光客の多いエリアで、シボンパンを出す屋台を見かけたという紹介は複数あります。広蔵市場の歩き方は広蔵市場の攻略ガイドで別記事にまとめています。
ただし屋台タイプの出店は入れ替わりが多く、特定の店名・住所を「いまも営業している」と断定できる一次情報までは今回確認できませんでした。屋台で買い物をするときの支払い方法は韓国の屋台での支払い方法まとめを参考にしてください。現地に着いたら、まず目の前で実際に営業しているかを自分の目で確かめるのがいちばん確実かもしれません。
屋台でシボンパンを買うときの流れは、韓国の屋台スイーツ全般とほぼ共通しています。列があれば最後尾に並び、欲しい個数を先に伝えてから支払いを済ませ、焼き上がりを待って受け取るのが基本の順番です。先払い・後払いのどちらの店もあるので、迷ったら店員の案内に従うのが確実です。
写真を撮りたくなる見た目ですが、屋台は限られたスペースで営業していることが多いので、調理中の焼き型やコンロに近づきすぎないよう注意しましょう。子ども連れの場合は、焼きたての生地とチーズがかなりの高温になっている点に気を配り、渡す前に少し冷ましてあげると安心です。屋台は出店の入れ替わりが早いジャンルなので、店名や場所を事前にメモしていても、現地で実際に営業しているかを確認する前提で計画を立てるのがおすすめです。
| エリア | 確認状況 |
|---|---|
| 慶州・황리단길(本場) | 複数店舗が集積。営業時間は集約サイト情報のみで直接確認はできず |
| ソウル・明洞/仁寺洞 | 屋台での出店例が紹介されているが、固定店舗としての現況は未確認 |
| ソウル・広蔵市場 | 屋台での取り扱い例あり。出店の有無は訪問時の現地確認が必要 |
似た食べ物、日本の「十円パン」との関係
実は日本にも、シボンパンによく似たパンがあります。2023年9月ごろ、東京の業者が慶州のシボンパンをヒントにして「十円パン」を開発し、販売を始めたと報じられました。その後、大阪など他のエリアにも店舗が広がったという2024年時点の報道もあります。
興味深いのは両国の対応の違いです。韓国銀行が営利使用を一時問題視していたのに対し、日本の財務省は「そうしたパンを販売しても問題ない」という立場を示していたと報じられています。同じ「硬貨をかたどったお菓子」でも、規制の考え方は国によって差がありました。
背景には、貨幣図案の管理に対する考え方の違いがあると考えられます。どこまでを商業利用として問題視するかは国ごとの制度次第で、正解がひとつに決まっているわけではありません。身近な硬貨モチーフのお菓子ひとつをめぐって、規制の運用方法が国によってこれほど分かれることを示した事例ともいえそうです。
今回の調査では、2026年9月時点で日本国内のどこで十円パンが買えるかまでは、確認できる一次情報が見つかりませんでした。気になる人は、公式SNSや店舗の告知で最新の出店状況をチェックするのが確実です。韓国発の屋台スイーツが日本で広がった例としては、たい焼き風スイーツ「붕어빵(プンオパン)」の日本展開も参考になります。ほかにも韓国の屋台には、호떡(ホットク)や꽈배기(ネジリドーナツ)のように、日本でも紹介されることの多い温かいおやつが揃っています。
- 韓国:一時「販売中止の危機」→2024年9月の基準改正で継続
- 日本:財務省は「販売しても問題ない」との立場と報道
- 日本の十円パンは2023年9月ごろ東京で登場したとされる
値段の目安・食べ方の注意・持ち帰りのコツ
値段は屋台や店舗によって差があり、時期によっても変わりやすいものです。今回の調査では、公式・現地の一次情報で確認できる現在の価格を見つけることができませんでした。数百円台の軽食として紹介されることが多いスイーツですが、正確な金額は現地の看板やSNSで当日確認するのが安心です。
シボンパンは、屋台の多くが「焼きたてを渡す」スタイルの温かいおやつです。中のチーズが完全に固まる前に食べるのが定番とされていて、そのタイミングだからこそ、割った瞬間にチーズがとろりと伸びる楽しさを味わえます。冷めてから食べるより、買ってすぐの状態を想定して予定を組んでおくとよさそうです。
焼きたてのシボンパンは、中のチーズが溶けた状態で提供されます。割った直後は生地もチーズもかなり熱いので、勢いよくかぶりつくとやけどのおそれがあります。伸びるチーズの量は、チーズタッカルビをひとすくいした時くらい。少し冷ましてから、端から少しずつ食べるのが正解です。
時間が経つとどう変化するかも、頭に入れておくと安心です。焼き菓子とチーズの組み合わせは、冷めるにつれて生地がしっとりと重くなり、チーズも固まって伸びにくくなる傾向があります。「買った瞬間がいちばんおいしい」タイプのおやつだと考えて、食べ歩きのタイミングに組み込むのがおすすめです。
持ち帰りについては、公式な案内までは確認できていません。できれば購入したその場で食べきるか、持ち帰る場合は保冷や再加熱の要否を店舗に確認するのが無難です。似た「その場で食べるのがおすすめ」なおやつとしては、군고구마(焼き芋)の屋台や、日持ちのする餅(トック)専門店のお土産と組み合わせて考えると、旅程が組みやすくなります。
よくある質問
まとめ
- シボンパン(십원빵)は10ウォン硬貨をかたどったチーズ入りの屋台スイーツ
- 2019年12月、慶州・황리단길で登場
- 2023年に韓国銀行が営利使用を問題視し、一時は販売中止の懸念も
- 2024年9月の基準改正で、条件を満たせば継続販売できると明確になった
- デザイン変更よりも、パンのサイズが規定を満たしていたことが決め手
- 価格・営業状況は変動するため、訪問前に現地・公式SNSで確認を
現地の最新の営業状況は変わりやすいので、訪れる予定がある人は出発前に公式SNSや地図アプリの口コミで直近の投稿をチェックしてから向かってみてください。
参考・出典
- 韓国銀行「화폐도안 이용기준」 https://www.bok.or.kr/portal/main/contents.do?menuNo=200392
- 한국경제 2023-06-21「경주 십원빵 이대론 안돼…한은 디자인 변경 논의중」 https://www.hankyung.com/article/2023062147266
- 경향신문 2024-08-29「’십원빵’ 기사회생…한은, 영리 목적 ‘화폐 도안’ 사용 허용」 https://www.khan.co.kr/article/202408300600005
- 영남일보 2024-08-29「’경주 십원빵’ 계속 맛볼 수 있다」 https://www.yeongnam.com/web/view.php?key=20240829010003711
- 국민일보「’십원빵’ 판매 가능해진다」 https://www.kmib.co.kr/article/view.asp?arcid=0020472633
- 아시아경제 2023-07-07「희비 엇갈린 ‘십원빵’ VS ‘십엔빵’」 https://www.asiae.co.kr/article/2023070708040741716

