「韓国の伝統茶って、カフェのゆず茶ラテとは違うの?」——これ、韓国好きの友人によく聞かれます。答えは「かなり違う」。カフェのメニューにある「유자차」は温かい飲み物の一種にすぎませんが、伝統茶院(전통찻집)で飲む一杯は、靴を脱いで座敷に上がり、韓方の生薬や果実をじっくり煮出したものを、静かな空間で時間をかけて飲むための一杯です。仁寺洞・益善洞・北村・三清洞には、今もその作法を保ったまま営業している茶院が点在しています。ただし老舗ほど閉店・移転が起きやすいのも事実で、実際に今回の調査でも「移転して店名が変わっていた」ケースに行き当たりました。この記事では、公式Instagramや韓国観光公社の情報で営業を確認できた店だけを紹介します。
2026年8月24日確認の範囲で、現地の伝統茶院として営業を確認できたのは仁寺洞の「경인미술관 전통다원(キョンイン美術館 伝統茶院)」と「신옛찻집(シンオッチャッチプ)」、益善洞の「뜰안(トゥラン)」、北村・三清洞の「해온(ヘオン)」の4軒です。특に「해온」は、以前「차 마시는 뜰(チャマシヌントゥル)」という店名で知られていた店が移転・改名した先で、旧アカウントで店を探すと迷子になります。頼む茶は、유자차(ユジャチャ・ゆず茶)や쌍화차(サンファチャ)など、読み方と意味をセットで覚えておくと注文がぐっと楽になります。
伝統茶院とカフェは何が違うのか——靴を脱ぐ・座敷・静かに過ごす作法
まず前提として、伝統茶院とふつうのカフェは空間の使い方そのものが違います。多くの伝統茶院は韓屋(한옥)を利用しており、入口でスニーカーやパンプスを脱ぎ、マル(板の間)やオンドル部屋の座布団に座って過ごすスタイルが一般的とされています。椅子とテーブルのカフェに慣れていると最初は戸惑うかもしれませんが、靴を脱いだ瞬間に空気の質が変わるのを感じるはずです。
もうひとつの違いは滞在時間の前提です。伝統茶院での作法を紹介する記事では、大きな声で話さず低い声で会話すること、そして30分から1時間程度は腰を据えて過ごすことがすすめられています。回転重視のカフェとは真逆で、「早く飲んで出る」場所ではなく「ゆっくり座って初めて成立する」空間だと考えておくと、当日のがっかりが減ります。
靴を脱ぐ・低い声で話す・長居する。この3点セットが分かっていれば、どの店に入っても浮くことはありません。次の章から、実際にどのエリアに行けばこの作法を体験できる店があるのかを見ていきます。
なぜ仁寺洞・益善洞・北村・三清洞に集まるのか
伝統茶院は、韓屋がまとまって残っているエリアに集まる傾向があります。인사동(インサドン)は骨董・工芸品の通りとして知られ、伝統文化を扱う店が古くから軒を連ねてきた場所。익선동(イクソンドン)は1920年代築の韓屋が密集する一角で、近年はカフェ街としても人気ですが、その中に伝統茶院として続く店も残っています。북촌・삼청동(プクチョン・サムチョンドン)は韓屋村や景福宮に近く、静かな路地に茶院が点在するエリアです。
今回の調査で営業を確認できたのは、この3エリア・4軒でした。カフェ全般の巡り方や韓屋カフェの雰囲気については北村・三清洞カフェ巡りの記事や益善洞の韓屋カフェガイドにすでに書いているので、この記事は「伝統茶院で伝統茶を飲む」ことだけに絞って進めます。景福宮観光と組み合わせる日程を考えている人は景福宮ガイドもあわせて見ておくと、北村・三清洞での動き方が立てやすくなるはずです。
| エリア | 今回確認できた店 | 特徴 |
|---|---|---|
| 仁寺洞 | 경인미술관 전통다원/신옛찻집 | 老舗が集まる、文化通りとしての歴史 |
| 益善洞 | 뜰안 | 1920年代韓屋の坪庭を眺める造り |
| 北村・三清洞 | 해온(旧・차 마시는 뜰) | 移転を経て今も営業中 |
仁寺洞①——美術館の中庭に面した「경인미술관 전통다원」
仁寺洞でまず紹介したいのが、絵画・工芸品を展示する私設美術館「경인미술관(キョンイン美術館)」の敷地内にある伝統茶院です。韓国観光公社(VisitKorea)の案内では、韓屋の中庭を見渡せる茶院として紹介されており、伝統茶は約15種類そろうとされています。美術館を見た流れでそのまま座って休める立地は、観光と休憩を一度で済ませたい人にとって効率がいいはずです。
