韓国で施術を受けて帰国した。経過が気になる。担当の医師にオンラインで診てもらえないか——この問いへの答えは、いまは「法律の外」、2027年5月27日からは「条文がある」に変わります。2026年5月26日に公布された医療海外進出法の改正で、外国人患者に対する非対面診療が初めて条文になりました。ただし、できるのは登録した誘致医療機関に所属する医師で、細かな手順はこれから省令で決まります。
本記事は公的情報・公式情報をもとにした情報提供であり、特定の施術や医療機関を勧めるものではありません。医療上の判断は必ず医師にご相談ください。日本の法律のもとで、日本にいる患者が外国の医師の診療を受けることの適否は、この記事では扱いません。
①いま(2026年9月)の韓国の医療法第34条は、遠隔医療を医師どうしの支援に限っています。患者本人へのオンライン診療は条文にありません。②2026年12月24日に医療法の改正が施行され、非対面診療そのものが法制化されます。ただし再診や同一地域が原則で、外国にいる患者に使えるかは条文だけでは決まりません。③🚨2027年5月27日に医療海外進出法第16条の2が施行され、外国人患者誘致医療機関に所属する医師が観察・相談・診断・処方をオンラインで行えるようになります(保健福祉部の説明では初診の外国人患者も対象)。④条文は「患者の居住国の法令も守る」と書いています。日本側の法律は別の問題として残ります。⑤手順の細目は保健福祉部令でこれから定まります。
いまは、医師どうしの「遠隔医療」しかない
まず現行法です。韓国の医療法は、医師は医療機関の中で医療業を行うのが原則だと定めています(第33条第1項)。そのうえで遠隔医療を認めている条文が第34条ですが、対象は医療人から医療人へです。
医療法 第34条第1項(現行)
医療人(医療業に従事する医師・歯科医師・韓医師に限る)は、第33条第1項にかかわらず、コンピュータ・画像通信など情報通信技術を活用して遠くにいる医療人に医療知識や技術を支援する遠隔医療を行うことができる。
「遠くにいる医療人に支援する」——患者に対する診療ではありません。第3項・第4項も、遠隔地の医師と現地の医師のあいだの責任の分け方を書いています。つまり、日本に帰った患者が韓国の医師に画面越しに診てもらう行為は、いまの医療法第34条には根拠がありません。
ただし、法律の条文とは別枠で、保健福祉部が「非対面診療試験事業」を運用しています。2025年10月27日公告の指針改正(保健福祉部公告第2025-736号)では、医院級の医療機関を中心に、医療機関ごとの非対面診療の件数を全体の月30%以下に抑えるといった条件で動いています。外国にいる患者や、個別のSNS相談がこの試験事業に当たるかどうかは、公告からは読み取れませんでした。この記事で「法律の外」と書くのは、医療法第34条の条文の外という意味です。
外国人患者の側から見ると、もうひとつ条文があります。医療海外進出法第16条(現行)は、誘致医療機関の医師が国外にいる医療人に対して、情報通信技術で医療知識・技術の支援や患者の健康・疾病についての相談・教育を行えるとしています。これも相手は日本側の医師であって、患者本人ではありません。この条文は外国人患者向け医療機関の義務をまとめた記事で触れました。2027年5月の改正で、この第16条の見出しは「外国人患者事前・事後管理」から「外国人患者非対面協診」に改められ、患者本人に対する診療は次に見る第16条の2として別に置かれます。

2026年12月24日、非対面診療そのものが法制化される
先に動くのは医療法です。2025年12月23日に公布された法律第21238号が、附則により公布後1年を経過した日=2026年12月24日から施行され、医療法に第34条の2から第34条の9までが新設されます。
医療法 第34条の2(非対面診療)第1項・第2項(2026年12月24日施行)
① 医療人は患者を対面して診療することを原則とする。
② 第1項にかかわらず、医療人(医療業に従事する医師・歯科医師・韓医師に限る)は、次の各号のいずれかに該当する場合には非対面診療(医療人が医療機関の外にいる患者に対して、有線・無線通信、画像通信、コンピュータなど情報通信技術を活用して実施する診療であって、継続的観察、相談および教育、診断および処方に該当する診療をいう)を実施することができる。
- 1. 患者が当該医療機関で一定期間内に同一の症状で対面して診療を受けた記録がある場合
- 2. 第1号に該当しない場合であって、次のいずれかに該当する場合
イ. 患者の居住地と医療機関の所在地が同一地域に位置する場合
ロ. 希少疾患患者、1型糖尿病患者など、同一地域の外で非対面診療を受ける必要がある患者の場合
原則は「同じ医療機関で同じ症状を対面で診てもらった記録がある」再診で、初診は「同一地域」か希少疾患などの例外だけ。第4項は医院級の医療機関で実施するとし、病院級は「手術後の経過観察が必要な患者」などやむを得ない場合に限っています。
日本に帰った患者はどうか。第2項第1号の「対面の記録がある再診」には、国内や同一地域という限定は書かれていません。文言上は入りうるように読めます。ただし「一定期間」や患者の範囲は第8項で保健福祉部令に委ねられていて、まだ出ていません。外国にいる患者に使えるかどうかは、条文だけからは断定できない——そのうえで、外国人患者専用の条文が次のとおり別に作られています。
