チュオタンは臭みが強い?ソウルの老舗3店と食べ方のコツ

土鍋によそわれたとろみのあるどじょう汁と、添えられた薬味の小皿

見た目でスプーンを止めそうになったのに、匂いはほとんど気にならなかった——추어탕(チュオタン)にはそんな感想が多い。

結論から

추어탕はドジョウ(미꾸라지)をすりつぶすか丸ごと使い、野菜と煮込む秋の郷土スープ。見た目の印象ほど臭みは強くないとされ、その理由は薬味と出汁の作り方にある。地方によって「すりつぶして澄んだ味」の慶尚道式と「丸ごと・とろみ」の全羅道・南原式に分かれ、ソウルには사골(牛骨)だしを使う「추탕」という独自の系統もある。

目次

추어탕とは何か——ドジョウを煮込む秋のスープ、その基本

추어탕は、ドジョウを主役にして野菜と一緒に辛めに煮込んだスープを指す。別名を「추탕(チュタン)」とも呼ぶ。韓国民族文化大百科事典によると、ドジョウを茹でて出汁を取り、これに鶏出汁を合わせて醤油やコチュジャン、胡椒で調味し、白菜やからし菜、ネギを加えて仕上げる方法が基本形として紹介されている。

もう一つの作り方は、ごま油でドジョウを軽く炒めてから煮込み、牛肉や野菜を味付けして合わせるというもの。地方や店によって、どちらの系統に寄るかが変わってくる。全羅道では丸ごとのドジョウを使い、肉出汁にコチュジャンで味を付け、丸のままの豆腐と一緒に煮て、生姜や青唐辛子、小麦粉を加える作り方が伝わっているという。

面白いのは歴史面だ。朝鮮時代の料理書には추어탕そのものの記載は見当たらないが、19世紀の百科事典的な文献『五洲衍文長箋散稿』には「추두부탕(鰍豆腐湯)」という名で、ドジョウと豆腐を煮込む料理が記録されている。今のスタイルに近づいたのは、比較的後の時代と考えられる。

旬はもともと7月から11月ごろとされ、この時期のドジョウが最も脂が乗って美味とされてきた。今は養殖が広がったことで、季節を問わず一年中食べられる料理になっている。とはいえ「秋の食べ物」というイメージが強いのは、この旬の記憶が文化として残っているからかもしれない。

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ソウルイン編集部正直、名前と見た目だけで少し身構える人は多いはず。でも実際に地方ごとの作り方を調べていくと、思っていたより手間のかかる、丁寧な郷土料理だと分かってくる。

見た目より臭みが少ない理由——調理でどう消しているか

추어탕の最大の不安は「見た目のわりに臭みが強いのでは」という点だろう。この点、韓国民族文化大百科事典は「必ず生きたドジョウを使い、山椒粉を加えて特有の臭みを取る」と明記している。生きた個体を使うこと自体が、臭みを抑える前提条件になっているわけだ。

薬味の面でも工夫がある。追加で調べたところ、추어탕に最も一般的に使われる薬味は「チョピ(초피)」という実の皮の粉で、慶尚道の方言では「제피(チェピ)」とも呼ばれる。チョピ粉・山椒粉・胡椒粉は香りこそ違うものの、臭み消しと消化を助ける働きは共通しているとされ、チョピ粉が手に入らなければ山椒粉や胡椒粉で代用しても差し支えないという整理がされている。

地方によるアプローチの違いも臭み対策そのものだ。全羅道では味噌のこうばしさで、慶尚道ではチョピ粉のすっきりした香りで、それぞれドジョウ特有のくせを抑える傾向があると、複数の紹介記事が一致して伝えている。どちらも「消す」というより「別の香りで包む」発想に近い。

つまり、見た目の色や質感からくる不安と、実際に口に運んだときの匂いには、調理段階での対策の分だけ差が生まれやすい。とはいえ味の感じ方には個人差があるため、「臭みが完全にゼロ」と言い切れるわけではない点は前提として知っておきたい。

結局、初めてでも大丈夫な料理?
生きたドジョウを使い薬味で仕上げるのが基本形とされているため、極端に生臭いスープではないと考えられる。それでも不安なら、後述するチョピ粉や山椒粉を少量から足して、自分の好みの香りに調整するとよい。