| 店名 | 住所(韓国語) | 電話 | 営業時間 |
|---|---|---|---|
| 경인미술관 전통다원 | 서울 종로구 인사동10길 11-4 | 02-733-4448 | 10:00〜22:50 |
(韓国観光公社 VisitKorea 英語版ページ、2026年8月24日確認。公式サイトへの直接アクセスはこの調査環境からできず、営業時間はVisitKoreaの表記を根拠にしています)
価格については、口コミ集計サイトの記載によると쌍화차が11,000ウォン、유자차が8,000ウォン前後という数字が出ていますが、これは店の公式メニューではなく口コミの集計値です。体感でいえば、韓国コンビニでコーヒーとおやつを買うのと同じくらいの金額感で、決して高い部類ではありません。ただし変動する可能性があるので、あくまで目安として捉えてください。
地図で場所を確認したい人は、下のリンクから開けます。
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仁寺洞②——35年ほど続く古民家「신옛찻집(シンオッチャッチプ)」
もう1軒、仁寺洞で紹介したいのが「신옛찻집」です。130年前後前の古い建物をそのまま使っているとされ、代を継いで35年ほど営業を続けている老舗と紹介されています。公式Instagram(@shinoldtea)は現在も存在し、プロフィールに閉店や移転の告知は見当たりませんでした。
正直に書くと、신옛찻집の公式Instagramは直近の投稿が2024年11月で止まっており、それ以降の更新は今回確認できませんでした。閉店の告知が無いことと、口コミ集計サイトに最近の店舗情報が残っていることから「営業している可能性が高い」と判断していますが、訪問前には電話または現地確認をおすすめします。
| 店名 | 住所(韓国語) | 営業時間 |
|---|---|---|
| 신옛찻집 | 서울 종로구 인사동길 47-8 | 月10:00〜20:00/火〜金10:00〜21:00/土日10:00〜22:00 |
(公式Instagram @shinoldtea、2026年8月24日確認)
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益善洞——1920年代韓屋の坪庭を眺める「뜰안(トゥラン)」
益善洞は近年カフェ街として一気に人気が出たエリアですが、その中でも「뜰안」は2009年開業と、カフェ化が進む前から続く伝統茶院です。1920年代に建てられた韓屋の造りをそのまま活かしており、店内に入るとまず小さな坪庭が目に入る構造になっています。公式Instagram(@cafe_innergarden)の直近投稿は2025年12月で、閉店・移転の告知はありません。
| 店名 | 住所(韓国語) | 電話 | 営業時間 |
|---|---|---|---|
| 뜰안 | 서울 종로구 수표로28길 17-35 | 02-745-7420 | 火〜日11:00〜22:00(21:00ラストオーダー)、月曜定休 |
(公式Instagram @cafe_innergarden、2026年8月24日確認)
メニューには韓方茶に加えて오미자차・매실차(梅茶)、桑の葉茶や花茶なども並ぶとされています。口コミ集計サイトの記載では쌍화차が9,500ウォン前後。体感としては、コンビニのアイスコーヒーを少し豪華にした程度の価格帯で、益善洞散策のついでに寄りやすい水準です。益善洞のカフェ街全体の雰囲気は益善洞の韓屋カフェガイドでも詳しく扱っているので、伝統茶院以外の店もあわせて計画を立てるとよいと思います。
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北村・三清洞——移転して生まれ変わった「해온(ヘオン)」
ここが今回の調査でいちばん驚いたポイントです。北村・三清洞エリアで長く知られていた茶院「차 마시는 뜰(チャマシヌントゥル)」を目当てに公式Instagram(@cha.teul)を開くと、プロフィールに「移転いたしました。新しい空間でお待ちしております」という告知があり、新しいアカウント(@heon.chahaus)が案内されていました。移転先の新しい店名は「해온(ヘオン)」。旧店名のまま検索すると、閉店したように見えてしまうケースです。
