ソウルの食堂の看板メニューを眺めていると、「설렁탕(ソルロンタン)」の隣に「도가니탕(トガニタン)」という文字を見かけて、「同じような白いスープなのに、なんで値段が違うんだろう?」と首をかしげた経験がある人、意外と多いのではないでしょうか。見た目はどちらも白く濁ったスープで、パッと見の違いがわかりにくいのがこの2つのやっかいなところです。この記事では、トガニタンとソルロンタンが牛のどの部位から作られているのかという根本の違いから、値段の差が生まれる理由、そして営業を確認できたソウルの老舗2店の値段と頼み方までを整理します。
トガニタンとソルロンタンの違いは、ひとことで言うと「使っている部位」です。ソルロンタンは牛の骨(すね骨など)を長時間煮出したスープで、あっさりした後味が特徴。トガニタンは牛の「도가니」、つまりひざの軟骨部分を中心に煮出したスープで、とろっとしたコラーゲン質のとろみと、コリコリした軟骨の歯ごたえが持ち味です。軟骨は牛1頭からとれる量が少ない部位のため、トガニタンのほうがソルロンタンより値段が高くなる傾向にあります。今回、独立門(トンニンムン)の老舗「テソンジプ」と、鍾路(チョンノ)の老舗「イムンソルロンタン」の2店で、営業していることと値段の目安を確認できました。
結論から――トガニタンとソルロンタンの違いは”部位”にある
韓国の食堂に並ぶ白濁スープには、大きく分けて설렁탕(ソルロンタン)・곰탕(コムタン)・도가니탕(トガニタン)の3種類があります。この3つ、見た目の色合いがどれも似ているため、メニューを見ただけでは違いがわかりにくいのが正直なところです。ただ、使っている部位を軸に考えると、意外とすっきり整理できます。
ソルロンタンは牛の骨、特にすね骨まわりを長時間煮出して作るスープで、白く濁った、まろやかでクセの少ない味わいが特徴です。コムタンはソルロンタンより味が濃く、重めの仕上がりになる傾向があります。そしてトガニタンは、牛の「도가니」――ひざの関節まわりの軟骨部分――を中心に煮出したスープで、この軟骨がとろっとしたとろみと、コリコリとした独特の歯ごたえを生み出します。同じ牛肉ベースのスープでも、どの部位を主役にするかで名前も食感も変わる、というのがこのジャンルの面白さです。
そもそも도가니(トガニ)とは牛のどの部位か
도가니(ひざの軟骨部分)は、牛の後ろ脚のひざ関節まわりにある軟骨の部位を指す韓国語です。骨と骨をつなぐ関節部分にあたるため、コラーゲンを多く含む組織で構成されており、長時間煮込むととろりとした粘りが出るのが特徴とされています。この記事では効能や健康への働きについては扱いません。あくまで食感・味・値段・頼み方という、実際に食べるときに知っておきたい情報に絞って整理します。
肉屋やスーパーの精肉コーナーではあまり見かけない部位で、専門的に扱う食堂や精肉店でないと手に入りにくいとされています。1頭の牛からとれる量が限られているため、大量に仕入れて安く提供するというビジネスモデルには向きません。この「そもそもの量が少ない」という構造が、次に説明する値段の差につながっています。トガニタンを注文すると、スープの中に白っぽく半透明の軟骨の塊がゴロゴロと入っているのを目にすると思いますが、これがまさに도가니そのものです。
食感の面では、コリコリとした軟骨の歯ごたえと、周りについた肉の柔らかさのコントラストが特徴です。骨だけを煮出すソルロンタンと違って、噛みごたえのある具材そのものを楽しむ料理という側面が強く、スープを飲むというより「具を食べる」感覚に近いという声もあります。この歯ごたえの違いこそが、両者を食べ比べたときにいちばんはっきり感じられるポイントだと言えるでしょう。
見た目そっくりなのに値段が違う理由
ソルロンタンとトガニタンを同じ食堂で見比べると、たいていトガニタンのほうが数千ウォン高く設定されています。理由としてよく説明されているのが、先ほど触れた「とれる量の少なさ」です。ソルロンタンに使う骨は牛1頭からある程度まとまった量が確保できますが、ひざの軟骨部分は量が限られているため、仕入れ値そのものが骨より高くなりやすい、という構造です。
また、下ごしらえの手間の違いも理由のひとつに挙げられます。軟骨部分は骨よりも下処理に時間がかかるとされ、臭みを抜くための工程も含めて手間がかかる分、価格に反映されやすいというわけです。とはいえ、値段が高いからといって「上位互換」というわけではなく、あくまで別の食感・別の楽しみ方をする料理だと考えるほうが実際の体験に近いはずです。ソルロンタンのあっさりした後味が好きな人もいれば、トガニタンのコリコリした歯ごたえに惹かれる人もいます。