地方でこんなに違う——慶尚道式と全羅道・南原式

추어탕は全国どこでも同じ味というわけではない。大きく分けると、ドジョウをすりつぶして澄んだスープに仕上げる系統と、丸ごと使ってとろみのあるスープに仕上げる系統がある。この違いを生んでいるのが、慶尚道式と全羅道式という地方色だ。

慶尚道式は、ドジョウをすりつぶして加え、スープを澄んだ状態に仕上げるのが特徴とされる。韓国観光公社の紹介記事では、大邱の「上州食堂」がドジョウを茹でてすりつぶした身に白菜などの野菜を合わせ、あっさりと仕上げる店として紹介されていた。すっきりした後味を出すために、チョピ粉が使われることが多いという。

一方の全羅道式、とりわけ南原の추어탕は、もともとドジョウをすりつぶさず、臼でついて作られていたと伝わる。えごま粉(들깨가루)を加えるため、スープにとろみが出るのが特徴だ。食べる直前にチョピ粉や山椒粉をたっぷり振りかけるスタイルも、この系統ならではの楽しみ方とされている。韓国観光公社の記事では、南原の「새집추어탕(セジプチュオタン)」が味噌のこうばしさとえごまの風味を特徴とする店として紹介されていた。

江原道・原州の추어탕も独自色がある。コチュジャンを溶いて赤いスープに仕立て、丸のままのドジョウをその場で煮るスタイルが特徴とされる。同じ「추어탕」という名前でも、器を覗いたときの色もとろみも、地方によってこれだけ変わるのはちょっとした発見だ。

比較の軸 慶尚道式 全羅道・南原式
ドジョウの使い方 すりつぶす 丸ごと(臼でつく)
スープの質感 澄んだ味 えごま粉でとろみ
仕上げの薬味 チョピ粉ですっきり 味噌のコクを効かせる
薬味を入れるタイミング 調理の段階で 食べる直前にたっぷり
慶尚道式と全羅道・南原式で、ドジョウの使い方とスープの仕上げ方がどう違うかを対比する図

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ソウル式「추탕」——사골だしと3大老舗の系譜

地方の추어탕とは別に、ソウルには「추탕」と呼ばれる独自の系統がある。韓国観光公社の記事では、무교동(武橋洞)の「용금옥(ヨングムオク)」が사골(牛骨)だしに豆腐やきのこを加える店として紹介されていた。地方のとろみ系・すっきり系とはまた違う、都市型の추탕といえる。

詳しく調べると、용금옥はもともとコプチャン(内臓)で出汁を取り、味噌ではなくコチュジャンや唐辛子粉を基本の調味にして、油揚げや豆腐、きのこ、かぼちゃなどを加えるスタイルだと分かった。注文の際には「갈탕(すりつぶし)」か「통탕(丸ごと)」かを聞かれるのも、この店ならではの慣習として紹介されている。

ソウルの추탕を語るとき、よく名前が挙がるのが「3大老舗」と呼ばれる3店だ。1932年創業の용금옥、1926年創業とされる형제추탕(ヒョンジェチュタン)、1933年創業とされる곰보추탕(コムボチュタン)が、それぞれ複数の紹介記事で挙げられている。日本の老舗蕎麦屋のように、創業年と屋号がそのまま看板になっている世界だ。

同じ牛骨だしを使う韓国料理としては、ソウルの설렁탕(ソルロンタン)の記事で紹介した名店の系譜とも重なる部分がある。だしの取り方に興味がある人は、あわせて読み比べてみると面白いはずだ。

店名 創業年とされる年 エリア
용금옥 1932年 中区・茶洞(다동)
형제추탕 1926年 鍾路区・平倉洞(평창동)
곰보추탕 1933年 東大門区(用頭洞付近)

薬味と辛さの調整——チョピ粉の使い方とご飯の入れ方

추어탕・추탕の食卓には、たいてい黒っぽい粉が小皿で添えられる。これがチョピ粉(초피가루)で、地方によっては山椒粉や胡椒粉が代わりに置かれることもある。まずスープをそのまま一口味わってから、少量ずつ加えて自分好みの香りに調整するのが基本の流れだ。