第34条の3は非対面診療の遵守事項を並べています。医療機関全体の診療件数に対する非対面の比率の上限、非対面診療の限界と患者の義務を説明して同意を受けること、麻薬・向精神薬・乱用のおそれのある医薬品を処方しないこと(希少疾患などの例外あり)、視覚情報が必須の疾患は画像通信で診ること、患者が他人の人的事項を使って受診してはならないこと——などです。
2027年5月27日、外国人患者向けの条文が施行される
本題です。医療海外進出法の改正(法律第21693号、2026年5月26日公布)が、附則により公布後1年を経過した日=2027年5月27日から施行されます。新設されるのが第16条の2です。
医療海外進出法 第16条の2(外国人患者非対面診療)(2027年5月27日施行)
① 医療業に従事する医師・歯科医師・韓医師(外国人患者誘致医療機関の開設者および当該医療機関に所属する者に限る)は、有線・無線通信、画像通信、コンピュータなど情報通信技術を活用して、外国人患者の事前・事後管理のための継続的観察、相談・教育、診断および処方(以下「外国人患者非対面診療」という)を行うことができる。
② 医療法第34条の2第4項にかかわらず、外国人患者非対面診療は、医院級の医療機関および病院級の医療機関で実施することができる。
③ 保健福祉部長官は、外国人患者非対面診療を支援するため、電子情報システム(医薬品の処方に必要な機能を含めることができる)を構築・運営することができる。この場合、医療法第34条の7第1項による非対面診療支援システムと相互連携することができる。
⑥ 外国人患者非対面診療を行う者は、この法律および患者の居住国の法令を遵守しなければならない。
⑦ 外国人患者非対面診療の細部の実施手続および方法、第3項による支援システムの構築・運営などに必要な事項は、保健福祉部令で定める。
ここで押さえるべき点を並べます。
- 誰が … 外国人患者誘致医療機関の開設者と、その医療機関に所属する医師・歯科医師・韓医師。登録していない医療機関の医師には根拠がありません。登録の調べ方は登録医療機関の調べ方をまとめた記事にあります。
- 何を … 「継続的観察、相談・教育、診断および処方」。条文に「初診」の語はありませんが、保健福祉部の発表は初診の外国人患者も対象になると説明しています。国内向けの第34条の2が再診・同一地域を原則にしているのと対照的です。
- どこで … 医院級と病院級の両方。国内向けの「医院級が原則」を外しています。
- 処方 … 支援システムに処方の機能を持たせることができる、と書かれています。ただし、その薬をどう受け取るか——日本にいる患者への引き渡しの手順——は条文に書かれていません。
- 🚨「患者の居住国の法令も守る」 … 第6項です。日本にいる患者を診るなら、日本の法律が別にかかることを条文自身が前提にしています。
保健福祉部は2026年5月26日の発表で、2025年の外国人患者が約200万人に達したことを挙げ、滞在期間の短い外国人患者への事前相談と帰国後の事後管理のために制度化した、と説明しています。

違反すると、誘致登録の取消事由になる
同じ改正で、第24条第1項に第8号の2が加わります。
医療海外進出法 第24条第1項第8号の2(2027年5月27日施行)
第16条の2で定めた方法と手続などに違反して外国人患者非対面診療を行った場合
第24条第1項は、市・道知事が誘致医療機関・誘致事業者の登録を取り消せる事由を並べた条文です。つまり手順を守らずにオンライン診療をすると、外国人患者を誘致する資格そのものを失いうる——制裁は罰金ではなく、登録の側にかかっています。
刑事罰が置かれているのは別の相手です。支援システムの運営を受託した専門機関が情報の保護義務などに違反した場合は、第27条の2により5年以下の懲役または5千万ウォン以下の罰金。資料の未提出・虚偽提出は第31条第2項第2号の2により200万ウォン以下の過料です。誘致医療機関の側の手順違反に対する制裁は、上の登録取消しの側にかかっています。
2027年5月まで、帰国後のフォローはどうなるか
施行までの8か月あまり、そして施行後も省令が出るまでは、外国人患者向けの「オンライン診療」を定めた条文は存在しません。いまクリニックがカカオトークやLINEで受けている経過の相談が、上で触れた試験事業の枠に入るのか、それとも単なる連絡なのかは、公告からは読み取れません。少なくとも第16条の2の「外国人患者非対面診療」ではない——ここまでが条文から言えることです。
これは「してはいけない」という意味ではありません。ただ、診療として責任が定まっていないやり取りだということは知っておく必要があります。現行の医療法第34条第3項は、遠隔医療を行う医師は対面と同じ責任を負うとしていますが、それは医師どうしの遠隔医療の話です。
いまできる段取りは、帰国前に整えておくことに集中します。
- 経過の相談をどの経路で受けるかを、施術の前に確認する。予約の経路と通訳の記事で触れたSNS窓口が、帰国後も続くかどうか
- 診断書・カルテの写しをもらって帰る。帰国後に日本の医師にかかるときの材料になります。手数料の上限は書類と手数料の記事に
- 処方された薬は、帰国後に追加でもらえない前提で考える。持ち帰りの数量の決まりは薬の持ち帰りの記事に
