本記事にはプロモーションを含みます。
韓国のグルメ番組やSNSで、真っ赤なタレに埋もれた大皿の魚料理を見て「これ、あんこう鍋?」と思ったことはありませんか。実はそれ、日本のあんこう鍋とはまったく別物の韓国料理아귀찜(アグチム)です。看板には方言の아구찜(アグチム)と書かれていることも多いのですが、指している料理は同じです。大量の콩나물(コンナムル、豆もやし)と一緒に辛いタレで蒸し煮にした料理で、汁物というより「辛い和え物の大皿」に近い見た目をしています。初めて頼むと戸惑いやすい注文の単位や辛さ調整、締めの楽しみ方まで、公式に確認できた範囲とできなかった範囲を分けて整理しました。
아귀찜(アグチム)は、韓国語ウィキペディアで標準語とされる料理名で、慶尚道の方言では아구찜(アグチム)と呼ばれます(2026年9月7日確認)。発祥は慶尚南道・馬山(現在の昌原市)とされ、昌原市が運営する地域文化百科事典によると、干したアンコウに콩나물・미나리などを合わせて蒸すのがもともとの形です。日本の「あんこう鍋」のような澄んだ鍋物とは違い、汁気の少ない辛いタレでほぼ和えるように仕上げるのが最大の違いです。多くの店で2〜3人前からの注文が基本になっている点も、日本人旅行者にとっては要注意ポイントです。
結論から——日本の「あんこう鍋」とは別物です
「아귀찜(アグチム)」と聞いて、まず日本の「あんこう鍋」を思い浮かべた人は、いったんその想像を脇に置いてください。魚自体は同じアンコウの仲間ですが、料理としての姿はかなり違います。日本のあんこう鍋は出汁の効いた澄んだ汁で身やあん肝をやわらかく煮る鍋物です。一方の아귀찜は、唐辛子ベースの濃い赤いタレをアンコウの身と大量の野菜にほぼ和えるように絡めて蒸し上げる料理で、汁物というよりは「辛いあえ物の大皿」に近い仕上がりになります。
もうひとつの違いは主役の座です。日本のあんこう鍋では魚が主役ですが、아귀찜では콩나물(コンナムル、豆もやし)の量がとにかく多く、皿の底が見えないほど盛られることも珍しくありません。見た目のインパクトに惹かれて頼んだのに、想像より辛くて量も多くて面食らう、という声が旅行系の口コミで繰り返し見られるのも、この「別物感」が理由のようです。まずは「あんこう鍋の親戚」ではなく「辛い豆もやし蒸しにアンコウが乗っている料理」だと捉え直すと、注文のイメージがつかみやすくなります。
아귀찜(アグチム)はどんな料理か——콩나물が主役
아귀찜の基本構成は、ぶつ切りにしたアンコウの身に、된장・고추장(唐辛子味噌)をベースにした濃い赤ダレを絡め、たっぷりの콩나물(コンナムル)と미나리(ミナリ、せり)を加えて蒸し上げるというものです。昌原市が運営する地域文化百科事典によると、伝統的な作り方では된장・고추장・콩나물・미나리・파(長ねぎ)を合わせ、店によっては미더덕(ミドドク)という二枚貝の仲間を加えて風味を足すとされています(2026年9月7日確認)。
特徴的なのは野菜の分量で、皿の中に占めるコンナムルの割合が魚の身より多いと感じるほど盛られることも珍しくありません。とろみのついた辛いタレをコンナムルがしっかり吸っているので、アンコウ自体が得意でなくても、野菜だけでご飯が何杯も進むという声もよく聞かれます。同じように汁気のある韓国料理で身体を温めたい人には、ソウルのスンドゥブチゲ専門店ガイドも選択肢に入れておくと、その日の気分で使い分けやすくなります。
아귀찜は骨や小さな骨片が身に残っていることがあります。会話に夢中になっていると気づきにくいので、口に運ぶときは少しだけ意識しておくと安心です。
生と干し、どちらを選ぶか