辛さについては、店や地方によって幅が大きい。コチュジャンや唐辛子粉をベースに赤く仕上げるところもあれば、チョピ粉のすっきりした香りを主役にしてあまり辛くしないところもある。「辛いのが苦手」と伝えれば調整してもらえる店も多いとされているので、不安なら注文時に相談してみるとよい。

ご飯の入れ方にも、地方や店ごとの流儀がある。最初からスープにご飯を入れて煮込むスタイルもあれば、別茶碗のご飯を少しずつ浸しながら食べるスタイルもある。どちらが正解というものではなく、店の提供スタイルに合わせるのが自然だ。

青唐辛子や刻みネギ、エゴマの葉のキムチなどが添え物として出てくることも多い。これらを途中で足していくと、同じ一杯でも味の表情が変わっていく。辛さも薬味の量も、最初から全部入れず、少しずつ足しながら自分の適量を探るのがコツといえそうだ。

  1. まずスープだけを一口味わい、辛さと香りの強さを確認する
  2. チョピ粉(無ければ山椒粉・胡椒粉)を少量ずつ加えて好みの香りに調整する
  3. 青唐辛子やネギなどの薬味を足しながら味の変化を楽しむ
  4. ご飯は一気に混ぜず、様子を見ながら少しずつ加える

店での注文のしかたに自信がない場合は、韓国の食堂での注文フレーズをまとめた記事も参考になる。辛さ控えめを伝える一言があるだけで、初めての店でも安心感が違ってくる。

ソウルで食べられる店とエリア——確認できた店とできていない店

老舗は移転や閉店が起きやすいジャンルでもある。ここでは今回の調査時点(2026年9月8日)で営業情報を確認できた店と、できなかった店を分けて紹介したい。訪問前には、必ず店側の最新情報を確認することをおすすめする。

営業を確認できたのは、まず무교동の「용금옥(큰집=本店)」。中区茶洞キル24-2にあり、飲食店検索サイトの掲載情報では、平日11時から22時、土曜は11時から20時までの営業で、日曜が定休とされている。もう一店は平倉洞の「형제추탕」。鍾路区平倉文化路28-7で、9時から21時まで年中無休という情報が確認できた。

一方で、東大門区にあるとされる「곰보추탕」は、住所や電話番号の情報源自体が古い可能性があるとの注記付きで見つかり、現在の営業状況までは今回確認しきれなかった。地方の代表格として韓国観光公社の記事に載っていた大邱の상주식당(サンジュシクタン、上州食堂)、南原の새집추어탕、原州の원주복추어탕(ウォンジュボクチュオタン)についても、記事の掲載時期がはっきりせず、現時点の営業有無は未確認のままだ。

老舗ジャンルの記事全般に言えることだが、名前だけで訪ねると閉まっていた、ということも起こりうる。行く直前に電話や地図アプリの最新レビューで営業を確かめる一手間は、飛ばさないほうがよい。

곰보추탕、および地方の代表格として紹介した店については、住所・営業時間の最新確認ができていない。訪問を予定する場合は、必ず公式情報や現地の最新レビューで営業状況を確認してほしい。


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なぜ秋に食べるとされるのか——語られ方と注意点

추어탕が「秋の食べ物」と言われるのは、ドジョウの旬が7月から11月ごろにあたることと関係が深い。この時期のドジョウは脂が乗って美味とされ、稲作地帯では収穫期の農村料理として親しまれてきたという語られ方が、韓国観光公社の紹介記事にも見られる。

ここで気をつけたいのは、効能についての表現だ。추어탕にまつわる紹介記事の多くは「栄養価が高い」「たんぱく質やミネラルが豊富」といった一般的な栄養の話にとどまっており、特定の症状に効くといった医学的な効能を明記した公的な資料は、今回の調査では見当たらなかった。

そのため本記事でも「体によい」と断定する書き方はしない。あくまで「昔から精のつく食べ物として食べられてきたと語られている」という、文化としての伝わり方にとどめておきたい。健康上の判断が必要な場合は、医師など専門家の見解を優先してほしい。

今は養殖のおかげで一年中食べられる料理になった。それでも「秋になると추어탕が恋しくなる」という感覚が韓国で根強く残っているのは、旬の記憶と収穫期の食文化が、料理の名前ごと受け継がれてきたからなのかもしれない。