「차 마시는 뜰」という店名では、この住所ではもう営業していません。同じ場所・同じ店を探す場合は、新しい店名「해온」で検索してください。旧アカウントの情報(住所・営業時間)をそのまま信じて訪問すると、店が見つからない可能性があります。
新アカウントの投稿頻度は高く、直近の投稿は2026年8月21日と確認当日に近い日付でした。プロフィールには住所と営業時間が明記されています。
| 店名 | 住所(韓国語) | 営業時間 |
|---|---|---|
| 해온(旧・차 마시는 뜰) | 서울 종로구 삼청로4길 6 | 毎日11:00〜21:00 |
(公式Instagram @heon.chahaus、2026年8月24日確認)
地図で場所を確認したい人は、下のリンクから開けます(移転後の住所です)。
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北村・三清洞は韓屋村や景福宮とも近いので、街歩き自体を楽しみたい人は北村韓屋村の記事も参考にしてみてください。伝統茶院1軒だけで終わらせず、周辺散策とセットで半日の予定を組むのがちょうどいい規模感です。
頼み方の基本——伝統茶6種類と日本語の読み方
店に入ってメニューを渡されても、ハングルだけだとどれを頼めばいいか分からない人が多いはずです。まず覚えておきたいのは、伝統茶の多くが「果実を砂糖で漬け込んだもの」か「韓方の生薬・木の実を煮出したもの」のどちらかに分類できるという点。読み方と意味をセットで頭に入れておくと、メニューを見た瞬間に選べるようになります。
| ハングル | 読み方・意味 | ベース |
|---|---|---|
| 유자차 | ユジャチャ/ゆず茶 | ゆずの砂糖漬けをお湯や水で割る |
| 대추차 | テチュチャ/なつめ茶 | 乾燥なつめを煮出す |
| 오미자차 | オミジャチャ/五味子茶 | 五味子の実を水に浸して抽出 |
| 생강차 | センガンチャ/しょうが茶 | しょうがを煮出す |
| 쌍화차 | サンファチャ | 韓方生薬を煎じたもの |
| 모과차 | モグァチャ/かりん茶 | かりんの砂糖漬けをお湯や水で割る |

この中で、유자차と모과차は作り方がほぼ同じです。果実を薄切りにして砂糖と1:1の割合で漬け込み、できた「청(チョン、蜜漬け)」をお湯や水で割って飲みます。体感でいうと、ジャムをお湯で溶かして飲むイメージに近く、酸味と甘さのバランスが好きな人におすすめです。대추차와생강차(なつめ茶としょうが茶)は、実や根を長時間煮出すタイプ。喉のケアを意識して飲まれることが多いとされています。
読み方だけメモを持っておけば、メニューを指さしながら店員さんに聞くこともできます。韓国語での注文のコツ全般は韓国カフェでの注文フレーズまとめにもまとめているので、あわせて見ておくと不安が減るはずです。
쌍화차(サンファチャ)だけは中身がまったく違う理由
ここまでの5種と、쌍화차だけは成り立ちが違います。쌍화차は、白芍薬・熟地黄・当帰・川芎・桂皮・甘草といった韓方の生薬を煎じたベースに、くるみ・松の実・銀杏・栗・かぼちゃの種・卵黄・薄切りのなつめなどをトッピングして仕上げる一杯です。果実の砂糖漬けとはまったく別のジャンルで、見た目もスープに近い茶色をしています。
正直なところ、初めて見ると「これがお茶?」と驚く見た目です。とはいえ味は思ったよりまろやかで、韓方特有のクセが苦手でなければ、伝統茶院に来たなら一度は試したい一杯だと思います。効能をうたう記述も見かけますが、体への効果を断定できるものではないので、この記事では「韓方生薬をベースにした一杯」という説明にとどめます。
冷・温の頼み方と、一緒に出てくる한과(ハングァ)
伝統茶院で伝統茶を頼むとき、意外と迷うのが「温かいまま飲むのか、冷やして飲むのか」という点です。대추차・쌍화차は温かい状態で飲まれるのが一般的とされる一方、오미자차は夏場に「오미자화채(オミジャファチェ)」という冷たい形で飲まれる文化があります。梨などを浮かべ、蜂蜜や砂糖で甘みを足した冷たい一杯で、暑い季節の定番とされています。