この記事で紹介する値段は、各店舗の情報をもとにした目安です。仕入れ状況や時期によって変動することがあるため、店に足を運ぶ前に店舗へ電話で確認するか、地図アプリの最新情報を確認することをおすすめします。

独立門の老舗「テソンジプ」は今も営業中
ソウルでトガニタンを名物にしている店として、今回営業を確認できたのが独立門(トンニンムン)駅3番出口から徒歩5分ほどの場所にある「テソンジプ(대성집)」です。60年以上続く老舗とされ、장작불 가마솥(薪の火で炊く大きな釜)でスープを煮出す調理法を続けていることで知られています。ミシュランガイド・ソウルのビブグルマン部門に複数年にわたって選ばれているほか、韓国のグルメ番組でも紹介された実績がある店です。
住所はソウル特別市鍾路区社稷路5(地番では鍾路区杏村洞209-35)、電話番号は02-735-4259です(2026年9月13日確認)。この場所は独立門というエリアの性質上、区の境界に近く、案内サイトによって表記が揺れることがあるため、訪れる際は店名と電話番号で検索して最新の地図情報を確認するのが確実です。
テソンジプのメニュー・値段・頼み方
テソンジプの営業時間は、月曜〜金曜が10時30分〜20時(ブレイクタイム15時〜17時、ラストオーダー14時30分・19時30分)、土曜が10時30分〜19時(ブレイクタイム14時30分〜17時、ラストオーダー14時・18時30分)で、日曜日は定休日です(2026年9月13日確認)。日本の食堂とはブレイクタイムの取り方が違うので、間の時間帯に訪れて閉まっていた、ということがないよう注意してください。ブレイクタイムのある食堂の一般的な注意点は韓国の食堂のブレイクタイム記事でも整理しています。
肝心のトガニタンの値段は、一般が13,000ウォン、特(特盛)が17,000ウォンです(2026年9月13日確認)。初めて訪れる人は、まず一般サイズで軟骨の食感を確かめてから、次回もっと具の量が多い「特」を試す、という順番で楽しむのもひとつの手です。韓国の食堂では1人前ずつの注文が難しい店もあるので、注文の単位について気になる人は韓国の食堂の2人前以上ルール記事もあわせて確認しておくと安心です。
| 店名 | メニュー | 値段 |
|---|---|---|
| テソンジプ(대성집) | トガニタン(一般) | 13,000ウォン(2026年9月13日確認) |
| テソンジプ(대성집) | トガニタン(特) | 17,000ウォン(2026年9月13日確認) |
鍾路の老舗「イムンソルロンタン」もトガニタンを出す
もう1店、営業を確認できたのが鍾路(チョンノ)エリアにある「イムンソルロンタン(이문설농탕)」です。この店は看板メニューこそソルロンタンですが、トガニタンや머리탕(頭肉のタン)も提供しています。複数の情報源で「1907年創業」「韓国で最初に公式登録された食堂のひとつ」といった説明が一致しており、ソウル市の未来遺産(미래유산)にも指定されている、いわば韓国の食堂の歴史そのものを背負うような店です。今回の調査では閉店・廃業の情報は見つからず、100年を超えて営業を続けているという記述が複数のサイトで一致していました。
ただし正直に書いておくと、この店の詳しい住所・営業時間・値段については、今回のリサーチでは公式サイトや一次情報のページを直接開いて確認することができませんでした(グルメサイトのページが軒並みアクセス制限で開けませんでした)。飲食店情報サイトの記載によれば、鍾路区内に店を構え、営業時間はおおむね朝から夜まで、ソルロンタン・トガニタン・머리탕のいずれも一般的な食堂の価格帯におさまる、といった内容が複数サイトで共通して見られましたが、これはあくまで情報サイト側の記載であり、編集部が公式一次情報で裏取りできた数字ではありません。
イムンソルロンタンの住所・営業時間・具体的な値段は、今回一次情報での確認ができませんでした。訪れる前に、店名で地図アプリを検索し、営業時間・定休日・現在の価格を直接確認してください。
イムンソルロンタンの歴史と頼み方の考え方
イムンソルロンタンのような100年規模の老舗になると、メニューの構成自体が「その店の歴史」を語る要素になります。看板のソルロンタンに加えてトガニタンや머리탕まで揃えているのは、牛1頭を余さず使い切るという、昔ながらの食堂の発想が今も続いている証拠とも言えそうです。トガニタンだけを目当てに専門店を選ぶのもいいですが、こうした老舗でソルロンタンと食べ比べるという楽しみ方もできます。