아귀찜には大きく分けて생아귀(センアグィ、生アンコウ)を使うタイプと、건아귀(コナグィ、干しアンコウ)を使うタイプがあります。発祥地とされる馬山(現在の昌原市)の伝統的な作り方は干しアンコウが基本で、地域文化百科事典には「寒風の中で干したアンコウを使う」と説明されています(2026年9月7日確認)。韓国観光公社の観光メディアでも、馬山・梧洞洞(オドンドン)のアグチム通りには乾燥アンコウを専門に扱う店が集まっていると紹介されています(2026年9月7日確認)。
一方でソウルをはじめとする都市部の店の多くは、近年は生アンコウを使うスタイルが主流になりつつあるとされています。生アンコウはしっとりとやわらかい食感になりやすく、干したものはコリコリとした弾力と凝縮した旨みが特徴という説明が複数の資料で見られました。新鮮なアンコウそのものを見てみたい人は、ソウルの노량진水産市場ガイドを覗いてみると、大きな口をしたアンコウが並ぶ様子を見ることができます。
馬山アグチムの発祥説と、地域で分かれる作り方
아귀찜の発祥地とされるのは、韓国南部・慶尚南道の馬山(現在の昌原市)です。ただし「誰が最初に作ったか」については、資料によって少しずつ違う話が伝わっています。昌原市が運営する地域文化百科事典によると、1964年頃、馬山の東城洞(トンソンドン)で店を営んでいた혹부리 할머니(コブ取りおばあさん)と呼ばれる人物が、干したアンコウを蒸して売り始めたのが最初とされています(2026年9月7日確認)。一方、韓国観光公社の観光メディアでは、1960年代初めに갯장어(ハモ)を出す食堂を営んでいたおばあさんが、漁師が持ち込んだアンコウを味付けして蒸したのが始まりという説が紹介されています(2026年9月7日確認)。さらに韓国語ウィキペディアには、居酒屋を訪れた漁師が「獲れたアンコウを酒のつまみにしてほしい」と頼んだのがきっかけという、また別の言い伝えも載っています(2026年9月7日確認)。細部は資料ごとに揺れがあるものの、いずれも「馬山の漁師町で、家庭的な一皿として生まれた」という点は共通しているようです。
この発祥の経緯を反映してか、地域によって作り方の系統が分かれているのも아귀찜の面白いところです。韓国語ウィキペディアの整理によると、発祥地・馬山式は건아귀(干しアンコウ)に콩나물を合わせるのが伝統的な形である一方、全羅北道・群山(クンサン)式は생아귀(生アンコウ)を使い미나리をたっぷり加えるスタイルとされています。さらに、現在多くの店で主流になっているとろみの効いた생아귀찜(でんぷんでとろみをつけたタイプ)は、仁川(インチョン)が元祖という説が紹介されています(2026年9月7日確認)。つまり、いまソウルで見かける아귀찜の多くは、馬山発祥の料理に仁川式のとろみ付けが合流した、複数の系統が混ざった形だと捉えることができそうです。
発祥地の馬山・梧洞洞(オドンドン)には、韓国観光公社の観光メディアによると約20軒の店が集まる「아구찜通り」が自然にできたとされています(2026年9月7日確認)。ソウルの店がこの通りの店舗と同じ味を再現しているとは限りませんが、系統の違いを知っておくと、店ごとの「干し」「生」「とろみ」という説明がどの系統に近いものか見当がつけやすくなります。
辛さはどのくらい?調整はできるのか
아귀찜は고추가루(唐辛子粉)をベースにしっかり辛さを効かせるのが基本で、写真で見る赤さそのままに、韓国料理の中でも辛さの強い部類に入ります。ただし韓国の食堂では、注文時に辛さの調整を申し出ること自体は珍しい習慣ではありません。覚えておきたいのは안 맵게 해주세요(アン メプケ ヘジュセヨ、辛くしないでください)のひとことです。反対にしっかり辛くしたいなら「맵게 해주세요(辛くしてください)」で応用できます。