- 何かあったときの相談先は、医療紛争の調停窓口の記事に
施行後に確かめること
2027年5月27日以降、実際に使えるかどうかは3つの条件で決まります。
- その医療機関が誘致医療機関として登録されているか(第16条の2第1項)
- 保健福祉部令で定まる手順を、その医療機関が備えているか(第7項)。省令が出るまで、この部分は空白です
- 日本の法律がどう扱うか(第6項)。韓国側の条文は「居住国の法令を守る」とだけ書いており、日本にいる患者が外国の医師の診療を受けることの日本側の適否は、この記事では判断しません
この記事で答えられないこと
- 日本の法律のもとで、日本にいる患者が韓国の医師のオンライン診療を受けてよいか——韓国側の条文が「居住国の法令を守る」と書いているところまでを示し、日本側の適否は扱っていません。
- 2027年5月27日以降の具体的な手順・料金・使うアプリ——保健福祉部令と支援システムの設計がこれからで、条文からは決まりません。
- 処方された薬が日本にどう届くか——第16条の2は支援システムに処方の機能を持たせられるとするだけで、引き渡しの手順は書いていません。医療法第34条の5(非対面診療時の医薬品の引き渡し)も、島や僻地の居住者・長期療養給付の受給者・登録障害者・一定の感染症患者・希少疾患患者に限った別の条文で、外国への配送を認めるものではありません。
- 個別の医療機関がいまLINEなどで行っている経過相談の法的性質——制度の外のやり取りだというところまでで、個別の適否は判断しません。
- 医療法第34条の2(国内向け)が、対面の記録のある外国人患者に使えるか——文言上の読みは示しましたが、施行後の運用は確認していません。
よくある質問
まとめ
- いまの医療法第34条は医師どうしの遠隔医療だけ。別枠の試験事業はあるが、帰国後の患者に当たるかは公告から読めない。
- 2026年12月24日、医療法第34条の2が施行され、非対面診療が法制化される。原則は再診・同一地域・医院級。外国にいる患者に使えるかは省令待ち。
- 2027年5月27日、医療海外進出法第16条の2が施行。登録した誘致医療機関の医師が観察・相談・診断・処方をオンラインで行える(保健福祉部の説明では初診も対象)。医院級・病院級の両方。
- 条文は「患者の居住国の法令も守る」と明記。日本側の法律は別の問題として残る。
- 細部は保健福祉部令でこれから。処方された薬の引き渡しも条文には無い。
- 医療機関の手順違反は誘致登録の取消事由(第24条第1項第8号の2)。刑事罰は支援システムの受託機関の側。
- それまでの帰国後フォローは、帰国前に書類と相談経路を整えるのが現実的。
情報源と確認日
- 国家法令情報センター「의료 해외진출 및 외국인환자 유치 지원에 관한 법률」制定・改正文 — 법률 제21693호(2026. 5. 26. 공포、[시행 2027. 5. 27.]。第16条の2・第24条第1項第8号の2・第27条の2・第31条第2項第2号の2の新設、附則)https://www.law.go.kr/LSW/lsRvsDocListP.do?chrClsCd=010102&lsId=012412 (2026年9月6日確認)
- 国家法令情報センター「의료법」制定・改正文 — 법률 제21238호(2025. 12. 23. 공포、[시행 2026. 12. 24.]。第34条の2〜第34条の9の新設、附則)https://www.law.go.kr/LSW/lsRvsDocListP.do?chrClsCd=010102&lsId=001788 (2026年9月6日確認)
- 国家法令情報センター「의료법」[시행 2026. 4. 7.] 법률 제21524호(現行の第33条第1項・第34条)https://www.law.go.kr/LSW/lsInfoP.do?lsiSeq=285327&chrClsCd=010202&urlMode=lsInfoP&efYd=20260407&ancYnChk=0 (2026年9月6日確認)
- 保健福祉部 공고「「비대면진료 시범사업」 지침 개정안 공고」(보건복지부 공고 제2025-736호、2025. 10. 27.)https://www.mohw.go.kr/board.es?mid=a10501010000&bid=0003&list_no=1487708&act=view (2026年9月6日確認)
- 国家法令情報センター「의료 해외진출 및 외국인환자 유치 지원에 관한 법률」[시행 2026. 5. 12.] 법률 제21112호(現行の第16条・第24条)https://www.law.go.kr/LSW/lsInfoP.do?lsiSeq=279693&chrClsCd=010202&urlMode=lsInfoP&efYd=20260512&ancYnChk=0 (2026年9月6日確認)
- 保健福祉部 보도자료「“외국인환자도 온라인으로 진료받는다” 비대면 진료로 더 가까워진 K-의료」(2026. 5. 26.)https://www.mohw.go.kr/board.es?mid=a10503010100&bid=0027&act=view&list_no=1490621 (2026年9月6日確認)