頼み方としては、まずソルロンタンかトガニタンかで迷ったら、あっさり派ならソルロンタン、噛みごたえのある具を楽しみたいならトガニタンを選ぶ、という基準がわかりやすいはずです。ソルロンタンそのものについてはソウルのソルロンタン記事で店ごとの特徴を整理しているので、食べ比べの計画を立てる人はあわせて読んでおくと選びやすくなります。トガニタンと似た系統の煮込み料理として육개장(ユッケジャン)を挙げる声もあり、辛い煮込みスープと白いスープの違いを知りたい人はソウルのユッケジャン記事も参考になります。
注文のコツと薬味・付け合わせの楽しみ方
トガニタン・ソルロンタンのどちらも、テーブルに置かれた薬味やキムチと組み合わせて自分好みの味に調整するのが韓国の食堂での楽しみ方です。刻みネギ、コショウ、塩、そして辛味を足したい人向けの薬味だれなどがテーブルに用意されている店が多く、味の濃さを自分で調整できるのが白濁スープ系メニューの特徴です。깍두기(カクテキ)などの副菜(반찬)を合わせて食べる人も多く、副菜のおかわりについて気になる人は韓国の食堂の副菜おかわり記事も参考になります。
注文の単位についても触れておくと、韓国の食堂の中には1人前だけの注文を受け付けず、2人前からしか注文できない店があります。トガニタン専門店でもこのルールが適用されることがあるため、1人で訪れる予定がある人は前述の2人前以上ルール記事で一般的な考え方を確認しておくと、当日困らずに済みます。今回紹介した2店について、この点まで個別に確認できたわけではないため、心配な人は訪問前に電話で確認しておくと安心です。1人でも気軽に頼みやすいメニューを探している人はソウルのスンドゥブ記事もあわせて参考にしてみてください。
白いスープなので見た目だけでは辛さが想像しにくいですが、トガニタン・ソルロンタンはどちらも基本的に辛くないスープです。辛い煮込みが苦手な人でも挑戦しやすいメニューと言えます。逆に、辛いものが好きな人からすると物足りなく感じることもあるかもしれませんが、その場合はテーブルの薬味だれや、店によって置いてある辛味調味料を足して自分好みに調整するのがおすすめです。
よくある質問
まとめ――迷ったら部位の違いで選ぶ
トガニタンとソルロンタンの違いは、突き詰めると「牛のどの部位を主役にしているか」という一点に集約されます。ソルロンタンは骨を煮出したあっさり系、トガニタンはひざの軟骨を煮出したとろみとコリコリ感が持ち味の一品です。軟骨は仕入れられる量が限られているため、トガニタンのほうが値段が高くなりやすいという背景も、知っておくと納得感が違うはずです。
- トガニタンは牛のひざ軟骨(도가니)、ソルロンタンは牛の骨が中心の白濁スープ
- 軟骨はとれる量が少ないため、トガニタンのほうが値段が高くなりやすい
- 独立門の「テソンジプ」は営業を確認済み。トガニタン一般13,000ウォン・特17,000ウォン(2026年9月13日確認)
- 鍾路の「イムンソルロンタン」も営業を確認済みだが、値段・営業時間は情報サイトの記載にとどまり公式未確認。訪問前に要確認
- どちらも基本は辛くないスープ。薬味やキムチで自分好みに調整できる
ソウルには他にも、老舗として名前が挙がる白濁スープの食堂がいくつもありますが、今回の調査で営業・住所・値段まで確認できたのはこの2店にとどまりました。気になる店が別にある場合は、訪れる前に店名と現在の営業状況を必ず自分でも確認してから向かうようにしてください。
参考・出典
- diningcode「대성집 – 독립문역 도가니탕 맛집」https://www.diningcode.com/profile.php?rid=qpxxC2UiEFYc (2026年9月13日確認・住所・営業時間・値段を取得)
- 대한민국 구석구석(Visit Korea)「이문설농탕」https://korean.visitkorea.or.kr/detail/ms_detail.do?cotid=19b69c39-2748-4e4e-b733-f6bbf4b14e3b (2026年9月13日確認・沿革のみ記載、住所・値段の記載なし)
- zzamlunch.com「설렁탕, 곰탕, 도가니탕 차이」の検索結果要約 (部位・食感の違いに関する一般的な説明として参照)