ただし、辛さの調整にどこまで応じてくれるかは店ごとの裁量によるところが大きく、公式に「必ず対応する」と明言している一次情報までは今回確認できませんでした。辛いものがどうしても苦手な人は、無理に挑戦するより、韓国料理全体の中から辛くない選択肢を先に押さえておくのも手です。韓国の辛くない料理ガイドにも目を通しておくと、旅程の中でうまく気分を切り替えられます。
「辛さを控えめに」と伝えても、韓国の食堂の「控えめ」は日本の感覚よりしっかり辛いことがあります。辛さに弱い自覚がある人は、少し大げさなくらいはっきり伝えるくらいがちょうどいいようです。
何人前から頼めるのか
아귀찜も、韓国の大皿料理に共通する「人数の壁」を抱えています。通販のミールキットや店舗のメニュー表記を横断して見ると、いちばん小さい소(ソ、小)サイズでも、実質2〜3人前を想定した分量で提供している例が多く見られました(2026年9月7日確認)。サイズは소・중(チュン、中)・대(テ、大)の3段階で分かれているのが一般的な形です。
これは同じく大皿でシェアすることが前提の韓国料理に共通する傾向で、1人旅の場合はとくに事前確認が欠かせません。1人前を出してくれる店がまったく無いわけではありませんが、公式に「ランチ限定で1人前あり」などと明言している一次情報までは今回確認できませんでした。1人での外食に不安がある人は、ソウルの혼밥(ひとりごはん)しやすい店ガイドを先に読んでおくと、無理に大皿料理へ挑まなくても選択肢が広がります。
締めの볶음밥(ポックンパ)までが1セット
아귀찜の楽しみ方は、具材を食べ終えたところで終わりではありません。皿に残った辛いタレとコンナムルを使って볶음밥(ポックンパ、チャーハン)を作ってもらうところまでが、いわば1セットの流れとして複数の飲食メディア・体験記で紹介されています(2026年9月7日確認)。残ったタレにご飯・のり・ごま油などを加えて店員が炒めてくれる、あるいはセルフで混ぜる形が一般的なようです。
同じように「煮込みを食べ終えたあとの締め」を楽しむ文化は、韓国料理の煮込み系全般に共通しています。骨付き肉をじっくり煮込むソウルのカルビチム(갈비찜)専門店ガイドでも、似た締めの流れが紹介されているので、あわせて知っておくと注文の勝手がつかみやすくなります。볶음밥を追加できるかどうか、追加分の扱いは店ごとに差があるため、この記事では断定せず「追加できる店が多い」という書き方にとどめます。

締めの볶음밥まで頼む前提だと、最初からお腹に少し余裕を残しておくのが賢い食べ方です。前菜やサイドメニューを頼みすぎないよう、注文の順番を意識してみてください。
どのエリアに店が多いか
発祥地とされる馬山(現在の昌原市)の梧洞洞(オドンドン)には、韓国観光公社の観光メディアで紹介されている「아구찜通り」があり、干しアンコウを専門に扱う店が集まっているとされています(2026年9月7日確認)。ただしこれはソウルから鉄道や高速バスでの移動が必要な距離にあるエリアで、ソウル滞在中に気軽に立ち寄れる場所ではありません。
ソウル市内については、市場周辺や住宅街の商店街に아귀찜を掲げる店が点在している傾向が複数の口コミ・飲食メディアで紹介されていますが、今回の調査では公式サイトや公式SNS、地図アプリの店舗情報で「いま営業している」ことを一次的に確認できた店までは絞り込めませんでした。そのため、この記事では特定の店名や住所を挙げることはしません。
아귀찜のような個人経営の店が多いジャンルは、口コミサイトの情報が数年前のまま更新されていないことも珍しくありません。訪問前に必ず地図アプリ(네이버 지도など)や店の公式SNSで、直近の投稿日・営業時間の更新日を確認してから向かうことをおすすめします。