個別の店で冷・温を選べるかどうかまでは今回確認できていませんが、注文のときに一言添えれば対応してもらえることが多いはずです。不安なら「따뜻하게(タットゥタゲ=温かく)」「시원하게(シウォナゲ=冷たく)」のどちらかを伝えるだけで通じます。
そして伝統茶と一緒によく出てくるのが한과(ハングァ)と呼ばれる韓国伝統菓子です。代表的なのは次の3種類です。
- 유과(ユグァ)——もち米粉を練って揚げ、ゴマやきな粉をまぶした軽い食感の菓子
- 강정(カンジョン)——穀物や木の実を水飴で固めた、ザクザクした食感の菓子
- 다식(タシク)——型で模様を押し出した干菓子。お茶請けの定番
店によって出てくる한과の種類は違いますが、甘さは控えめなことが多く、韓方の香りが強い쌍화차と特に相性がいいと感じます。体感としては、和菓子の干菓子と落雁の中間くらいのイメージで、初めてでも構えずに食べられるはずです。
値段の目安とその扱い方——なぜ断定できないのか
この記事では、価格をできるだけ書かないようにしています。理由は単純で、伝統茶院のような個人経営に近い店は、メニュー改定や物価の変動で価格が動きやすく、断定した金額を書くとすぐに古い情報になってしまうからです。今回確認できたのは、口コミ集計サイトに載っている集計値だけで、店の公式メニュー表そのものではありません。
本文中の価格(쌍화차11,000ウォン前後・9,500ウォン前後など)は、いずれも口コミ集計サイトの2026年8月24日時点の記載を根拠にした目安です。店の公式発表ではないため、実際の金額とずれる可能性があります。訪問時は現地のメニュー表で最終確認してください。
そのうえで体感の相場感だけ伝えると、伝統茶1杯はだいたい8,000〜11,000ウォン前後のレンジに収まることが多いようです。カフェのコーヒー1杯より少し高め、韓国式定食の副菜がもう一皿つく程度の金額感といったところ。特別に高い出費にはならないはずです。
よくある質問
まとめ——飲んだあとは瓶・スティックのお土産へ
- 今回営業を確認できたのは、仁寺洞の경인미술관 전통다원・신옛찻집、益善洞の뜰안、北村・三清洞の해온(旧・차 마시는 뜰)の4軒
- 伝統茶院は靴を脱いで座敷に上がり、静かに長居する作法が前提。カフェとは空間の使い方が違う
- 伝統茶は유자차・대추차・오미자차・생강차・쌍화차・모과차の6種類が代表格。쌍화차だけ韓方生薬ベースで別ジャンル
- 価格は変動するため断定しない。目安は1杯8,000〜11,000ウォン前後(2026年8月24日時点の口コミ集計値)
- 「차 마시는 뜰」は移転・改名して「해온」に。旧店名のまま探すと見つからないので要注意
現地で伝統茶を飲んで気に入ったら、帰国後も同じ味を楽しみたくなるはずです。瓶入りの蜜漬けタイプやスティックタイプの伝統茶は、韓国のオンラインショップや空港の売店でも定番のお土産として売られています。持ち帰り用の選び方や通販事情は韓国の伝統茶おすすめ記事で詳しく扱っているので、ゆず茶だけをじっくり選びたい人はゆず茶特集の記事もあわせてチェックしてみてください。
参考・出典
- 韓国観光公社 VisitKorea(Kyung-In Museum of Fine Art/伝統茶院の案内) https://english.visitkorea.or.kr/svc/contents/contentsView.do?vcontsId=111088(2026年8月24日確認)
- 신옛찻집 公式Instagram https://www.instagram.com/shinoldtea/(2026年8月24日確認)
- 뜰안 公式Instagram https://www.instagram.com/cafe_innergarden/(2026年8月24日確認)
- 차 마시는 뜰(旧アカウント) 公式Instagram https://www.instagram.com/cha.teul/(2026年8月24日確認)
- 해온 公式Instagram https://www.instagram.com/heon.chahaus/(2026年8月24日確認)
- 韓国語版ウィキペディア「오미자차」「오미자화채」(2026年8月24日確認)
- 韓国語版ナムウィキ「쌍화차」「한과」(2026年8月24日確認)