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ソウルイン編集部効くか効かないかより、「秋になったら추어탕」という季節の合図として楽しむくらいがちょうどいい距離感な気がする。

苦手な人向けの代替、一人で入れるか

ドジョウという食材そのものにハードルを感じる人もいるだろう。無理に挑戦する必要はなく、似たジャンルの韓国の滋養食としては、参鶏湯(삼계탕)を紹介した記事や、해장국(ヘジャングク)の記事で扱っている鍋料理のほうが、食材のイメージがつかみやすいかもしれない。同じ「体を温める一杯」というくくりで選び直すのも一つの手だ。

見た目に抵抗があっても、味そのものに興味がある人には、まず慶尚道式のようにすりつぶしてスープが澄んでいるタイプから試すという選び方もある。ドジョウの原型が見えにくいぶん、心理的なハードルは下がりやすいはずだ。

一人で入れるかどうかも気になるところだろう。추탕・추어탕の専門店は、韓国の伝統的な食堂と同じく、一人前の丼で提供される形式が基本とされている。국밥(クッパ)の記事で紹介したような一人客に慣れた食堂文化と同じ土台にあるジャンルなので、一人での来店自体が特別視される心配は少ないと考えられる。

ただし店ごとに一人客への対応やルールが明記されているわけではないため、混雑時間を避けて訪れるなど、無理のない立ち回りをしておくと安心だ。乾物や薬味を扱う京東(キョンドン)市場の記事で紹介したような市場を先に覗き、チョピ粉や乾燥唐辛子などの薬味を見ておくと、店での注文もイメージしやすくなる。

よくある質問

추어탕と추탕は同じ料理?
どちらもドジョウを使ったスープを指す言葉として使われている。地方によって呼び方の使い分けに差があり、ソウルでは「추탕」という呼び方が定着している店が多い、という程度の理解でよい。
辛いのが苦手でも大丈夫?
コチュジャンや唐辛子粉で赤く仕上げる店もあれば、チョピ粉のすっきりした香りを主役にする店もあり、辛さの幅は店によって差がある。不安なら注文時に辛さを控えめにできないか相談してみるとよい。
値段はどのくらい見ておけばいい?
今回の調査では、公式サイトを持たない店が多く、現時点で公的に確認できた金額の情報は無かった。価格は変動しやすいため、訪問前に店の最新情報や現地の掲示で確認してほしい。
ドジョウの臭みが心配。子ども連れでも平気?
生きたドジョウを使い薬味で仕上げるのが基本形とされているため、極端に生臭い料理ではないと考えられる。とはいえ味の感じ方には個人差があるので、初めては小皿や取り分けから試すのも手だ。

まとめ

  • 추어탕はドジョウを使う秋の郷土スープ。見た目より臭みは強くないとされ、チョピ粉などの薬味で仕上げるのが基本形
  • すりつぶして澄んだ味の慶尚道式と、丸ごと・とろみの全羅道・南原式で作り方が大きく異なる
  • ソウルには사골だしを使う「추탕」という独自の系統があり、용금옥など創業90年超の老舗が知られている
  • 効能は断定できる公的資料が見当たらず、「昔から精のつく食べ物として語られてきた」という文化的な伝わり方にとどめておくのが安全
  • 老舗は移転・閉店もありうるジャンル。訪問前は必ず店の最新の営業情報を確認する

気になる店を見つけたら、まずは営業状況を最新の情報で確かめてから、秋の一杯を計画してみてほしい。

参考・出典

  • 韓国民族文化大百科事典「추어탕」 https://encykorea.aks.ac.kr/Article/E0057883
  • 韓国観光公社「가을의 맛, 세월의 맛 추어탕」 https://korean.visitkorea.or.kr/detail/rem_detail.do?cotid=bccbe1e6-ccbd-4c87-bebd-3a7092f13c48
  • 헬스경향「한동하의 웰빙의 역설」초피가루・산초가루の記事 https://www.k-health.com/news/articleView.html?idxno=46051
  • 서울&「경성의 맛과 추억」용금옥 関連記事 https://www.seouland.com/arti/culture/culture_general/3038.html
  • 한국일보「추탕 외길 90년 용금옥」 https://www.hankookilbo.com/News/Read/A2022052508230003842
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