아귀찜は量が多くて食べ終えるまでの滞在時間が長くなりがちな料理です。締めの볶음밥まで頼むと、なおさら腰を据えることになります。店の多いエリアの近くに宿を取っておくと、満腹での移動が減らせて帰りが楽になります。
似た料理との違い——콩나물찜・해물찜との違い
韓国語のメニューを眺めていると、아귀찜と紛らわしい名前の料理がいくつかあります。ひとつは콩나물찜(コンナムルチム)で、こちらは魚を使わず豆もやしと肉・野菜を辛いタレで蒸したもので、아귀찜からアンコウを抜いたような構成に近い料理です。もうひとつは해물찜(ヘムルチム)で、こちらはアンコウに限らずエビ・カニ・貝など複数の魚介を組み合わせた蒸し料理を指すことが多く、店によって使う魚介の組み合わせが変わります。
辛い蒸し料理という枠でもう少し視野を広げると、タコの仲間を使ったソウルの주꾸미(チュクミ)専門店ガイドや、カニを漬け込むソウルのカンジャンケジャン専門店ガイドも、同じように辛さと魚介の個性を楽しむジャンルとして候補に入ります。名前だけで判断せず、写真やメニューの説明で使われている魚介を確認してから注文すると、想像との違いに戸惑うことが少なくなります。
注文で使うハングルのワンポイント
ここまで登場したフレーズを、当日その場で使える形でまとめておきます。まず料理名は아귀찜(標準語)と아구찜(慶尚道方言・店の看板でよく見る形)のどちらで呼んでも同じ料理を指すので、看板にどちらの表記があっても迷う必要はありません。注文時に使えるフレーズとしては「1인분 가능해요?(1人前できますか?)」「안 맵게 해주세요(辛くしないでください)」「볶음밥 추가해주세요(チャーハンを追加してください)」の3つを覚えておけば、当日の会話でつまずく場面はかなり減らせるはずです。
韓国語での注文全般にまだ自信が持てない人は、韓国語レストラン注文フレーズ集を旅の前に一読しておくと安心材料になります。指差しで伝わる場面も多いので、完璧に発音できなくても身構えすぎる必要はありません。
よくある質問
まとめ
- 아귀찜(アグチム)は唐辛子ベースの濃いタレに豆もやしを大量に合わせて蒸す料理で、日本のあんこう鍋とは別物
- 標準語は아귀찜、慶尚道方言では아구찜と呼ばれ、看板ではどちらの表記も見られる
- 伝統的な発祥地・馬山(昌原市)では干しアンコウが基本だが、都市部では生アンコウを使う店が主流になりつつある
- 辛さは「안 맵게 해주세요」で調整を申し出られる店が多いが、対応の範囲は店による
- 多くの店が2〜3人前からの注文を基本にしており、1人旅は事前確認が欠かせない
- 締めの볶음밥まで頼むのが定番の楽しみ方だが、追加の可否は店によって差がある
- 個別の店名・住所は今回一次情報で確認できず、訪問前に地図アプリや公式SNSでの確認が必要
아귀찜は、見た目の強烈さほど身構える必要のある料理ではありません。ただ、大皿ならではの人数の壁と、辛さの感覚の違いだけは、出発前に一手間かけて確認しておくと当日の満足度がまるで違います。この記事で挙げた確認できたこと・できなかったことを目安に、自分の旅程に合う一軒を探してみてください。
参考・出典
- 한국어 위키백과「아귀찜」 https://ko.wikipedia.org/wiki/아귀찜 (2026年9月7日確認)
- 창원시 디지털창원문화대전「아구찜」 https://changwon.grandculture.net/changwon/toc/GC02210007 (2026年9月7日確認)
- 한국관광공사 대한민국 구석구석「마산 오동동 아구찜거리」 https://korean.visitkorea.or.kr/detail/ms_detail.do?cotid=daa02812-bcfb-496a-8b74-3d006a4649b3 (2026年9月7日確認)

